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プロローグ
『狼と香辛料』に影響されて書きました。原稿は完成しているので、テンポよくアップしていきたいと思います。感想&評価等はご随意に。最後までお付き合いいただけると幸いです。
「黄昏」という言葉がある。
古くは「たそかれ」と読まれたこの言葉は、夕方の薄暗い状態を指す際に気障な詩人たちによって好んで使用されてきた。
夕方にはまた「マジックアワー」と呼ばれるごく短い時間があり、太陽が姿を消したあとの数分間の薄暗い時間帯を示す。
「黄昏」も「マジックアワー」も昼の世界から夜の世界へ橋渡しするとともに、人びとの心になんとも言えない抒情を呼び起こすエモーショナルな光景だ。
しかし、それらの情景は消えゆくからこそ美しい。
永久に続くと、人の心にほの暗い感情を落とすことだろう。
昼とも夜ともつかぬ不確かな光景。
どっちつかずの世界に人びとは安穏を見出すこと叶わない。
そしてこれから綴られるのは、永久の黄昏に迷い込んだ終わりゆく世界の物語である。




