番外編②
放課後の体育館裏。
バスケ部の練習を終えた賢正は、タオルを首にかけたままベンチに倒れ込んだ。
「つっかれた〜……」
「毎日それ言ってる」
隣に座っている佳苗は、スケッチブックを閉じながら淡々と言う。
「でも今日のダンク見た? かーちゃん」
「見た。うるさいなって思った」
「ひどくね?」
口では文句を言いながら、賢正は笑っている。
佳苗はそんな賢正を横目で見て、ふっと小さく息を吐いた。
「……でも、すごかったよ」
ぼそっと。
賢正は、一瞬きょとんとしてから、にやっと笑う。
「今の、褒め?」
「調子乗るから言わない」
「もう遅いって。聞いたもん」
賢正は身を乗り出して、佳苗の顔を覗き込む。
「なあなあ、もう一回言って」
「言わない」
「かーちゃん冷たい〜」
そう言いながらも、距離は離れない。
佳苗はため息をついて、視線を逸らす。
「……ほんと、単純」
でも、その声は少しだけ柔らかい。
賢正は満足そうに背もたれに寄りかかった。
「ま、かーちゃんが俺の一番のファンってことで」
「違う」
即答。
「ファンじゃない。彼女」
そう言ってから、佳苗は一瞬だけ言葉を止めた。
……しまった、という顔。
賢正は、その間を見逃さない。
「今の、いいね」
「忘れて」
「無理無理」
賢正は、自然に佳苗の肩に頭を預ける。
「今日もありがと」
「なにが」
「来てくれたこと」
佳苗は少し固まってから、抵抗せずにそのままにした。
「……別に」
「クールぶっても、二人のときは優しいよな」
「賢、黙って」
そう言いながら、佳苗は賢正の髪に、そっと指を伸ばす。
ほんの一瞬、撫でるだけ。
賢正は目を閉じて、満足そうに笑った。
「やっぱ、かーちゃん最高」
「調子に乗るな」
でも、その声には、ほんの少しだけ――デレが混じっていた。




