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赤ずきんは魔女の孫  作者: くろぬか
4章

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第94話 最終話 今を生きる


「アリス! 遅いわよ!?」


「ご、ごめん! 完全寝坊した! 昨日の夜楽しみ過ぎて、あんまり寝られなかったよ……」


 休日の朝、慌てて集合場所へと向かってみれば。

 もう既に皆揃っており、私を待っている状態だったようだ。

 ひたすら皆に謝りながら頭を下げていれば。


「ったくもう……これから依頼主に会うんだからね? 寝癖くらい直して来なさいよ」


「うぅぅ、ごめんミリアァ……」


 プリプリと怒りながらも、私の頭を弄って寝癖を直してくれているらしいミリア。

 そんでもってエターニアとガウルも、いつも通り呆れた様な笑みを浮かべている。


「アリスらしいと言えば、アリスらしいですわね」


「今後はもう少し慣れて行かないとな。コレは仕事、遅刻しては信用に関わる」


 なんてお言葉を貰っている内に、ミリアによって寝癖は直され。

 バシッと背中を叩かれた。


「ホラ、胸張んなさい。まずは依頼主に御挨拶、その後は仕事。新装備も作って貰ったんでしょ? キッチリやりなさい」


「うい! 了解だよミリア!」


 そんな訳で、皆揃って依頼主の家へと向かう。

 今私達は、冒険者として活動していた。

 無事全員進級出来た事により、こういう活動が出来るようになったのだ。

 テスト前には付きっ切りで勉強を教えて貰ったり、座学で色々苦戦したりはしたが。

 それでも私達は、皆揃って二年生になった。

 進級したその日に冒険者ギルドへ向かい、全員一緒に登録作業を終わらせた程。

 そして、手渡されたギルドカード。

 私にとって、二枚目の身分証明書。

 そこには、私の個人情報と共に“前衛・戦士”の文字が。

 コレを見た瞬間、本当に覚悟決めた。

 今まで皆に迷惑を掛けて、ウジウジと悩んでいた私とおさらばする決意をしたのだ。

 私は戦士。

 そして前衛だ、アタッカーだ。

 だったら、いつまでも迷ってはいられない。


「アリス、本当に平気?」


 これまでの授業でも、結構心配ないくらいに動けていたと思うのだが。

 ミリアは未だにちょっと心配そうな瞳を向けて来る。

 だからこそ、満面の笑みと一緒に親指を立てて返した。


「大丈夫、行けるよ。ちゃんと自分の判断に責任を持つ。そんでもって……迷ってばかりじゃ、生きて行けないもんね!」


「よろしい。んじゃ、行くわよ」


 そんな訳で、本日から始まる冒険者活動。

 とはいえまだ学生だし、全部を賄える程には稼げないだろう。

 仕事時間だって短いのだ、だからこそ受ける依頼は選ばなければいけない。

 だとしても、私達の様な存在が初めて社会に出るのだ。

 これまでの生活とも、学園生活とも違う。

 相手は困っていて、依頼を出して。

 それを受け、しっかりと内容通りにこなす。

 成果と結果が求められており、相手には金銭を支払う責任が発生する。

 これまでは間違っても怒られるだけで済んだ。

 でもこれからは違う、私達が間違えば実害が出るのだ。

 だからこそ、もう一度気を引き締めてから。


「行こう皆、初仕事だよ!」


「いや、アンタが一番遅れて来たんだけどね?」


「そう言う事言わないでよミリアァ!」


 結局いつも通りの雰囲気になりながらも、私達は四人で歩き出した。

 いつも通りの街並み、普段から見ている光景。

 だというのに、今日だけは少しだけ違うモノに感じられた。

 こういうのが、少しずつ大人になるって事なのだろうか?

 今までは、知らない事が怖かった。

 自らがどれ程生きていられるのか不安だった。

 今でも私の問題が解消された訳ではない以上、不安が全然ないって言ったら嘘になるけど。

 それでも。

 私は今、一日でも長く生きたいと望んでいる。

 友人達と一緒に生きていたい、何よりミリアという相棒の隣を歩く為に生き延びなければいけない。

 そういう風に、思える様になったんだ。


「ミリア、今日もよろしくね」


「はいはい、変な事して私の仕事増やさないでよね? アリス」


「わかってるってばぁ~」


 例え自分がどんな存在であろうと、どういう環境にあろうと。

 多分私は今、誰よりも幸せを感じている。

 友達に囲まれ、頼もしい相棒も居て。

 そして冒険者として、他の相手からも必要とされている。

 凄く普通に、生きている。

 私は今、幸せだ。


「うへへ」


「ニヤけない、シャキッとする」


「うい!」


「ったくもう……ホントに変わんないわね、アンタは」


 そんな会話をしながらも、私達は依頼主の元へと向かうのであった。

 孫の魔女として、昔は忌み嫌われた私の物語は。

 多分ここから、前を向いたその時から始まるのだ。

 だって私は、今凄く楽しいから。

 ここからなら、いくらでも物語を作っていけそうな気がする。

 魔女の孫と、その相棒。

 更には仲間達と一緒に、どこまでも。

 だから私は、今日も思いっ切り笑うのだ。


「こんにちはー! 依頼の確認に来ましたー!」


「コォラァ! アリス! 街中でデカい声を上げるな!」


 とりあえず今日も、相棒からゲンコツを頂いてしまうのであったとさ。

 兎にも角にも、私達の物語はココから始まる。

 はじまりはじまり~ってな。

 この物語の終わりは、きっとまだまだ先になる。

 だったら今から気にしても仕方ない事なのだろう。

 なら、その日その日を笑って過ごしたいじゃないか。

 それだけを胸において、私は今日も。

 相棒と、仲間達と一緒に。

 共に笑い合って、生きて行くのであった。


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