第10話⑥
家の近くまで来たところで、詩友が急に胸を張った。
「……しっかりと、この彼氏が家まで送り届けます。お姫様」
「なにそれ」
笑いながら言うと、詩友は少し得意そうに口角を上げる。
その手は、いつの間にか私の手を握っていた。
ぎゅっと強くもなく、離れそうでもない、ちょうどいい力。
……まだ、指を絡めるほどじゃない。
相手の手を包むだけ。
恋人繋ぎは、さすがにハードル高いよなあ。
そんなことを考えながら、玄関の前まで来て、名残惜しく手を離そうとした、そのとき。
「……あ」
詩友が、私の手を引き止めた。
そして、恐る恐る、一本ずつ、私の指に自分の指を絡めてくる。
思考がl停止する。
――コイビトツナギ。
「……これくらいは」
低い声。
「許してくれ……」
顔を見ると、耳まで真っ赤だった。
「お前の興奮具合でかき消されてるけど」
視線を逸らしながら、続ける。
「……俺だって、うかれてるんだ」
その必死さが、可笑しくて、愛しくて。
「なにそれ」
思わず笑ってしまう。
「詩友だって、可愛いじゃない!」
「……っ」
詩友はむっとした顔で、手を少し強く握り返す。
「可愛いとか言うな」
「えー?」
肩をすくめてから、わざと考えるふりをする。
「まあ……詩友のかっこいいところなんて、挙げ始めたら」
ちらっと顔を見る。
「可愛いとこ以上に、キリないけど」
一瞬、固まって。
それから、分かりやすく嬉しそうに、詩友は照れた。
「……調子狂う」
そう言いながらも、手は離さない。
少しして、ようやく指がほどける。
「また」
小さく言って、歩き出しかけてから、振り返る。
「明後日の花火大会な」
「うん」
頷くと、詩友は満足そうに背を向けた。
玄関の前に残された私は、まだ熱の残る手を胸元に引き寄せて、しばらく動けなかった。




