Day-0 プロローグ
ある夜の悲劇。
その悲劇が彼を変えた。
『運命ノ分カレ道ダゾ』
瞳の前に広がる紅。
『覚悟ハイイカ?小僧』
少年からは涙が、少女からは紅が、止め処無く流れていた。
『貴様ノ弱サガソイツヲ殺シタ』
少女の瞳は虚ろで、何も見えていない。
『ヒャハハハハハハハ!悔シイカ!憎イカ!』
弱い自分を憎んだ。
『憎メ!怨メ!苦シメ!ヒャーッハッハッハ〜!』
『・・・せ・・・』
ためらいは無かった。
『アァン?』
『・・・よこせ・・・』
『何ヲダ?』
求めるものはただ一つ。
『・・・力だ』
『ドンナ力ダ?壊ス力カ?奪ウ力カ?殺ス力カ?』
脅すように少年を問い詰める。だが、少年は嘲笑うかのような口調で答えた。
『こいつを・・・サラを取り戻す力が欲しいんだ・・・』
『ヒャッハッハ!契約成立ダゼ!』
悲劇の夜に響く高笑い。だが、少年は臆する事無く続ける。
『力を得られるのなら・・・どんな犠牲も厭わない。契約だろうがなんだろうが受けてやる。だからさっさと契約とやらをはじめろ』
悲劇は、一つの狂気を生んだ。
『最後に・・・貴様の名を教えろ』
『名前ナンカネェヨ。強イテ名乗ルナラ・・・死神ダ』
死神、という響きに違和感は無かった。だから気にも止めなかった。
『そうか・・・死神か』
納得するように頷き、少年は覚悟した。
『ありがとう、死神』
心からの感謝だったが、死神にはどうでもよい。
『死神ニ感謝スルナンザ狂ッテルナ』
『貴様にいわれる筋合いはない』
その少年の微笑みは、人間としての最後の感情表現だった。