第1話:自称、傍観者
初めまして。
本当に初めての小説と投稿になります。
福引きで人生に少し変化が起きてしまった主人公。
楽しんでいただければ幸いです!
歴戦の冒険者。
人はオレのことをそう呼ぶ……。
いや傍観者か
すすけた外套を揺らし、生傷の絶えない体で死地を彷徨う。瞳は常に鋭くたぎり、飢えた狼のごとく次なる獲物を探し求める。
ここのところ、モンスターとの凄まじい死闘が続き、命の源とも言える《薬草》のストックが底を突いてしまった。
死の香りに導かれ、運命に抗うようにして辿り着いたのが、この町である――。
(……というのは、全部俺の脳内設定だ。本当の俺は……ただの落ち着きがない住所不定の風来坊だ。
そそっかしく、ドジで、何もないところで派手にコケ、段差で滑り、角があれば必ず頭をぶつける。生傷が絶えないのはそのせいだし、目がギラついているのは、空腹と寝不足で血走っているだけだ。
今の俺は、水と同じくらい、いやそれ以上に薬草が必要なんだ。一刻も早く、あの忌々しい打ち身の痛みを鎮め、安宿のベッドで泥のように眠りたい……!)
ここはグレースランド。
一歩足を踏み入れば、誰もがその美しさに息を呑む。
ここは、王国でも指折りの活気を誇る城下町。ルシアが命からがら辿り着いた、運命の舞台だ。
町全体には、磨き抜かれた白灰色の石畳が続き、太陽の光を柔らかく反射している。
町のどこにいても巨大な「時計塔」が重厚な時を刻み、その鐘の音は清流のせせらぎと共に町中に響き渡る。
町の心臓部には、色とりどりのタイルで装飾された「円形広場」。中央には四季折々の花が咲き乱れる巨大な花壇が設置され、その周囲は常にバザールに集まる人々でごった返している。焼きたてのパンの香り、商人たちの威勢のいい声が絶えることはない。
町の北側を流れる豊かな川には、幾つもの大きな水車がゆったりと回り、生活の活力を生み出している。その先には、底まで透き通るほどに綺麗な、池のような小ぶりな湖が静かに佇んでおり、市民の憩いの場となっている。
町に一歩足を踏み入れた瞬間、耳を打ったのは、奇妙な音だった。
「チリン……チリン……」
どこか遠くで鳴り響くベルの音。それは一つではなく、町の至る所から呼応するように聞こえてくる。歓迎の鐘にしてはあまりに細く、神経を逆撫でするような音色。
だが、今の俺にそれを怪しむ余裕はなかった。泥に足を取られ、派手な音を立てて転倒しそうになりながら、俺は一軒の道具屋へ転がり込んだ。
「……親父、薬草をくれ。差し当たって2週間分ね」
「おや、そりゃまた酷い生傷だねえ、兄ちゃん」
虎の子の銅貨を払い薬草を包んでもらう。その時、店主が小さな紙切れを差し出してきた。
「はいよ、おまけだ。オレの名はグドー。ここで店主をしてる。今、町を挙げてやってる『抽出の儀』……福引の券さ。2枚ね。まぁずっとやってるんだけどな」
「……福引き?」
「知らねえのか? そりゃ無理もないか。この町じゃ、買い物したら大体これがついてくる。捨てることは許されねぇ。まぁ誰も捨てないがな」
外に出て、壁に貼られた景品リストを見る。
【特賞:伝説の剣】
【1等:町外れの土地】
【2等:純金の玉座】
【3等:オリハルコンの何か】
【4等:薬草一月分】
【5等:運のタネ】
ん?
特賞、伝説の剣。
見慣れない言葉に、思わず声を失った。
……ここ、道具屋だよな?
伝説の剣?
あの、岩に刺さってるとか、神殿に封印されてるとか、そういう類いのやつだろ。噂で聞いたことがあるのは、ロトがどうとか、そんな話だけだ。それが、福引き?
「……バチ当たらない? これ」
ぼそっと言うと、近くで見ていた客が吹き出した。
「はは、初めてか? ここはそういう町だよ」
一等、町外れの土地。……なんで外れてる。事故物件か。いわくつきか。
二等、純金の玉座。重いし、派手すぎる。じゃあ今の王様は何に座ってるんだ。そんなに座り心地が悪いのか?
三等、オリハルコンの何か。……“何か”って何だ。もはや伝説を雑に扱っていないか。
……なんか、賑やかな町の雰囲気とは異なり、とんでもない場所に来た気がする。
「引いていくか?」
ルシアは少し考え、
「今はやめとくよ。お腹が空いたんで先に食事にするよ」
ルシアは素直に自分のお腹に従い、店を出た。
「おう! いつでも来いよ! あ、その券はここだけだからな!」
後ろから刺さる店主の声は、なぜだか心地良かった。
いかがでしょうか。彼の受難はここから始まります。
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本日はこのあとすぐ、18時、21時ぐらいに投稿予定です。
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