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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者


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第28話:狂乱の戦場

 森の広場は、もはや鉄の匂いと魔獣の咆哮が支配する、逃れ場のない修羅場と化していた。


 キメラの、理性を欠いた暴力的なまでの猛進。


 その巨躯を受け止めきれず、歴戦の勇士であるヴァルガスの身体が紙屑のように弾き飛ばされた。


 一行を守っていた鉄壁の防壁に、致命的なまでの穴が空く。


「ヴァルガス殿ッ!!」


 ロゼリアが悲鳴に近い叫びを上げ、死力を尽くして剣を振るう。


 彼女の放った鋭い刺突は、キメラの三首の一つ、山羊の首の喉元を深々と捉えた。


「やった!お姉様!」


何もできないリフルがロゼリアの剣技に感嘆の声を上げる。


だが、それは勝利を告げる一撃にはならなかった。


山羊の首が悶絶し、噴き出した鮮血が、本体であるライオンの狂気をさらなる深淵へと加速させる結果を招いただけだった。


「……ぐ、ぅ……皆の者、諦めるでない……ッ! 英雄の歩みを、ここで止めてはならぬ……!」


 頼みの綱であるエルドが、今にも折れそうな膝を震わせながら、自らの命を削るようにして杖を突き立てた。


 先ほどからの連戦により、彼の魔力は既に底を突き、枯渇寸前にある。本来ならば気を失い、崩れ落ちていてもおかしくない限界状況だ。


 だが、彼は並々ならぬ気迫で己を奮い立たせ、消え入りそうなほどに薄い、薄氷のごときシールドを維持し続けている。


 その姿は、法を説く司祭というよりは、一人の誇り高き、そして執念深い老兵のそれであった。


(……もしかして、あの一行、みんな既に満身創痍なのかしら)


 その凄絶な光景を、数百メートル離れた樹上からストーリアは眺めていた。


 深いフードに隠された瞳が、冷徹な観察者のそれとなって細められる。


(あの司祭……魔力のオーラはほとんど感じられない。なのに、あの執念……。ふふ、放っておくには少し惜しい素材ね)


「そうだ、もう一つのテストもしてみようかな。あの子を使って……」


 ストーリアは小さく溜息をつくと、腰に忍ばせた筒のようなものから新たな一矢を取り出した。


 それは通常の矢ではない。漆黒の軸に、不気味な文様が刻まれた『スリーブ・ニードル(昏睡の針)』。


 ストーリアは狙いをキメラのライオンの眉間――その急所へと定め、極限まで集中力を高めていく。


 彼女の薄い唇から、奇妙な、だが悪魔的に音楽的なリズムが漏れた。


「タタタン、タタタン……タタタン、タン……」


 呪いの詠唱をリズムに乗せ、弓の弦をギリギリと引き絞る。


 意識の外側から、世界の理を書き換える不協和音。


「――タタタン、タン!」


 放たれた針のような矢は、物理法則を嘲笑うかのように空中で意志を持ち、軌道を変えた。


 それは美しいカーブを描きながら、死の静寂を伴ってキメラへと殺到した。


 一方、血の匂い渦巻く戦場では――。


「平気か!? ヴァルガス殿! 返事をなされよ!」


 エルドが叫び、倒れた巨漢へと必死に視線を巡らせる。


 その動揺はロゼリアにも伝わり、彼女の視線がほんの一瞬だけ、キメラの動きから逸れた。


 キメラはその絶好の隙を見逃さない。


 喉の奥で灼熱の炎を練り上げ、手負いのヴァルガスにトドメを刺さんと猛然と詰め寄る。


 万事休す。誰もが最悪の結末を確信し、ルシアが震える手で薬草を握りしめた、その瞬間だった。


「――ドスンッ!!」


 凄まじい音を立てて、キメラの巨躯が崩れ落ちた。


 つい先ほどまで、この世を呪うような殺意を撒き散らしていた猛獣が。


 糸の切れた繰り人形のように。あるいは、底なしの深い泥の中に突如として沈められたように。


 猛烈な衝撃と共に、地面へと叩きつけられたのだ。


「……え?」


 ルシアが、呆然と声を漏らす。


 目の前のキメラは、もはやピクリとも動かない。


 ただ、そのライオンの頭部、眉間の中心には、きらりと光る一本の小さな針が深々と突き刺さっていた。


 そこから、不気味な紫色の煙が微かに、だが執拗に立ち上っている。


 ――理の及ばぬ地で起きた、唐突な沈黙。


 ルシアたちはまだ気づいていない。


 自分たちが、さらなる強大な「呪い」の持ち主の掌の上で、踊らされているということに。


一体何が!


明日は20時予定です!

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