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赤ずきんは魔女の孫  作者: くろぬか
4章

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第77話 緊急事態


「これは、どう言う事だ……?」


「いやぁ、あのぉ……すみません」


 翌日、放課後。

 件の決闘モドキの立ち合い人をエルフ先生にお願いしようと、教師の執務室へと一人でやって来た。

 未だ仕事中だった彼に事情を説明し、許可証を出した所で。


「あれ程考え無しに動くなと言っておいたのに……貴様というヤツは」


 勝利した時の条件を見て、先生は額に青筋を浮かべた。

 やっばい、コレは不味い。

 勢いでエターニアの申し出を了承してしまったが、魔女に関する内容とか洩らしちゃうのは流石に不味かったか。

 そりゃそうだよね、討伐隊が出来る程大事になっているんだから。

 不味いですよね、そうですよね。


「あ、あのぉ、コレ私が負けて情報が漏洩した場合、処罰とか受ける感じですかね……」


「ん? あぁ、アルテミスの件か? そっちは大丈夫だ、近々公表される事だからな。それに伴い学園側からは、生徒の行動制限と門限の時間の見直しがあるぞ」


「意外と普通だぁ……」


「それはそうだろう。隠しておいて被害が増えるより、公表して警戒する人間を増やした方が早い。だが討伐隊に加わる貴様は、私と一緒に街へ出る機会が増える。覚悟しておけ」


 なるほど、つまり魔女云々の一件は特に隠す必要は無し。

 であれば何をそれ程怒ったのか、はてと首を傾げてしまえば。


「何故分からない大馬鹿者。エターニアは、どういう存在だ?」


「えぇっと? 貴族で、それなりの身分があって?」


 私の返答に対し、彼は非常に大きな溜息を溢してから。


「術師だ。お前とは活用法が違うにしろ、それは変わらん。そしてそんな者が私の教えた技術を聞き齧る程度に教わったらどうなると思う? 間違いなく試そうとする、するとどうなる?」


「……あ、はい。教え無しにいきなり使ったら、間違いなく死にますね。私の場合弾丸があったから良かったですけど、その練習すら無しにいきなり術を行使したら……間違いなく事故が起きます」


「その通りだ。よく考えて行動しろ、馬鹿者」


 完全にそっちは頭から抜け落ちていた。

 むしろ術式に関しては、今後も目の前で披露する事になるだろうから、なるべく早く説明しておかないとなぁ~とか馬鹿な事を考えていた。

 そうだよね、術師だったらこんな使い方教えられたら試すよね。

 私だったら、絶対そうしたと思う。

 コレを説明するのなら、まず専門家からしっかり授業を受けないと。

 間違っても甘い考えで行使して良い術ではないのだから。


「もしもお前が敗北した場合、彼女にも私の授業を受けさせる必要があるな」


「本っ当にすみませんでした!」


 もはや腰を九十度に折る勢いで頭を下げてみれば、彼はもう一度ため息を溢してから立ち上がり。


「まぁ、こうなってしまったからに仕方ない。立会人をやってやろう、それから貴様の術にも耐えられる防御魔法もな」


「た、助かります……」


 とりあえず許可は頂けた様で、ホッと胸を撫でおろしてみるが。

 先生は今一度私にジトッとした瞳を向けた上で。


「だが、大丈夫なのか?」


「えっと、何がでしょうか?」


 私の一言に対し、彼は丸めた許可証でポコッと此方の頭を叩いてから。


「相手は、学年内でも一位二位を争う程に優秀な術師だぞ。まさか忘れていたのか? それとも何処かの魔女に“エレメンタルマスター”とやらに認められて、自らが最強になったつもりか?」


「……あ」


「あ、ではない。馬鹿弟子め。いくらお前の術が速く発動出来て、効果が高かろうと。相手はそれ以上に速く、しかも連射出来る武器を持っているんだぞ? 更に魔力の貯蔵量は相手の方が上。熱くなって決闘ごっこをするのは構わんが、情けなく敗北する様な事態にはなるなよ?」


 何で言われるまで気が付かなかったんだ、私。

 確かに相手はクラスの中でも、術師という意味ではトップ。

 彼女と競う様に、実戦形式の授業で成果を上げているのはアリス。

 その他諸々の行いで、減点が多い為あまり意識した事は無かったが。

 私は、間違いなくエターニアより格下の術師なのだ。

 やばい。

 先生の言う通り、新しい技術を覚えたことによって調子に乗っていたのかも。

 しかも今彼女が使っている銃、アレが非常に問題だ。

 試合開始直後に連射されたら、私は防壁が間に合うのか?

 更にその状態で反撃しないといけないのだ。

 そんな状態では、私の最大火力である“ウォーターカッター”など出せる暇がない。

 アレは発射するまでの工程が多過ぎて、普通の術よりずっと時間が掛かるのだから。

 更に言うなら、模擬試合程度にローズさんから貰った弾丸を使って良いのかって話にもなって来るし……。


「せ、先生……どうしましょう。勝てる自信無くなってきました」


「知らん、頑張れ」


「せんせー!」


 顔面蒼白になった私を無視して、彼はスタスタと会場まで歩き出してしまった。

 お願い、お願いだからもう少しゆっくり歩いて。

 その間に何か作戦を考えるから、どうにか初手の対応だけでも考えるから!


「実戦では、相手は待ってくれないぞ」


「そうは言いますが! だってあの武器どうやって攻略したら良いんですか!? アイツの魔力量を考えたら、ずっと撃って来る可能性だってあるんですよ!?」


「それを考えるのは、対戦相手のお前の仕事だ」


「そうなんですけどもぉ! 師匠ぉ!」


「学生同士での事柄なら、私は公平に両者の教師である事を忘れるな」


 ウチの師匠、こう言う所だけはキッチリしているらしい。

 居酒屋に行った時は物凄く適当に注文する癖に、酔っぱらってすぐ饒舌になる癖に。

 私生活は意外とだらしないだろ! この生臭エルフ!


「何か言ったか?」


「いいえ何も、決して口に出してはいません」


 と言う事で、それっぽいアドバイスも頂けないまま。

 私達はエターニアが抑えた試合会場へと向かうのであった。

 あぁぁぁ……これはヤバイ。


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