番外編⑥
玄関のドアを静かに閉めた瞬間。
「……っ」
声にならない声が漏れた。
靴を脱いで、鞄を置いて、廊下を数歩進んだところで、もう限界だった。
その場にしゃがみ込んで、両手で顔を覆う。
「……むり……」
心臓が、うるさい。
さっきまで手をつないでた感触が、まだ指に残ってる。
こいびとつなぎ。
顔、赤かった。詩友。
「……可愛いって言ったの、やばかったかな……」
思い出しただけで、布団にダイブしたくなる。
でも同時に、胸の奥がじんわり温かくて、抑えきれない。
立ち上がって自室に入って、ベッドに倒れ込む。
「付き合ってください、って……」
枕に顔を埋める。
「……ずるいでしょ……」
ぎゅっと枕を抱きしめて、足をばたばたさせる。
完全に、落ち着きがない。
しばらくして、ふと天井を見る。
喧嘩したことも、泣きそうだった時間も、ちゃんと全部覚えてる。
でも、それ以上に――。
「……大好き」
小さく呟いて、また顔を隠した。
明後日の花火大会。
その言葉を思い出しただけで、また胸が跳ねる。
瑞姫は、その夜なかなか眠れなかった。




