第14話
文化祭が終わると、学校は一気に静かになった。
あれだけ賑やかだった廊下も、
看板や装飾が外された途端、いつもの顔に戻る。
「終わったね……」
生徒会室で、私はぽつりと呟いた。
机の上には、反省会用の資料と、片付け途中の段ボール。
「終わったな」
向かいの席で、詩友が頷く。
文化祭が終わってからというもの、
時間はまた、容赦なく前に進み始めた。
期末テスト。
部活の練習。
生徒会の引き継ぎ資料。
そして――一年生の終わり。
「入学したの、ついこの前だった気がするのに」
「最初に生徒会室来たとき、緊張してたな」
「それ言わないで」
思わず睨むと、詩友は小さく笑った。
あの頃の私は、
人の目を気にして、
一歩踏み出すのが怖くて。
今は。
隣に詩友がいるだけで、
不思議と背筋が伸びる。
放課後、校舎を出ると、空はもう春に近い色をしていた。
冷たい風の中に、ほんの少しだけ、やわらかさが混じっている。
「もうすぐ二年だな」
詩友が言う。
「うん」
「環境、変わるかもな」
「でも」
私は一歩だけ、詩友に近づいた。
「全部が変わるわけじゃないでしょ」
詩友は、少し考えてから、頷く。
「……そうだな」
手を繋ぐ。
それはもう、特別なことじゃなくなっていた。
「一年生の最後にさ」
私が言う。
「こんなふうに帰ってるなんて、思ってなかった」
「俺も」
詩友は、繋いだ手を少しだけ強く握った。
「でも、悪くない」
「うん。全然」
校門を出て、いつもの帰り道。
振り返れば、
選挙も、体育祭も、剣道大会も、文化祭も、
全部ちゃんと、ここに繋がっている。
楽しいことばかりじゃなかった。
不安も、嫉妬も、怖さもあった。
それでも。
「二年になっても、よろしくね」
私がそう言うと、
「ああ」
詩友は、迷いなく答えた。
「これからも」
一年生の終わり。
それは終わりじゃなくて、
ただ、次に進むための区切りだった。
――私たちの物語は、
まだ、全然途中だ。
ここで高一編はおわりです。
章分けするとややこしいのでこちらでご報告。
これから新しい小説を書きながらになるため少し投稿頻度が落ちることもあるかもしれませんが、ここで物語が終わるわけでも、面倒くさくなって自然消滅するわけでもありませんからご安心ください。
これからもこの作品への応援、よろしくお願いします!




