番外編③
廊下を曲がったところで、足が止まった。
……なに、今の。
壁に手をついて、深く息を吸う。
胸が、まだばたばたしてる。
詩友くんに怒った。
私が。
あんなふうに、はっきり。
思い返すだけで、顔が熱くなる。
「最低……」
自分に向けて小さく呟く。
言いすぎたんじゃないか、とか。
傷つけたんじゃないか、とか。
でも同時に、詩友くんが顔を上げた瞬間の目も、頭から離れなかった。
あの人、あんな目するんだ。
胸の奥が、少しだけざわつく。
嫌なざわつきじゃない。
でも、落ち着かない。
「……何考えてるんだろ」
私はただ、生徒会の仕事をして、剣道部の仲間で。
それだけのはずなのに。
でも、卑屈な詩友くんを見て、黙っていられなかった。
それだけは、嘘じゃない。
廊下の窓から、夕方の光が差し込んでくる。
いつもと同じ校舎。
いつもと同じ帰り道。
「……逃げたな、私」
苦笑して、鞄を持ち直す。
明日、普通に話せるかな。
わからない。
でも。
詩友くんが、ちゃんと前を向くなら。
それでいい、って思ってしまった。
私は少しだけ歩幅を速めて、校門のほうへ向かった。




