表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
届け!!〜私を救った君に捧げる、唯一無二の私の青春〜  作者: ふなつさん
初愛編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/69

第7話

 終業式が近づいてきて、教室の空気が少しだけ浮つき始めた頃。

 放課後、いつもの四人でファミレスにいた。

「夏休みさー」

 ドリンクバーから戻ってきた垣端くんが、席に座りながら切り出す。

「暇じゃね?」

「最初からそれ言う?」

 佳苗が、メニューを閉じながら冷静に返す。

「いや、ほら。せっかくの夏だし?」

「部活あるでしょ」

 佳苗の視線が、詩友くんに向く。

「……ある」

 詩友くんは、ストローを回しながら短く答えた。

「でも、全部じゃないよね」

 私が言うと、三人が一斉にこっちを見る。

「瑞姫ちゃん、いいこと言う!」

「普通のこと言っただけなんだけど……」

 垣端くんが身を乗り出してくる。

「じゃあさ、八月の最初の花火大会!」

「あー、あれね」

 佳苗が頷く。

「毎年混むやつ」

「でも定番だよね」

 私も思い出す。

 川沿いでやる、大きな花火大会。

「……行くなら、早めに決めないと」

 詩友くんがぽつりと言う。

「ほら、榊も乗り気じゃん」

「別に、そういうわけじゃ……」

 否定しきれない感じが、少しおかしい。

「じゃ、決まりね」

 佳苗がまとめる。

「八月頭、四人で花火大会」

「よっしゃ!」

 垣端くんが拳を握った。

 そこからは、完全に雑談モード。

 屋台の話とか、浴衣どうするとか、暑さ対策とか。

 他愛ない話なのに、夏が少し近づいた気がした。

 帰り道、駅前でいつも通り解散……のはずだった。

「垣端くん、佳苗、先行ってて」

「ん?」

「ちょっと話」

 私の声に、二人は一瞬だけ目を合わせてから、

「りょーかい」

「じゃ、また明日」

 軽く手を振って、先に歩いていく。

 残ったのは、私と詩友くん。

 夜風が、昼間の熱を少しだけ冷ましていた。

 しばらく、並んで歩く。

 心臓の音が、やけに大きい。

「あのさ」

 意を決して、声を出す。

「八月の終わりにも、お祭りあるの知ってる?」

「……ああ」

「その……」

 一瞬、言葉に詰まる。

「今度はさ、二人で行かない?」

 言った。

 逃げ場はない。

 詩友くんは、足を止めた。

「……瑞姫」

 名前を呼ばれて、胸がきゅっとする。

 詩友くんは、少し困った顔で視線を逸らす。

「……予定、確認してからでいいか」

 はっきりしない答え。

「……うん」

 それでも、私は頷いた。

「大丈夫。待つ」

「……悪い」

「ううん」

 断られたわけじゃない。

 でも、即答でもなかった。

 それだけで、十分にいろんな意味があった。

 家の前で別れるとき、詩友くんは一度だけ振り返って、

「……また連絡する」

 そう言って、帰っていった。

 一人になった道で、私は空を見上げる。

 夏は、まだ始まったばかり。

 でも、少しだけ前に進めた気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ