Day-7 開幕
更新おくれました・・・でもその分いつもより長いです(by結謳)
とある病院。
そこに、露骨に不機嫌な銀髪と俯いている朱髪と、その二人を楽しそうにみているの藍髪がいた。
「あぁーっ、やっと今日で変なギブスから解放だぁ〜っ」
彼はずっと、ドラ○もんのポケットが書いてあるギプスを腰に付けていたのだ。
「じゃ、マスターの解放記念で何かおいしいものでも食べに行きません?」
「お、いいねそれ」
腰の復活は喜ばしいはずだが、なぜか銀髪は不機嫌。
「長かったですね」
「長かったですね」
「あぁ、やっと今日からフリーダムだぁ」
それを言った途端、朱髪が立ち止まった。
「どうした?」
「本当に、ごめんなさい」
「何が?」
「・・・腰、あたしのせいで、一週間も寝たきりにしちゃって・・・」
「もう気にすんな。すんだことだろ」
銀髪がやさしく言うと、朱髪は、歩み寄って
「ありがとう・・・クルス」
いって抱きつこうとしたが・・・
「ちょっとまて!」
「え?」あわてふためくクルス。
「泣き付いてくるのはいいが、穏やかに頼む」
「あ・・・」
そこで朱髪は、自分が泣き付いた際にクルスの腰を亡きものにした事を思い出した。
「あはは。ごめんね」
涙目で笑い、クルスに穏やかに抱きついた。
「可愛いトコあるんだな、フレイにも」
「あ、あたしはいつだって可愛い乙女よ・・・」
「棒読みじゃ説得力ないな」
優しくフレイを抱いて撫でる。
いつのまにかフレイの目からは涙が消え、笑顔があった。
そこへ・・・
「マスターっ♪」
後ろから蘇りし腰に飛び付くロキ。
「おうっ!?どうしたロキ?」
「どうしたではありませんよっ。苦労した付きっきりで看病した私の事を忘れないでくださいよ!」
確かに、クルスが金縛りのごとくベッドにいた間、フレイはクルスの分の仕事を請け負っていたが、その間看病していたのはロキである。
「私の苦労もナデナデしてくださーい」
「わかったわかった。お疲れさま」
ふくれたロキを苦笑してナデナデするクルス。
部下とはいえ、仮にも同年代の異性に好感をもたれているクルス。
三人の間には、上下関係以外に何かあるのだろうか。
「じゃ、さっさとメシ食いいこーぜ。久々に脂っこいラーメンが食いてぇな」
「お、いいですねぇラーメン。さんせー!」
「あ、あたしも、クルスがそういうなら・・・」「マスター、フレイはダイエット中ですからこの際二人で・・・」
「な、何言ってんのよロキ!き、今日ぐらい、クルスに付き合ったげるわよ!」
顔を赤くして高々宣言するフレイを、クルスはしばらくいじろうとおもった。
「別に付き合ってほしいわけじゃないぞ。ムリにとはいわんが」
すると固まったフレイはしばらくしてから
「・・・いきます。いかせてくださいご主人さま・・・」
そんな愉快な三人を、一人の少年がみていた。
そして、クルスたちに歩み寄り・・・
「よぉっ、クー。久々だな」
「あ、あなたは・・・」
「たしか・・・貴崎中佐!?お、お久しぶりです!」
驚いて礼をする二人に、ヨウは笑顔で答える。
七話にしてようやくリンクした『死神』と『夢魔』。
「おいおい、そんな堅苦しくするなって前にも言ったろ?クーと同じように接してくれればいいって」
「ですが、立場上私たちの上官であるマスターのパートナーですから、同等に接するというのは・・・」
「そうですよ!それに、あたしたちはあなたを尊敬しているんです。クルスのように死神ってだけで偉いんじゃなく、貴崎中佐は実力で国家諜報機関の総監に上り詰めた方ですから」
「だれが名前だけで偉いって?」
「あはは。そういうなよクー。オレのほうから説明してやるから」
『何をです?』
二人が声をそろえて聞くと、ヨウは再び笑顔で答えた。
「確かに死神っていうのは偉い。だが、なぜ偉いのかっていうと、世に二人しか死神がいないからだ。それに、もう一人のほうは未完成だから力が不安定。だから完成版がえらいんだよ」
「じゃ、なぜ死神は二人しかいないんです?神が創ったなら、増やせるじゃないですか」
するとヨウはいきなり真顔になった。
「いや、簡単なことじゃない。死神っていうのは元は殺意の象徴・・・というより、殺意そのものの塊なんだ。初代を作ったとき、世界中の殺意を集め、凝縮し、圧倒的な強さを誇った。だからプレミアなんだよ。死神ってのは」
すると、ヨウの言ったことに一つ疑問があがった二人。
「え?初代を作ったとき?初代って、クルスじゃないの?」
するとヨウは笑顔に戻った。
「あぁ。それに加え、元は一人だった」
「え?じゃぁ何でクルスは死神に・・・しかも一人増えて・・・」
「その話は長くなるが・・・」
ヨウが話そうとしたとき、黙っていたクルスが初めて口を開いた。
「ヨウ。これ以上余計なこと言うな」
「これ以上て・・・おまえの直属部下になら教えても構わんだろう」
「余計なこと言って仕事に情が入ったら辛いのはこいつらだ」
「こいつらはお前の事を知ろうとしてる。そして知ってほしいと思っている。なら教えてもいいじゃないか」
「・・・時がくればいずれ、な」
「さ、コメディっぽくない話はおしまい!メシ食いいくんだろ?奢るから連れてけよ」
「おいヨウ。この作品はファンタジーの部類じゃなかったか?」
「はっはっは。コメディ側のオレとリンクした記念でお前側も晴れてコメディに変更したんだよ。丁度この七話更新直前に」
「いや、違うな。オレの予想だと作者のストーリー案が予定よりもコメディ路線に脱線しまくったためだろう」
「そらまたお厳しいコメントを」
二作の各主人公が作者の都合に不満を漏らしていると
「あの二人、何話してるんだろ」
「コメディだとかファンタジーだとかについてみたいですが」
「ま、どーせ完成度の低い作者自身の愚痴でしょ」
「その程度でしょうね。ではお二方、そろそろ食事に」
「おやじ、替え玉!」
「あたしも!」
「じゃオレも」
「私もお願いします」
今話から盛大に盛り上げていきたい事件は、替え玉の注文が入ったところから始まる。
「おやじ、替え玉!」
「オレも」
「よく食うなぁお前等!正直商売的に嬉しいぞ!!」
「あたし、替え玉といきたいんだけど、スープが減ったので新しく一杯よろしく!」
「嬢ちゃんたちもよく食うなぁ!」
驚異的食欲と神掛かり的なスピードで追加注文が絶えない死神様一行。
こちらでは珍しい替え玉対応店にて最遊○顔負けの食いっぷり。
最○記ならもちろんカード払いだが・・・
「おやじ、ごちそーさん!」「「「ご馳走様!!」」」
「じゃ、約束どおりオレが奢るよ」
「お、気前いいな少年A!よし、その男気に敬意を表してすこしまけたるわ!」
「お、かっくぇ〜事いうねぇ大将!」
そういって煽てると、大将は一枚のカードを差し出した。
そこには『一ヵ月間一割り引き券』とあった。
「なにこれ・・・割り引き券?」
「一割り引き!?じゃぁ次からは一割分多く食えるじゃん!!」
「マスターは割り引きがあろうがなかろうが食い放題好き放題してるじゃないですか」
「・・・さーて、腹八分目収まったことだし、帰るか」
「あれで八分目かよ」
苦笑混じりにツッコミつつ、ヨウは名刺を取り出す。
「経費で」
「これは・・・少年A、お前さんもしや・・・」
「あぁ、軍人に近い立場にいるよ」
「わかった。請求宛ての名前は?」「オレは貴崎・・・」
ヨウが名乗ろうとしたとき、横からクルスが話って入った。
「いや、軍本部のコルテス・コンキスタドール大佐に。オレらの上司だから」
「おいおい、いいのか?」
「マスター、彼を敵に回すおつもりで?」
「最初からそのつもりだったし、あいつは仕事サボってばかりで女遊びに明け暮れてるし、サボった分がオレらに回ってきてんだ。然るべきだろ」
ちなみに、そのサボりまくりの大佐というのは以前クルスが無言で電話を切った相手である。
「ホント、クルスと大佐は鋼○錬金術師みたいね」
「作者は無意識に書いたそうだ。あとあとチェックしたときに気付いてこの台詞を足したらしい」
「お二人は作者事情に詳しい様ですね」
なんて作者のパクリを暴いていると、無事大佐に請求したクルスが店から出てきた。
「すげぇな。やすさが売りの店で万単位食ったみたいだぞオレら」
「・・・クー、ここって一杯単価は一番高くて八百円だろ?オレらが食い続けたのは一番安い一杯四百八十円だったはずだが」
「というより、一杯百五十円の替え玉ばっかだからかなり・・・」
改めて、自分達が胃のなかに収めた麺とスープの量を再認識した一行・・・
「帰るか・・・」
「・・・じゃあな・・・」
その時、フレイ以外が何かに反応した。
「な、何?どうしたの?」
「お客さんだよ」
「かなりのレベルですね」
「めんどくせー」
などと口々に言う彼らに、不安は感じられなかった。
「どれくらいなの?」
「んー、質というより量だな」
「レベル六、七がたっぷり」
「オレらが食ったラーメン一キロにつき一匹のサービス精神だ」
なんて余裕をいっていると・・・
「キャー」
「ワー」
「助けてー」
「死ねー」
「誰かー」
ありきたりな悲鳴のオンパレードだ。
だがクルスは、この中にある人物を連想する声が聞こえた。
「ん?なんか聞き覚えのある声が・・・」
「何?知り合い?」
「どの悲鳴だ?ワーか?キャーか?オレ的には死ねーの言い方が最高だったんだが・・・」
「その悲鳴だ」
そういって現場に駆け出し、声の主を探すと・・・
「くたばれバケモノー!!」
「消え失せろー!!」
「あの二人・・・」
「やっぱり、ヨウんとこの先生じゃんか」
果敢にも生身で高レベルの妖怪と戦っているのは、列記としたメサイア学園の教師であるシエル先生とマリア先生だ。
「数だけ居たって・・・雑魚じゃつまんないー!!」
「しつこいー!!」
シエル先生はなぜか真剣で戦い、なんとマリア先生は素手で相手している。
だが・・・武器がある分、リーチがあわない敵からの怒濤の波状攻撃が空中にいるシエル先生を襲う
「シエル!後ろ!!」
「え!?」
波状攻撃直撃、五秒前・・・
「シエルーーー!!」
「くっ、ここまでか・・・」
四秒前・・・シエルは、直撃を覚悟し、眼を伏せた。
完全に眼を瞑る直前、なにか目の前に黒い物体が見えたのが最後だった。
「え!?あれって・・・」
ありえない速さで間に入った何かを、マリアは把握できなかった。
直撃三秒前、二、一・・・
『散れ』
その刹那、シエルを狙う攻撃が止まった。
否、消えたのだ。
「え?」
「ったく、手間かけさせんなよ。伊達に『神速の剣』なんて呼ばれてんじゃないんだろ?」
シエルが眼を開けると、そこには四枚の藍色の翼に銀髪、そして朱い(あかい)鎌の人物がいた。
「あなたは・・・せ、殲滅特殊部隊隊長・・・『混沌の鎌』の異名をもつ・・・」「十字架・・・」
注=クルスは、宗教的な十字架を意味します。クルスの名前の由来ですのでご理解を。
「か、鎌の一振りであの数を!?」
「あの瞬間に・・・しかも私を片手で支えながら」
落ち続けるシエルを抱き抱えながら残党を見据える。
その瞳は、死神そのものだった。
「そちらは『破壊の業』だったね。この人を任せていいかな?」
「は、はい!」
一瞬でマリアの元にシエルを預けると、再び空を駆ける。
蒼い翼、全てを翻弄するスピード・・・その姿は、まさに
「フ○ーダム!?」
「ち、違うわよシエル!しっかりして!」
その時だった。
シエルのボケと、クルスが強い魔力を感じたのはほぼ同時。
「我は大三元伯爵・・・」(名前が麻雀の役かよ!)
いきなり出てきた伯爵に、その場にいた全員が心の中でツッコミんだ。
「貴様が死神か」
「だったら?」
その声は、姿を表さずに問う。
「その十字の力、我が貰い受ける・・・そして、完全な死神になる・・・」
そういって姿を表した伯爵は、みた感じは若そうだった。
「やらねぇよ。死神の出来損ないにくれてやるもんなんざ生憎持ち合わせてないんでね」
「な、何だ貴様!我こそは真の殺意より生まれし死神!貴様のような半端者が何を言うか!?」
「るせー。今はオレが死神なんだ。だったらパクリには消えてもらう」
そのことばが、伯爵を本気にさせた。
「覚悟しろ!不届き者め!!」
「さあて、派手にいこうぜ」
幕が、開いた
こんばんわ(もしくはこんにちは)。いきなりですが一つ報告を。僕、結謳の初めての小説『死神のKISS』のジャンルをとうとう変えてしまいました。今話から知っていただいた方には無縁ですがファンタジー好きで読んでくださっている方、申し訳ありません。最初はコメディーをファンタジーに織り交ぜつつ進めるというのが最近はコメディー濃度の上昇と『夢魔との生活』との二作同時進行にともない、決意しました。これからは、コメディーにファンタジーを混ぜていきたいので『死神のKISS』『夢魔との生活』ともによろしくお願いします。結謳でした