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短編小説

ifの手紙

作者: 雨宮雨霧
掲載日:2026/03/17

 花倉様へ

 無事に高校卒業、十八歳になりました。

 今日は卒業式と誕生日という節目です。なので手紙を書きます。

 あなたに渡した手紙は黒歴史だなあと思いますが。黒歴史製造機にでもなりましょう。

 高校三年間、花倉様に会えなかった三年間は長いようであっという間で。

 卒業まで生きているとは思っていなかったし、卒業できるとも思っていなくて。予想外の出来事です、今という状態は。

 花倉様のおかげでがんばることができた三年間でもありました。

 毎日先生のことを思い出して大好きで居て。文面にするとあれですが、思い出しては幸せでした。

 三年生になって、花倉様にがんばったって言えるようにがんばる。それを達成するためにがんばりました。色々あったけれど。

 三年間でも振り返りましょうか、勝手に。

 一年生はまだ精神状態もよろしくなくて。入学式も行けるわけない、行くわけがなかった。なのに今日は卒業式に行くんですよ。成長だと思っておきます。

 最初のスクーリングはもう死んでました。胃に穴が空くくらいにはひたすらに。

 レポートとスクーリング、テストというサイクルは変わらないので。はい。なにを振り返りましょうか。

 毎月、毎日レポートいやだーおわらんーむりーやめるーと連呼していました。想像できるでしょう、先生なら。しなくていいよ。三年間このループ。毎日のように。

 冬になってから小説を少しずつ書き始めました。それからはそれが日常。

 二年生は、一年生のときにできた推しのチェキを買っては届くのを待って、それを励みに生きてたり。

 推しが卒業したときはもう大号泣でした。でも帰ってきたんですよ、卒業したその一年後に。うれしかったな。

 推しのライブには生誕祭と卒業ライブに行きました。ライブですよ、まさか自分が。

 推しが居なくなったからなのか、短歌も俳句も小説も一層力が入って。

 とある連載した小説は二十五万文字を記録したほどです。やばいです、自分が怖い。

 やっぱり色々あったのは三年生でした。

 上半期は小説書いたり短歌を詠みまくったり。滞っていた俳句と川柳も毎日詠むようになりました。短歌を詠んでも川柳のほうが好きです。懐かしい響きの名前のものは伏せておきましょう。思い出はしまうものですから。

 下半期。七月。

 学校に行ったついでに求人票を見せてもらうことになって。自分から頼まないとなにもできないので、がんばりました。

 がんばったのにな。求人票見終わったらまた来る、と言って去っていった担任は現れませんでした。

 LINEしても一時間半待っても来ない。可哀想な話だな全く。

 八月。勇気を出して職場見学に行きたいと連絡をして、いざ見学の日です。

 担任にドタキャンされました。え?爆笑です。

 一時間以上待たされた経験が既にあったのでこれといって動じることなく。行きました一人で。えらいですね。ほめてくださいね。

 しばらく経って、校長に相談のメールを送って。担任があれなので、トップも狂ってるんだろうと思ってたんですがそうでもなく。

 思ったより大事になって校長と教頭が謝罪に来るまでになりました。びっくり。

 今振り返ると、よく行ったな、よくメールしたな。という感じです。

 行くのやめるのが自分の普通だし、メールなんかできないのが、相談できないのが自分です。

 それがなんと。ね、すごいですよね。花倉様の予想の斜め上を行けたのではないでしょうか。

 行けたのも、相談できたのも花倉様のおかげなんです。

 あの紙も未だにあなたのだけは取っておいていて。

 自分の殻を破る。逆境を生き抜く力。それを思い出して、がんばれて。

 言葉って生きるんですよ。生きるんです。その人の人生の一部になる。

 なのでほめるべきなのは花倉様ですね。ありがとう、本当に。言葉をくれて、強さをくれて。

 普通に固執して、普通に働こうと思って行った職場見学。

 できない、無理だ。と自分で思いました。普通は無理でした。

 普通からは外れて、また別の場所にお世話になることになりました。

 色々見学に行って、考えての結果です。

 きっとこれから、もっとたくさん大変なことがあるだろうけど。

 辛くて死にたくなるかもしれないけど。普通になりたがるだろうけど。

 花倉様が居るから大丈夫。また会いたいから生きてきた三年間。それからも変わりません。

 本当に濃密な人生でした。

 高校生活の思い出はドタキャンされたことです。それしかありません。そんなことはないだろうけど。

 しんどかったことは、学校に行く道中で息ができなくなったことですかね。死ぬかと思った。

 三年間評定オール五。今年は観点もオールAでした。がんばれたかな。

 花倉様はどうでしたか。この三年間は。

 大変だっただろうけど、花倉様が元気で幸せに過ごしてくれていたらいいな。

 それが私の願いです。

 先生を好きになって三年半。出会ってもうすぐ五年。早いね。

 なんで花倉様のことを好きになったんだろう、とたまに考えるんです。

 嘘を真実にしない人。誠実だったね。真面目でさ、とても。

 元気?って聞いてくれるのうれしかったんです。聞かなくなりそうなものを、聞いてくれる。

 毎回のやりとりって自分にとって大切なんだな、と思います。

 なにもできなくなって、ゼロからまたっていう人生。

 本当に当たり前のことができなくなって。やっぱり辛かった。

 でも花倉様が居てくれたから、また少しずつ頑張れるようになりました。

 少しずつできることが増えて、話すのも少しずつできるようになって。

 決して無駄ではなかったんだと思います。

 学校に行けなくなったのも、普通から外れたのも。死にたくて仕方なかったのも。花倉様を好きになったことも。

 好きになった理由。それは色々あるし、好きではまとまらない。ただの好きではないから。

 そうだな。なんだろうな。なんだと思いますか?

 憧れも感謝も好きもたくさん詰まった花倉様への思いは語りきれません。言葉にできない。

 最初で最後の手紙に書いたのも全部本音だらけであんな手紙捨ててくれてかまわないので。はい。

 連絡先書くかどうするか一生悩んでたんです、ギリギリまで。

 書かなかったのは大正解でした。

 きっと花倉様のことを傷つけていただろうから。

 なにを悩んだかっていうと。死にたがってたので、ずっと。

 死んだら先生のこと、いくらどうでもいい生徒だったとしても悲しんでくれそうだし。

 死にたいって言っちゃいそう。死ぬとか言いそう。嫌でしょお互いに。

 死ぬときですら花倉様にはなにか残してしまいそうだから。

 全部消したい、終わらせたいって思ってる人間なのに。あなただけは。

 なのでよかったです。大好きとか言っても困るでしょ。

 会えないから、話せないから生まれる物語。

 自分にはこの生き方が合っているんだと思います。

 花倉様を愛して、会えなくてもそれを物語に落とし込む。

 廃人は廃人らしく生きてるよ。大丈夫。


 それでは。巡り合えたキセキに感謝して。

 今日も生きてくれてありがとうございます。

 大好きだよ、花倉様。


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