表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
届け!!〜私を救った君に捧げる、唯一無二の私の青春〜  作者: ふなつさん
カップル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/69

第13話④

圭の松葉杖が取れたのは、文化祭直前だった。

「もう大丈夫だって」

そう言って、少しぎこちなく笑う圭を見て、

クラスのみんなが拍手みたいにざわつく。

その輪の外で、私はそっと息を吐いた。

……よかった。

本当に。

詩友も、ようやく“いつもの日々”に戻ってきた。

放課後は生徒会室に顔を出してから剣道場へ向かい、

忙しそうにしながらも、合間に私を見つけると小さく手を振る。

それだけで、胸の奥がほどけていく。

「おかえり」

そんな気持ちだった。

もう、送り迎えもいらない。

圭も、ちゃんと自分の足で歩いている。

私は、やっと安心できた――はずだった。

 

その日の放課後。

資料を届けに、校舎裏を通ったときだった。

声が聞こえた。

聞き覚えのある、少し緊張した声。

「……榊くん」

足が、止まる。

植え込みの向こう。

見えたのは、圭と、詩友。

二人きりだった。

胸が、嫌な音を立てる。

「今まで……ありがとう」

圭は、指をぎゅっと握っていた。

「怪我のことも、毎日迎えに来てくれたことも……

 全部、すごく嬉しかった」

詩友は、黙って聞いている。

逃げない。

視線も逸らさない。

「それで……」

圭が、一度だけ息を吸った。

「私、榊くんのこと――」

その先を、私は聞きたくなかった。

でも、耳は勝手に拾ってしまう。

「……好き、です」

世界が、少しだけ遠くなる。

足音を立てないように、私は物陰に身を寄せた。

心臓が、うるさい。

――だよね。

頭のどこかで、冷静な自分が言う。

あれだけ毎日一緒にいれば。

優しくされて、支えられて。

好きにならない方が、不自然だ。

分かってる。

分かってるのに。

手のひらが、冷たくなる。

詩友は、どうするんだろう。

彼は、優しい。

変に突き放したりしない。

でも、それが――怖かった。

「俺は」

詩友の声が、聞こえる。

低くて、落ち着いた声。

「圭のことを、大事なクラスメイトだと思ってる」

胸が、締めつけられる。

まだ、結論を聞いていないのに。

「怪我のことも、責任を感じてた」

そこで、一拍。

「だから」

その言葉に、私は無意識に息を止めた。

――だからの先。

どうか。

どうか。

物陰で、祈るみたいに、指を握りしめる。

彼の答えが、

この先の私たちを左右する気がして。

文化祭前の校舎裏で、

私は初めて、はっきりとした“不安”を抱えていた。

彼を信じたい。

でも、怖い。

瑞姫としてじゃなく、

ただの“好きな人を失うかもしれない女の子”として。

その場から、動けずにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ