番外編⑦
家の角を曲がって、瑞姫の家が見えなくなったところで。
「……はあ」
詩友は足を止めて、深く息を吐いた。
夜風が少し冷たいのに、顔だけやたらと熱い。
耳も、たぶん赤い。
「……やらかしたか」
可愛いだの、かっこいいだの。
言われ慣れてない言葉を、真正面から投げられて、完全に調子を崩した。
しかも――。
自分から、指、絡めたし。
「……俺、何してんだ」
片手を見る。
まだ、瑞姫の指の感触が残っている気がして、無意識に握ってしまう。
嫌われてないか、なんて聞いたくせに。
大好きって即答されて、呼び捨てにまでされて。
「……うかれるなって方が無理だろ」
小さく呟いて、苦笑する。
大会に出られなかった悔しさも、怒りも、全部あったはずなのに。
今は、それよりも――。
「……守りたいな」
ぽつりと、誰にも聞かれない声で。
瑞姫が笑ってた顔を思い出して、胸の奥が静かに温かくなる。
歩き出しながら、スマホを握る。
明後日の花火大会。
ちゃんと、隣に立つ。
「……彼氏なんだから」
そう言って、詩友は夜道を帰っていった。




