Day-4 antecedent
私は夢を見た。
暗くて深い、そして何より・・・
恐い。
酷く苦しく、あまりにも辛過ぎる、そんな夢を。
否、夢でなんかなかったのかもしれない。
ただ、私が知らなかっただけ。識ろうとしなかっただけ。
「死」は私の胸を引き裂いた。
「運命」に壊されかけた。
「業」が私という存在を否定した。
今の私のなかにある負の感情。
悲しみ?憎しみ?妬み?恨み?
理想?幻想?妄想?空想?
残酷な真理の螺旋。淀み無く顕れる私自身の真理。
そんな中、私には聞えた。
・・・助ケテ・・・
「っ!?」
聞いたこともない声が聞え、私は目を覚ました。
「ハァハァッ・・・」
「よう。起きたみたいだな」
「クー君・・・わ、私・・・」
「大丈夫か?唸されていたが」
「は、はい。なんとか」
「嘘をつくな」
「っ!?」
無理な笑顔を不審に思ったのでしょうか。
「だ、大丈夫ですよ!ほら、こんなにぴんぴんしてま・・・」
「嘘をつくなと言っている」
その声は、いつものクー君ではありませんでした。
「唸されてたんで何を見ていたのか見せてもらった。相当酷いものをみたな」
「え?」
「死神の事を話しただけであんなもの見るなんて尋常じゃない。あんた、何を隠してる?」
「な、何も知りません!さっきのだって・・・妖怪なんて、みたのは初めてでしたし・・・」
「まぁそうだろうな。悪いが記憶を少しみさせてもらった。普通の人間として生きてきたようだな。だが、あんたには普通とは違うものがある」
何か違うもの。
そう聞いたとき、私の心臓が強く脈打った。
あの声を聞いたからでしょうか?
「今日はもう安め。自宅には連絡を入れてある。泊まってけ」
「いいですよ。連絡すればすぐに迎えが・・・」
「ほっとけないんだ。今のお前は。だからいうことを聞いてくれ」
「は、はい・・・わかりました」
「ならいい。じゃぁオレはここで寝るから。辛かったりしたら言え」
ここで寝る、ってことは、もしかして・・・
「クー君、もしかしてもしかすると・・・一緒に寝てくれるんですか?」
「ヴァルがベッドで、オレはそのソファーで寝る」
「クー君・・・返事であるようで返事じゃないですよ、それ」
「やかましゃぁ。だれがヴァカと寝るか」
「そ、そんな言い方しなくても・・・」
「だってなんか恐いんだよあんた」
むむっ。クー君、それはちょっと心外ですね。
「何が怖いんですか?」
「何らかの意味で襲われそうだ」
「な、ななな、なななななんですとぉぉ!?」
「リアクション古くさ・・・」
わ、私が、クー君を・・・襲う?
恐らく、クー君が言っている襲う、というのは二種類でしょう。
1・原義道理、寝込みを襲撃し怪我を負わせるというもの。
2・女性が男性に無理やり・・・(クー君はこの逆のパターンを想像しているのでしょうか?)
つまり「私は危険だ」と思われているのでしょう。
「私がなんでクー君を襲わなきゃいけないんですか?」
「知らん。だが、オレの本能が告げているんだ。『危険だ』とな」
「大丈夫ですよぉ。私はちゃんと同意を得てから始めますから」
「何を始めるんだ?」
「えっ・・・」
し、しまったです〜!上の「2」の方だと思っていたのに!?
「そ、そそそそそれはですねぇ!?」
「何を動揺している?・・・ほうほうほう。そうかそうか」
「な、何がですか?」
「お前、案外下ネタ好きだな」
うぅぅ・・・私、クー君に下ネタ好きがばれ・・・いえいえ、変な印象を与えてしまいました。
「結構丁寧なやつだと思っていたんだが・・・意外だな」
「ち、違いますよぉ!私はそっち系じゃありません!」
「ん?そっち系ってどっちだ?ん?」
「むむぅ・・・クー君、Sですね・・・」
「よく言われるよ」
よく言われる。と平気で言えるのは、自覚があるのでは?
「・・・え〜っと、一つお聞きしてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
「さっきの死神の・・・あなたの話は本当ですか?」
「本当だ。なんなら本当にヴァルの魂とってやろうか?」
本当にドSですね・・・
でもそんなところがいい・・・とか言う人も世の中いるのでは?
「え、遠慮します・・・ところで、さっきの化け物、妖怪って言ってましたよね?あれは・・・」
「ああ、あれか。あれの話をするにはまず神とか悪魔の話もしないとな」
「か、神?神ってあの、神様のことですよね?」
「ああ。そうだ」
「じゃぁ、細かく話してください。一応私は被害者ですから」
言い終えるか否や、クー君の表情は変わりました。
「話すことにはかまわん。むしろ、お前には話しておかないといけないからな。だが・・・」
「だが、なんです?」
「覚悟がいる。オレも最初は少し戸惑ったくらいだからな」
「ドSのクー君が戸惑うほど、どすか・・・」
「・・・」
クー君。私からきたボケを向こう側へ受け流さないでください。
ムード歌謡を歌うあの人っぽく言おうかとしていると、なにかクー君の様子が変に。
「凍えそうな季節に、たった一人で。声を枯らし、身を引き裂かれ。苦しみからの出口を探した」
「クー君・・・」
「運命に置き去りにされて。周りのやさしさから遠ざけられて」
何もいえませんでした。クー君の悲しそうな瞳を見てしまったから。
「・・・悪いな。ちょっとLunatic Gateに連れて行かれそうになってな」
「知ってる人は知っている、意味深なパクリ方ですね」
「言うな・・・じゃぁ全部話すよ。でも・・・」
「でも、なんです?」
「長くなりそうなので次回を世界観説明にして、その中で紹介するとする」
「えぇ〜っ。次回ですかぁ〜?」
「しょうがないだろう。作者だって長くなりそうな説明をできるだけわかりやすくしようと今のオレの台詞を打ち込みながらがんばって考えてるんだぞ」
「でもでも、最初の挨拶で『毎週一回は更新』だとか言ってましたけど、結構ばらばらですよ?」
「・・・まぁ、そこは作者も反省してるからお前の台詞で言わせたんだろう。きっと」
「きっと、ですか」
「とりあえずお前は寝ろ。起きるころには説明も終わってる」
「しかたないですねぇ」
読んでいただいてありがとうございます〜。
作者に代わり、今日は私、ヴァルこと『ヴァルハラ・イグドラシル』がご挨拶させていただきます。
なんと私、主人公(クー君)を差し置いて先に一人称を任されちゃいました〜。
初めての一人称なので、少しぶきっちょに書かれているはずですが、お許しください〜。
さてさて、次回に世界観説明というちょいとはやめの区切りを入れます。
定期テストという学生の敵が作者を待受けていますが、意気込みだけは十分みたいですから大丈夫でしょう。
ではでは、また次回。次回は死神さんが担当しますよ〜。