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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者


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第27話:森の試験場

 その鋭い牙は、確実に獲物の喉笛を狙い、空気を切り裂いた。


 巨躯から放たれる圧倒的な質量攻撃。


 だが、対峙する女――ストーリアの表情には、恐怖の欠片も浮かんでいない。


 彼女がこの森に足を踏み入れた理由は、ただ一つ。


 己の魔道の鍛錬、そして新しく手に入れた禁忌の武器の「感覚(センス)」を調整するためである。


 ストーリアは、猛り狂う三首の魔獣キメラとの間合いを、数ミリ単位の精密さで調整していく。


 それは戦いというよりは、冷徹な外科手術の現場に近い。


「このくらいが、一番効率的な間合いかな……。

じゃあ、次は『呪い系』で試してみようか。

――カース・ニードル」


 彼女の弓から放たれた漆黒の魔力の矢。


 その鋭利な切っ先は、キメラの山羊の頭の、さらにその目の上へと深く突き刺さった。


「グォォォォォーッ!!」


 凄まじい咆哮が、森の木々を震わせる。


 己の誇りを、そして肉体を弄ばれたことへの殺意を剥き出しにし、キメラはストーリアへと襲いかかった。


 だが、彼女は水のようにその猛攻を受け流し、冷ややかに言い放つ。


「これくらいでうるさいわよ。……テストなんだから、もっと正確に動いてくれない?」


 彼女が放つ魔弾の軌道は、どんな窮地にあっても一分の狂いもない。


 性格無比。それは、対象への慈悲が一切欠如しているがゆえの精密さだった。


「せっかく正確に目の上を狙ってあげたのに。ちゃんとこちらを追ってくれないと、術式の蓄積データが取れないじゃない」


 次は尻尾を狙う。


だが、キメラも森の王としての意地があるのか、その刺突を素早くかわし、灼熱の火炎ブレスを吐き散らした。


「……これは少し、厄介ね」


 ストーリアは眉をひそめる。


 呪いの浸透速度が、予測よりも数パーセント遅い。調整が必要だ。


「呪いがあまり効いていないみたいね。魔力の根源から書き換えないとダメかしら……。

まぁいいわ、今日はこれくらいで終わりにしてあげましょう」


 ストーリアは流麗な、そして人間離れした俊敏な動きでキメラから距離を取る。


 一度身を隠せば、彼女の気配は森の深淵へと完全に溶け込んだ。


「この程度なら、放置しても死にはしないわね。……殺しちゃうと面倒だし、また後で『相手』をしてもらわなきゃいけないんだから。ごめんね、キメラさん?」


 背後で狂乱し、周囲を破壊し尽くす怪物の咆哮を子守唄代わりに、ストーリアは確実に足跡さえ消して森の奥へと消えていった。




 ――その直後のことである。


「今の叫びは何!?」


 リフルが、恐怖よりも好奇心を爆発させた瞳で声を上げた。


 彼女にとっては、この異形の声さえも「お宝」や「未知の知識」への呼び水に過ぎない。


 ロゼリアの背後から身を乗り出し、期待に満ちた声を出す。


「まさか、本物の魔獣? こんな場所で聞けるなんて、ちょっと面白そうじゃない!」


「 ……ただの魔獣じゃなさそうね。この殺気、そして大気を震わせる魔力の質。エルド様の言う通り、ここは相当な危険地帯のようだわ」


 ロゼリアが剣の柄に手をかけ、周囲の木々を鋭く見据える。ヴァルガスも既にいつもの「戦士の顔」に戻り、重い盾を構えて部下たちに無言で指示を飛ばしていた。


 だが、エルドは杖を握る手に力を込め、苦々しく吐き捨てた。


「お嬢様、面白いでは済みませぬぞ。……ここは危険地帯、いや、それ以上の『災厄の通り道』かもしれませぬ」


 ヴァルガスの目も、歴戦の戦士のそれへと鋭く切り替わる。


 静まり返ったはずの森が、にわかに波打ち始め、

森の入り口の巨木が、まるで紙細工のようになぎ倒される。


 激しく揺らめく枝葉の隙間から、血の匂いを撒き散らして飛び出してきたのは――。


「グオオォォォォォン!!」


 それは、ストーリアによって極限まで「苛立たされ」、呪いによって「狂わされた」三首の魔獣。


 ルシアの目の前に現れたのは、本来戦うべき時期を大幅に前倒しされた、理外の死神であった。


「げえっ! なんで、いきなり本丸が出てくるんだよぉぉぉっ!!」


 ルシアの絶叫が、夕焼けの空に虚しく響き渡った。


怒り狂うキメラの視界に、ちょうどいい「八つ当たり」の標的として、ルシア一行が飛び込んできた。


「総員、散れ! ヴァルガス、正面を抑えろ! ロゼリア、横から斬り込め! リフル殿はコイツには部が悪い、下がっておれ」


騎士団ヴァルガス以下5名の精鋭たちも、キメラは初めて相手にする。


「こんな殺気は初めてだ!とにかく陣形を崩すな!」


 一方、その戦場から数百メートル離れた樹上では、フードを深く被ったストーリアが、足を止めてわずかに振り返っていた。


(あら……。誰か別の『標的(えもの)』が来ちゃったみたいね)




彼女は一体⁈


明日も9時くらいかもしれません!

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