第15話
始業式の日。
昇降口の前に貼り出されたクラス表の前は、相変わらず人でごった返していた。
「……多すぎ」
瑞姫は少し離れた位置から、深呼吸してから人混みに近づく。
一年の終わりに、あれだけ色んなことがあったせいか、クラス替えがやけに怖い。
(せめて……詩友と同じだといいな)
2年A組。
その欄を見つけて、上から順に名前を追う。
――榊 詩友。
「……っ」
無意識に、肩の力が抜けた。
そのすぐ下に。
――樋口 瑞姫。
(同じクラス……)
胸の奥が、じんわり温かくなる。
それだけでも十分だったのに。
さらに目を動かして。
――垣端 賢正。
――薗田 佳苗。
「……え」
思わず声が漏れる。
もう一度、最初から確認する。
でも、何度見ても変わらない。
四人全員、2年A組。
「瑞姫」
後ろから聞き慣れた声がして、振り向く。
「詩友……」
「クラス、どうだった」
「A組」
「俺も」
短いやり取り。
でも、それだけで通じる。
「……ね」
瑞姫は小さく笑って続ける。
「垣端くんと、佳苗も一緒」
「……まじか」
詩友が、少しだけ驚いた顔をする。
そのとき。
「おーい!」
やたら元気な声。
「詩友! 瑞姫ちゃん!」
振り向くと、垣端くんが手を振りながら走ってきて、
その後ろを佳苗が落ち着いた足取りでついてくる。
「見た!?クラス!」
「見たよ」
瑞姫が答える。
「四人一緒とか、出来すぎじゃね?」
「偶然にしては出来すぎ」
佳苗が淡々と言う。
「二年もよろしく、瑞姫」
「うん。よろしく、佳苗」
詩友は少し後ろで、そのやり取りを静かに見ていた。
「……まあ」
ぽつりと。
「悪くないな」
「でしょ?」
垣端くんが笑う。
四人で、新しい教室へ向かう。
去年より少しだけ大人になった気がする。
でも、並んで歩くこの感じは、ちゃんと変わらない。
教室の前で、垣端くんが振り返る。
「二年、楽しもうぜ」
「……うん」
瑞姫は頷いた。
隣には詩友。
同じクラスで、同じ時間を過ごす一年が、また始まる。
――今度は、どんな毎日になるんだろう。
少なくとも。
一人じゃないことだけは、もう分かっていた。




