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『▒▒ERROR//きみの名前が読めない▒▒』

作者: 中(ポンの)
掲載日:2026/05/07

文字化けって、ただの機械のエラーだと思っていました。


でももし、

読めない文字の向こう側に「誰か」がいたら。


深夜の通知。

壊れた会話。

ノイズ混じりの世界。


「見えてはいけないもの」が見え始めた時、人はそれをバグと呼ぶのか、それとも真実と呼ぶのか。


これは、世界の終わりに気づいてしまった少年の、短い記録です。

「……ア?」


朝、スマホに届いた通知は完全に文字化けしていた。


【送信者:???】

『オ前ハ マダ “コッチ” ニ 来ルナ』


「なにこれ……怖……」


高校二年の白瀬ユウは、寝ぼけながら通知を閉じた。

だが、その日から世界がおかしくなる。


授業中。


黒板を見ると、先生の字が崩れていた。


『数Ⅰ 連立方程式』


のはずが、


『數▓Ⅰ 連▒方█式』


に見える。


「……目、疲れてんのかな」


しかし周囲は普通に授業を受けている。


昼休み、友人の佐藤が話しかけてきた。


「なぁユウ、昨日の配信見た?」


だが耳に入った音は、


「ナァユウ 昨日ノ█信 見タ?」


ノイズ混じりだった。


「え……?」


佐藤の顔が一瞬だけバグる。


口元が四角く崩れ、

目がピクセルみたいに欠けた。


そして。


「──お前、“読め始めた”んだな」


その瞬間、教室の全員がこちらを向いた。


ガガガガガッ


首が同時に動く。


ありえない角度で。


スマホが震える。


【送信者:???】

『見つかった』


教室の窓が真っ黒になった。


外がない。


空がない。


世界が「読み込み失敗」していた。


「なんなんだよこれ!!」


ユウは教室を飛び出した。


廊下も壊れている。


『立入禁止』の札は、


『立▓禁█』


生徒たちの会話は、


「アアア」

「ミツケタ」

「ヨメル」

「ヨメル」


ノイズの合唱。


逃げ込んだ旧校舎の端。

そこだけ正常だった。


一人の少女が座っている。


古いパソコンの前で。


「遅かったね」


「……誰だよ」


「私は、この世界の“文字修復係”」


少女は静かに言う。


「この世界はもう壊れてる。みんな気づいてないだけ」


「は……?」


「本当の世界は三年前に終了したの」


パソコン画面には大量のログ。


【SYSTEM FAILED】

【MEMORY CORRUPTED】

【人格データ保護中】


「君たちは、人間だった記録の残骸」


ユウは笑った。


笑うしかなかった。


「じゃあ俺は……」


「データ。でも珍しいね。普通は壊れた文字なんて認識できない」


少女は画面を見つめた。


「君、消える前なんだ」


その瞬間、ユウの腕が崩れた。


▒▒▒▒▒


ノイズになる指。


「う、そ……」


スマホが最後に光る。


【送信者:???】

『コッチヘ オイデ』


ユウは震えながら少女を見る。


「……消えたく、ない」


少女は少しだけ笑った。


そしてキーボードを打つ。


カタカタカタ……


画面に新しい文字が表示される。


【NAME RESTORED】


その瞬間。


世界のノイズが止まった。


「……え?」


ユウの腕が戻る。


空が青くなる。


窓の外に風が吹く。


少女は立ち上がった。


「これで君は読めなくなった」


「待てよ! お前は!?」


少女の姿が崩れていく。


「私は修復用の仮人格だから」


「名前は!?」


消える直前、

彼女は少し困ったように笑った。


「文字化けしてて、もう読めないよ」


──通信終了。

最後まで読んでくださりありがとうございました。


今回の物語は、「文字化け=恐怖」と「データになった世界」というイメージを合わせながら書きました。

普段なら気にも留めない「読めない文字」が、突然意味を持ち始めたら怖いな……という発想から生まれています。


特に、壊れていく世界の中で、それでも「名前」だけは残そうとするラストを書きたくて、この物語になりました。


みなさんのスマホにも、もしかしたら今夜、

読めない通知が届くかもしれません。


その時は――開かない方がいいかもしれません。

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