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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

自伝~私が見つけた居場所~

作者: ペケサ・バツ

私はディンさんの歴史書に非常に興味がある。

昔の思い出がそれを読むたびに正確に思い出すことができる。

ディンさんが書いた物ほど感情的になれた物はないだろう。

(あの方にこんな才能があったとはおどろき・・・・おっといけない。この部分はくれぐれも内緒にしておいてくれるとありがたい。)


そこで私もディンさんを見習い、ほんの少し、筆に触れてみようと思う。

といってもうまく書けるかはわからないのだが・・・・。

とりあえず軽い気持ちで読んでいただきたい。

ではご覧あれ!



----------------------------



アマテラス城下町。

人口は少なく資源にも恵まれていない。

そのせいかどこの国からも重要視されることもなく貧しい街だった。

ただ名前からわかるとおり、街の中心に小さな城がある。

それだけがこの街の取り柄と言えるだろう。


この日、街は静かな夜に包まれていた。

子供たちは眠りにつき、母親はそんな子供たちを優しい目で見守り、男たちは数少ない酒場で小さく盛り上がっていた。

・・・・悲劇がもうすぐそこに迫っていることを知らずに。



皆が寝静まり一日が終わろうとしているときだった。


「撃てーーー!」

「皆殺しだ!」

「すべて焼き払え!」


1000人を超えるであろう兵士たちが街を襲ってきた。

街は一瞬にして火の海に包まれる。

子供たちは泣き叫び、街中に数々の悲鳴が響き渡る中、兵から逃げるようにして街の出口へ向かっている親子の姿があった。



「バツ!しっかり走って!」

「グスッ・・・・うん」

「バツ泣くな!お前のことは父さんが守ってやるからな!」


父親と母親が10才ほどの小さな子供を励ましながら逃げている。

もうすぐで街を出れるところまで来たときだった。


「ここは通さん。お前たちには死んでもらう」


5人の兵士たちが門を塞いだ。

よく見ると兵士たちの腕には『魂』の紋章がある。


「そこを通してくれ!」

「お願いします!」

「それはできん」

「なにっ!?」


3人は兵士たちに助けを求めるがそのうちの1人が冷たく吐き捨てる。


「なぜだ!」

「お前たちによって我々の情報を漏らされるわけにはいかない。死ね」


そう言うと2人の兵士が3人に斬りかかった。

だが次の瞬間、その兵士は血を吹いて倒れる。

その場に残された兵士は動揺を隠せない。


「なめるな。これでも隠密をやっていたんでな。」

「隠密・・・・どこかで聞いたことがある。あの城を守る組織で、城に入ったら最後、生きて帰ってきた者はいないらしい」


兵士たちが唖然としている中、もっとも格が高いであろう男が言う。


「ああそうだ。俺には家族がいる。ここで殺されるわけにはいかない。そこをどけ」

「あいにく俺もお前らを逃がすわけにはいかない。」

「なら死ね!!」


父親が兵士たちに斬りかかる。

だが・・・・


「うっ・・・・」


突然後ろから苦しそうな声が聞こえた。

振り返ると母親が倒れている。

よく見ると腹に1本の矢が刺さっていた。

バツと呼ばれた子供が何が起こったのかわからないのか呆然と立ち尽くしている。

父親が相手を睨むと格が高いであろう男が弓をこちらに向けている。


「てめぇ・・・・死ね!」


男が矢を放つ。

だが隠密である父親は矢をさけられ・・・・なかった。


「ぐはっ!」


父親はその場にうずくまる。


「避けられるとでも思ってたのか?これは天空の弓(ヘブンボウ)と言ってな。天の力を授かったと言われる弓だ。お前なんかに避けられるわけがない」

「バ・・ツ・・・・」

「死ね」

「うわぁあぁぁああああ!!!」


男が止めを刺した瞬間、バツが狂ったように叫んだ。


「哀れだな・・・・」


男が弓を向けたそのとき・・・・いない?

見ると男の子が父親のところへ一瞬で移動している。


今度こそ・・・・。


また弓を向けるがすでにいなくなっている。

すると後ろにいた部下が音もなく倒れる。


「まさか!強いショックを受けたとき、稀に異常なほどの力を発揮すると聞いたことがある。こいつ・・・・」


そう思ったとき、横腹に激痛が走った。


「オマエ・・・・コロス」





「う・・・またこの夢か。あれからもう5年も経ってるしな。オレを入れてくれる国を見つけねーと。そして・・・・」


これまで世界中を旅し、入国させてくれる国を探してきた。

あいつらに復讐するために。

手がかりは腕に『魂』の紋章があるということだけ。

しかし、どの国もオレがこのことを話すとまるで何かを恐れるように追い出した。


「今日で次の国に着くな。ヤオヨロズ国・・・・かぁ」


今度こそ入れてもらいたい。

そう願ってバツは父親の形見である忍び装束をまとい宿を出た。



ヤオヨロズ国入国管理塔。


「ヤオヨロズ国に入国させてください!」


そう叫ぶと中から赤い髪をした優しそうな男性が出てきた。


「私は入国審査官のワイト・レンです。こちらへどうぞ」


彼がそう言うとある部屋に案内された。

いつものことだがここで色々質問される。

もちろんすべて本当のことを言うつもりだ。


「では質問がいくつかあります。あなたのお名前と年齢をお聞かせください。それからあなたがこの国に入ろうとした目的はなんでしょう?」

「オレはペケサ・バツ。16歳だ。オレは家族を、故郷を潰した国に復讐がしたい」

「というと?」

「オレの故郷はアマテラス城下町だった。だが5年前、ある国が攻めてきて家族はみんな殺された。そいつらの腕には『魂』の紋章があった。オレはそいつらが誰なのかを知りたい。そして復讐がしたい。」

「ソウル帝國か・・・・。まぁ今は復讐など忘れて国で生活を楽しみませんか?」


予想外の返答だった。

いつもならこの時点で追い出されているはずなのに。

ここは他の国とは違う。

レンが漏らした“ソウル帝國”という名が少し気になったがここは触れないほうがいいだろう。


「私たちはマナーを守り、しっかり国に貢献してくれる方なら大歓迎しますよ」

「オレはできる限り国に貢献するつもりだ。だが今までどこの国にも仕えたことがない。マナーというとどんなことがある?」

「そうですね・・・・言葉遣いとかですね」


このときバツは自分の言葉遣いの悪さに気付く。


「あ・・・・すみません。以後気を付けさせていただきます」

「あはは、そんなに畏まらなくてもいいですよ。ただ敬語を使うのを忘れてはいけませんよ」

「はい。申し訳ありませんでした」

「気にしないでください。希望理由は正直に言ってくれたし、そこはいいと思います。今後マナーは守れますね?」

「はい!」

「ではあなたの入国を認めます」


これがバツが多くの人々に出会うきっかけとなった。

レンに案内され国に入ると、すれ違う大勢の人々が声をかけてくれた。


「入国おめでとう!」

「これからよろしくな!」

「は、はい!よろしくお願いします!」


初めて出会う人々に戸惑いながらもバツは答える。

そのままレンに連れて行かれたのは宿だった。


「明日国王様にご挨拶してもらいます。ただ今日は疲れているでしょうからしっかり休んでください。そのかわり明日までにこれを熟読しておくように!」


そう言われバツに渡されたのは「国法」と書かれた分厚い本だった。

こんなもの明日までに・・・・。

そう思いながらもバツは急いでページを開くのだった。



明くる日。

コンコン

ドアをノックする音に目が覚める。


「バツさん起きてください。そろそろご挨拶に行きますよ」


ふと時計を見るとすでに昼を過ぎていた。


「ずいぶんと寝てましたね」

「す、すみません!昨日疲れていたみたいで・・・・」


違う。

実は朝方までずっと国法を読みあさっていたのだ。

まあほとんど本を読んだことのなかったのだからそれくらい時間がかかるのは当たり前だろうが・・・・。

今そんなことを言ったら後悔しそうだったので言わないことにした。


「食堂にご飯がありますので軽く腹ごしらえをしておいてください。1時間後にまた来ます。そしたら国王様の所へ行きますよ」


そういうとレンは宿を出て行った。

バツは朝も何も食べていなかったため、すぐに食堂へ向かった。

腹が空きすぎてる。

死にそうだ。


食堂に着くと3人の人達が楽しそうに話していた。

3人はバツに気付くと声をかけてくれた。


「お?新入り?」

「はい!先日ここに入国させていただきました!ペケサ・バツです」

「ペケサさんか~。よろしく!」

「よろしくお願いします!」


一通り挨拶を済ませるとバツは急いで食事を済ませ身だしなみを整える。

ちょうど全ての準備が整ったところでレンが迎えに来た。


「準備はいいですか?では行きましょう」


こうしてバツはレンと共に国王様のもとへ向かった。



王室への前に着くとドアが開かれた。

レンは動きだけで自分だけ中に入れと指図する。

バツは緊張しながら王室の中へ入ると、部屋の奥に国王らしき人ともう1人背中に羽の生えた男がいた。

バツは少し驚いた。

国王がなんと言うか・・・・女性!?

そう、ヤオヨロズの国王は猫耳の生やしたキレイな女性だったのだ。

バツはゴツイ男の人が国王だとばかり思っていた。

それが女性だとわかったとたん、ほんの少しだけ緊張を和らげることができた。


「国王様。この方が先日入国されたペケサ・バツでございます」

「ジョンありがとう。では君、国法はちゃんと読んでくれた?」

「はい!こ、『国王様は猫缶がお好き』ですよね?」


背中に羽の生やした男はジョンというらしい。

国王様といるところを見ると秘書か何かだろうか。

とにかく位の高い人であることは間違いない。

そしてバツは国法に書かれていた合言葉を言う。


「うふふ。ありがとう。君はこれまでにどこかの国に所属してたり軍にいたことはある?」

「いえ、この国が初めてです。ですがこれまでに盗賊や残党と戦ったことは何度かあります」

「じゃあ君には兵士をしてもらおうかしら。それでもいい?」

「もちろんです!」


バツは自分の職業になるであろう仕事を聞いたときに安堵する。

もともと自分は兵士としてやっていくつもりだったのだから。


「じゃあ部隊に入ってほしいんだけど」

「部隊・・・・ですか?」


あまりにも急な話に少し戸惑う。


「そう!部隊に入ったらその部隊の人達と共に行動するの。入ってくれる?」

「わかりました」

「じゃあジョン、リストを持ってきて」


そう言われるとジョンはバツにひとつの資料を手渡した。


「ありがとう。一応こんな部隊があるんだけどね。気になるところとかある?」


ジョンに渡された資料を見ると、そこには数々の部隊の名前あり、部隊員の顔写真も一緒に載せられていた。

ふとバツの目がひとつの部隊に留まる。

“無限の軌道部隊”

その部隊員の中には先ほど宿の食堂で挨拶を交わした3人の顔が載っていた。


「あ~キャッド・ラゴンさんの無限部隊ね。気になるの?」

「えぇまぁ・・・・」

「一応キャッドさんに入隊できるか聞いてみようか?」

「はい!よろしくお願いします!」


しばらくすると王室に先ほど宿の食堂にいたひとりの男性が入ってきた。

その人が無限の軌道部隊の隊長らしい。


「あー君は!えっと~・・・・ペケサさん?」

「はい!」

「キャッド隊長。この子があなたの部隊に入りたいみたいなんだけど・・・・いいかな?」

「もちろんです!大歓迎します!」

「あ、ありがとうございます!」


こうしてバツは無限の軌道部隊に無事、入隊することができた。



「じゃあ部隊の人に顔合わせに行きましょうか」

「はい!」


バツの部隊が決まりキャッド隊長に連れられてある部屋に来た。


「ここが無限の軌道部隊の部屋だから。みんなは中にいるよ」


中に入ると先ほどの2人がいた。


「右から順に、まずライスさん。この国の幹部を務めている方です!」


最初に紹介されたのは蒼い髪をした女性だった。

ライスというらしい。


「また会いましたね。ペケサさん。よろしくです」

「よ、よろしくお願いします!」

「次にハテナ・ディンさん。無限の軌道部隊の副隊長です!」


ハテナ・ディンと呼ばれた人は黒いハットに黒いコートを着た怪しげな男だった。

なんだか・・・・こわい。


「ペケサさんよろしくですよ~。仲良くしましょうね!」

「はい!よろしくお願いします!」


案外いい人そうだ・・・・。


「他にもたくさんの人がこの部隊にはいます。ちなみにディンさんは通称:肉団子「誰がですかっ!?」」


キャッド隊長がディンさんのことを肉団子と・・・・?

確かにところどころ一瞬コートがムキッとしているように見えなくもないのだが・・・・。


「肉団子じゃないですからね!ペケサさん!」


なんだか必死に否定している・・・・。


「とにかくディンさんはみんなのいじられキャラですのでどんどんいじめちゃってください!」


いじられキャラらしい・・・・。


「いじられキャラ!?俺そんなんじゃないですよ隊長!?」

「まぁディンさんそう言わずに。私もこれからちゃんといじめてあげますから」

「やめてぇえぇぇええええ!?」

「ぶっ、あはははははは!!」


早速キャッド隊長とライスさんでディンさんをいじめてる(?)光景にたまらず笑ってしまう。

このときは人生で初めて復讐のことなど全て忘れていた。

この国に、この部隊に入ってよかったと心から思うことができた。




後にバツは復讐のことなど忘れてこの仲間たちと共にすごしていくことになる。

特にディンとは数々の戦争を戦い抜き、もっとも親しい戦友となっていく。

しかし数年後にヤオヨロズ国はバツ復讐の仇であるソウル帝國と戦争し亡滅させられることとなる。

無限の軌道部隊はヤオヨロズ亡滅と共に最後を迎える。

しかし強く結ばれたその絆は、無限の軌道部隊に奇跡をもたらすがそれはまた先の話。

無限の軌道部隊の誇りを失わないでほしいと願うばかりである。



----------------------------



やはりディンさんほどうまく書くことはできなかった。

だがこうして書いてみると改めてディンさんのすごさがよくわかる。

これは自分の過去のほんの一部を書いたものだ。

おそらくディンさんですら私にこの過去があったことは知らないだろう。

私がどのようにしてみんなとめぐり合い、みんなにどれほど救われたのかが伝えることができれば本望である。


では私はこれで筆を置くとしよう・・・・。

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― 新着の感想 ―
[良い点] スムーズな流れで読みやすいです♪ [一言] これからもがんばってください!!
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