Day-3 本当の姿
時は21××年。今日は、世にも奇妙な学園に一人の転入生がやってくることになっている。
教室には、一人テンションの高い教師が一人。
「皆の衆ー、静まれー!転校生紹介するぞー!」
一同「・・・おー」
その皆の衆はついていけないようだ。
「今日来る転校生は確か・・・西のほうの国から来た、霊長類ヒト科の、学名では「ホモ・サピエンス」に属する、二足歩行が可能で・・・」
「なげぇわ!どこから説明いれてんの!」
廊下からツッコミが入った。
「いつまで立たせてるつもりだ!そろそろ転入生特有のワクワク感に飽きてきたぞ!」
「はいはい。しょうがないなぁ。じゃーてんこーせーどーぞー」
一気に先生のテンションが御臨終なさった。
「はぁ、長かった。転校予定日を三日もすぎるとは・・・」
一人回想にふけりつつ、転入生は教室のドアをくぐる。
三日前、車に轢かれたクルスは結局治療に専念すべく安静にしていたのだ。
ようやく潜れた教室のドア。
すると・・・
一同「ワー!!キャー!!」
黄色い歓声。それもそのはず。転入生クルスは顔が良い。
クルスの魔弾に、クラス全員が射抜かれた。今までもクルスの魔弾に射抜かれない女性はいなかったほどだ。
「・・・え〜っと、先生?」
「なんだ?」
「このクラスに、違和感があるのオレだけ?」
クルスの言う違和感。読者の方はお分かりだろうか。
「ん〜?何も〜?」
「外から来たオレにはかなりあるんだけど」
前述を繰り返そう。
『クルスの魔弾に、クラス全員が射抜かれた』
「なんでこのクラスみんな女子なん?」
「なんでってそりゃあれよあれ。クラス決めは定期テストの成績で変わるからよ」
「はい?だからってなんで。男子も女子と同数近くいるだろ」
「男子は金持ちのボンボンしかいないから。バカばっかりなのよ。正直なところ」
つまり「男子はバカ、女子は優秀」ということらしい。
「でも君は編入テストでいい点取ったから次のテストまでハーレム状態よ」
「ハーレムっておい・・・」
正直、クルスは女性というものが苦手だ。
テンションのアップダウンや、行動の意味がわからない等、思春期男子にはあることだが、クルスの場合はその容姿のため、女性の方から寄ってくるので、避けようにも避けられないのだ。
「ん〜っと、このクラスは十七、八人か?少ないんだな」
「そうね。このクラスは一番上のクラスで特別進学クラスだから」
「へぇ。優秀なクラスなんだな」
「そのクラスに入れる君も優秀じゃないの〜」
実際、編入テストでもレベルに手を抜かない学校なので、特進クラス入りは難しい(先生談)
「じゃ、よろしく〜」
「何!?いきなり挨拶終わらせちゃうの!?つまんな〜い」
スキを突いて挨拶を終わらせるクルス。
「まぁいいわ。クルス君はあっちの窓際の一番後ろの席ね」
「ほ〜い」
あまりの席であろう。一番後ろの一番端っこ。
だが、それがクルスに悲劇を巻き起こすことになる。
「おはようございますッ!クルス君!」
「・・・はい?」
聞き覚えのある声。
テンション高く、丁寧ではあるが、妙になにか引っかかる・・・
「なんですかそのへなぁっとした返事は!ヴァルですよ!ヴァル!忘れたとは言わせませんよ!」
「ああ、忘れるわけ無いさ。あのあとアンタがしてくれた御節介は・・・」
「おせっかいとはなんですか!善意ですよ!純粋な乙女の気持ちですよ!」
「純粋?何だそれ。無粋の塊だろ?アンタ」
「な、なにをぉ〜!」
二人の楽しそうな会話を見て、ライバル達が口を出さないわけが無い。
「ちょっと!ヴァル!?なんであなたがクルス君と知り合いなのよ!」
「そうよ!おかしいじゃない!抜け駆けなんて卑怯よ!」
「ぬ、抜け駆けとは聞き捨てならぬです!」
クルスの嫌いなものベスト3!
第三位!わいわいがやがや(半径3メートル以内)
(うるせぇ〜)
第二位!逆ナン(複数で来る場合)
「ねぇねぇクルス君!彼女とかいるの?」
(初対面で聞くことじゃねぇ〜)
「キスしたことある?あ、もしかして最後までしたことあるの!?」
(アホだこいつ〜。十五のガキがそこまでいくかぁ〜)
「付き合ってください!」
(こいつ、誰でもいいから結婚したい的な事いってる負け犬女っぽい〜)
以後、延々と一方的な質問に心の中でツッコミながら、尋問は終わった。
「あ、一ついいか?みんな〜」
一同「なんですか〜!?」
「クルス君とか呼ぶのやめぇ。クーでいいから」
一同「えぇ〜っ!いいんですかぁ〜!?」
「何々?みんなして新入りのオレのこといじめてんの?」
一同「め、滅相も無い!!」
「じゃ、決まり。よろしくね、みんな」
一同「よろしくお願いします!クルス君!」
「だーかーら、クー!次クルスって呼んだやつ縁結ぶ前に切るよ!?」
一同「ごめんなさいクルス君!」
「しつこい!」
「あなたと同じクラスだとは思いもしませんでした。私はとても驚きました」
「なぜに英文和訳系!?英語の教科書みたいです!」
時は放課後。
傍らには問題児。
「じゃ、オレはこっちだから。じゃな」
「はい。ではまた明日」
「・・・はぁ、やっと一人だ」
厄介払いできて、本気で安心するクルス。
だが、安心はできなかった。
同時に、彼の本当の姿が明らかになる。
「キャー!」
「え!?あの声、ヴァカ?」
今日一日でヴァルのことを『バカ』ではなく『ヴァカ』と度々呼ぶことにしたクルス。
「な、なんなんですかあなた!」
「ガァァァァ、シャァァァァッ!」
ヴァルの目の前に立つのは、人間ではなかった。
人間の形をした、何か。そうとしか表現出来まい。
「ヴァル!大丈夫か!?」
「クー君!」
結局ヴァルはヴァルで、君付けがやめられないようだ。
「・・・!?あいつ、こんなとこまで・・・」
「えっ、知ってるんですか!?」
人間の形をした何かをみて、クルスの表情が変わる。
「一言で言えば妖怪だ。まぁ詳しい話は後だ。まずはこいつを・・・」
いいつつ、腕につけていた腕輪をはずす。
「殺す」
言い終えるか否か。クルスの手には巨大な鎌が握られていた。
「死ね」
その刹那。妖怪は、真っ二つになっていた。
「クー君?あなた・・・何者?」
いつの間にかクルスの手には鎌がなくなっていた。
「何者?そうだねぇ〜」
その声はいつもの口調で。
「なんていったらいいのかな」
でも、どこか悲しげに答えた。
「死を司る十三番目の神・・・死神だ」
「死・・・神・・・」
ただ、それだけ言ってクルスは。
「ついてこい。全てを見せてやる」
彼女に本当の世界を見せた。
呼んでくださっている読者の方、ありがとうございます。作者の結謳です。
修学旅行へいってきました。その夜に半分ほどかきました。
流石修学旅行ですね。楽しくてインスピレーションに磨きがかかったといいますか、予想以上に転校シーンに三話を持っていかれました。
今回はいつもより短めの文章にしてみました。
更新を細かく続けたいと思い、今後もこうなるかもしれません。
第四話では、本当にクルスの過去、正体を細かくかくつもりです。
では、また四話の後書きでお会いしましょう。
それでは。