表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
届け!!〜私を救った君に捧げる、唯一無二の私の青春〜  作者: ふなつさん
初愛編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/69

第9話⑤

胸の奥がまだ熱いまま、私はそっと詩友くんを見上げた。

「あの……」

 声が少し震える。

「私たちって……付き合える、の?」

 花火の余韻が残る夜気の中で、その一言は思っていた以上に重たく落ちた。

 詩友くんは一瞬だけ驚いた顔をして、それからゆっくり息を整える。

「……正直に言うな」

 真剣な目。

「次の大会が、もうすぐある」

 剣道のことだ、とすぐにわかる。

「だから、それが終わったら……もう一度、俺からちゃんと告白させてほしい」

 瑞姫の胸が、きゅっと鳴る。

「でも」

 詩友くんは続けた。

「もし、これ以上待たされるのが嫌なら、今ここで付き合おうって言うこともできる」

 少しだけ視線を逸らしながら、

「ただ、その場合……正直、瑞姫のために使える時間は、いきなり多くはならない」

 その言葉に、瑞姫は迷わなかった。

「待つよ」

 即答だった。

「ちゃんと待つ」

 そして、少し照れながら付け足す。

「だから……大会までは、恋人だって、自分で思いながら応援する」

 その瞬間だった。

 詩友くんの表情が、一気にほどけた。

 今まで見たことがないくらい、素直で、嬉しそうな笑顔。

「……ほんとに?」

「うん」

 「それ、反則だろ」

 なんて言いながら、嬉しそうに頭をかいた。

 少し間を置いてから、ふっと真顔になる。

「なあ、瑞姫」

「なに?」

「夏休み中……俺と会うの、気まずくて部活に顔出してなかっただろ」

 図星だった。

「え……」

 言い当てられて、瑞姫は一気に顔が熱くなる。

「……ごめんなさい」

 小さく頭を下げる。

「告白したあと、どう接していいかわからなくて……」

 すると詩友くんは、目を見開いたあと、ふっと肩の力を抜いた。

「……よかった」

「え?」

「嫌われたわけじゃなくて」

 ほっとした表情で、少し意地悪そうに言う。

「じゃあ明日からは、休憩時間に瑞姫のその可愛い顔、見れるってことか」

「っ……!?」

 一瞬で、瑞姫の顔が真っ赤になる。

「な、なに急に……性格変わりすぎじゃない?」

 思わずそう言うと、

「それな」

 横から、聞き覚えのある声。

「こいつ、本当に懐いた奴には、とことん甘いぞ」

 賢正だった。

「……っ!?」

 振り向くと、そこには佳苗もいて、にやにやしている。

「全部、見られてた……?」

 瑞姫と詩友くんは、同時に赤面した。

「お前ら、いい雰囲気すぎ」

 賢正が楽しそうに笑う。

「まあでも」

 佳苗が少しだけ柔らかく言った。

「よかったじゃん」

 その一言で、場の空気がすっと和らいだ。

 気恥ずかしさは残るけど、不思議と嫌じゃない。

 詩友くんと目が合って、2人して照れたように視線を逸らす。

 恋が始まる手前で、

 友情も、少しだけ形を変えて。

 でも確かに――

 4人の距離は、今までよりずっと近くなった。

 そんなふうに思えた、忘れられない一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ