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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者


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第14話:生ける迷宮と、黄金の令嬢

続き行きましょう

 「骨のバリケード」から救出されたばかりのリフル・ベルシュタインは、煤で汚れた顔を拭うこともせず、好奇心に満ちた瞳を迷宮の奥へと向けていた。


「――で、それはそうと、あなたたちは一体こんな暗闇で何してるの? 遠足にしては物騒だし、墓荒らしにしては人数が多すぎる気がするけど」


 リフルが、まだ煤のついた顔を傾けて、ずいと同中を問い詰める。


 ルシアが「ええと、それは……」と言い淀む中、エルド司祭がこれ幸いとばかりに胸を張り、一歩前へ出た。


「ふむ、よくぞ聞いてくれましたな。ベルシュタイン家の令嬢ともあろう方が、この『光』を放つ一行の正体をご存知ないとは!」


「光? ……松明が眩しいだけじゃなくて?」


 リフルの冷静なツッコミを無視して、エルドは芝居がかった手振りでルシアを指し示した。


「我らは、この理に選ばれし勇者、ルシア殿を伝説の地へと導く『聖なる遠征隊』ですぞ! 目的はただ一つ、この迷宮の底に眠る伝説の武具――ドラゴンスレイヤーを回収し、世界に迫る危難を払うことにあります!」


「ドラゴンスレイヤー!? 本気!? あれって、おじいちゃんの昔話に出てくるおとぎ話じゃなかったの?」


 リフルの目が、一瞬で「¥」……ではなく、純粋な好奇心の輝きに染まる。


 そこへ、ヴァルガス団長が「ガッハッハ!」と豪快な笑い声を重ねた。


「お嬢ちゃん、嘘じゃねえぞ! このルシア殿は、あの『特賞』を引き当てた本物の強運の持ち主だ。


 俺たちは王命に従い、彼がその剣を手にする瞬間を警護し、証人となるためにここにいるってわけだ。なあ、ロゼリア!」


 話を振られたロゼリアは、不快そうに眉をひそめ、剣の柄を握り直した。


「……私は、ただ剣を求めてここにいる。それだけよ。彼が本当に相応しいかどうかは、剣が決めること」


「へぇ……勇者さまに、最強のお姉さま騎士に、胡散臭い……あ、いえ、立派な司祭さまね」


 リフルは品定めするようにルシアをじろじろと眺めると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「面白いじゃない! 私、決めたわ。お宝があるなら、その『ドラゴンスレイヤー』が本物かどうか、この私が隣でしっかり鑑定してあげる! ベルシュタイン家の目は節穴じゃないんだから!」


「(……いや、帰れよ。お嬢様は地上に帰るべきだろ……)」

 ルシアの切実な心の声は、再び無視された。


 その言葉に、ルシアは思わず顔を覆った。一歩間違えれば、この場所で孤独に骨と同化していたはずの少女だ。その状況で、どうしてこれほどまで前向きに、いや、欲張りになれるのか。


「(……恐ろしいな、この子。ついさっきまで震えていたはずなのに、お宝の一言で全部リセットかよ。はっきり言って、遭難者だろ、君は)」


「ちょっと、今『この子』って言った? 失礼ね、私はリフル。ちゃんとしたレディなんだから、名前で呼びなさいよね、ルシア!もう、ルシアと呼ぶわ!」


「えっ……声に出てたか?」


「お兄さん、顔がうるさいのよ。……まあ、いいわ」


 リフルは不敵に笑うと、今度は先頭で道を切り拓くロゼリアの背中を見つめた。


「ねえ、ルシア。あの先頭の超絶イカしたお姉さまは誰なの? 何者なのよ、私、惚れちゃった。あの迷いのない足取り、指先一つまで無駄のない所作……。


 私、隠密の修行をしてきたから分かるの。あのお姉さま、私よりずっと美しい。……城に戻ったら、『カフェ』にお誘いしようかな」


 ルシアは引き攣った笑いを返すのが精一杯だった。


ロゼリア・ウォーハートをカフェに誘う。それは猛虎の檻に素手で入り、お茶をしようと提案するような暴挙に思えたからだ。


 一行はリフルの軽口を背景に、さらに奥へと進んだ。だが、歩を進めるにつれ、周囲の景色に奇妙な「既視感」が混じり始める。


「……みんな止まって」


 ロゼリアが片手を上げ、全員を制止させた。

 松明の明かりが照らし出したのは、先ほどリフルが這い出してきたはずの、崩れかけた「骨の山」だった。


「な、何ですと……!? これは、先ほど我らが通り過ぎた場所ではありませんか!」


 エルドが真剣な面持ちで周囲を検分する。彼の杖が示す魔力の方位も、狂った羅針盤のように定まらずに揺れていた。


「……お主ら、しかと聞きなされよ。もしやこのダンジョン、意思を持って『生きて』おりますぞ。


 古の噂では聞いたことがある。秘宝を祀りし迷宮には、侵入者の精神を惑わし、同じ場所を永久に彷徨わせる魔法がかけられておる。と


……ここは理を超えた、拒絶の空間」


「生きてるダンジョン……!? ますますお宝があるって確信しちゃった! 守りが固いってことは、中身は相当なものよ!」


 リフルが瞳を輝かせる。エルドもまた、財閥の娘と伝説の剣の両方を手にする野望に、その頬を紅潮させた。


「ふむ、左様ですな。真実の宝は、常に試練の向こう側にありますぞ。


 ……しかしルシア殿、これはいかがしたものか。右、左、そして先ほどは咆哮が聞こえた真ん中。また同じ分岐に戻ってくるとは……お主、次はどうされますぞ?」


 エルドは再び、責任の重しをルシアに放り投げた。

 ルシアは、三つの穴を見つめた。


 先ほど咆哮を聞いたはずの「真ん中の穴」。だが、今のリフルに恐怖の色は微塵もない。


「ワクワクしてきたね! 真ん中でいいじゃない、真っ直ぐが一番よ!」


「もうリフルが英雄でいいんじゃね?」

ルシアは本気だ。


「あら、それはダメよ、束縛されるの嫌いだから」


 リフルがもはや一番嬉しそうに声を弾ませる。その無邪気なまでの強運(あるいは不運)に押されるように、一行は再び移動を開始した。


「(……戻ってくるんじゃないか? いや、それ以前に……)」


 ルシアは最後尾から、ロゼリアの背中を見つめた。


 彼女はリフルの視線に気づいているはずだが、一言も発しない。ただ、愛剣ソード・オリヴィアの鞘を握る拳に、先ほどよりも強い力がこもっているように見えた。


 真ん中の穴。

 そこは、先ほどルシアだけが聞いた「咆哮」の主が待ち構える深淵。


そこへ

 一歩足を踏み入れると、先ほどまでの湿った水音は消え、代わりに「ザラザラ」とした、巨大な鱗が岩を擦るような音が響き始めた。


「ねえ、お姉さま。城に戻ったら、美味しいケーキを食べに行きません? 私、いいお店知ってるの!」


 リフルの屈託のない誘いが、死の匂い漂う回廊に響く。


 その瞬間、闇の奥で「黄金の瞳」がカッと見開かれた錯覚のようなものを、ルシアだけが感じとっていた。


この後どうなる!


明日も20時。よろしくお願いします

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