第2話⑫
結果発表は、放課後だった。
掲示板の前には、人だかりができていて、近づくほどに心臓の音がうるさくなる。
名前を見るだけなのに、どうしてこんなに緊張するんだろう。
私は、人の肩越しに、紙を探す。
副会長。
総務。
――あった。
総務の欄に、はっきりと書かれた自分の名前。
樋口 瑞姫
一瞬、息が止まる。
次の瞬間、胸の奥が一気に熱くなった。
「……っ」
当選。
ほんとに。
ぼんやりしていると、横から声がした。
「やったな、樋口」
振り向くと、詩友くんがいた。
その表情は、いつもより少しだけ柔らかい。
「詩友くんも……」
副会長の欄。
榊 詩友
ちゃんと、名前があった。
「……おめでとう」
「樋口もな」
短いやり取りなのに、胸がいっぱいになる。
その日のうちに、新生徒会の顔合わせが行われた。
生徒会室に入ると、見知った顔と、初めての顔が混ざっている。
中央に立ったのは、生徒会長の玲奈先輩。
「改めて、今期の生徒会を紹介するね」
明るく、でも凛とした声。
「会長は、私、佐藤玲奈。特例だけど、二期連続で務めます」
場が、少し引き締まる。
「副会長は二人。二年の三代亮くんと、一年の榊詩友くん」
詩友くんが、一歩前に出て、軽く頭を下げる。
「総務も二人。二年の幸島ひよりさんと、一年の樋口瑞姫さん」
名前を呼ばれて、背筋が伸びた。
「書記は、二年の相模聖さんと、一年の遠藤浩介くん」
一通り紹介が終わり、簡単な自己紹介が始まる。
先輩たちは落ち着いていて、やっぱり大人に見える。
自分の番が来て、私は少しだけ息を吸った。
「一年の、樋口瑞姫です。総務として、皆さんの役に立てるよう頑張ります」
噛まなかった。
それだけで、少し誇らしい。
自己紹介が終わると、玲奈先輩が手を叩いた。
「じゃあ、早速だけど」
「生徒会としての、最初の仕事を決めようか」
机の上に、資料が配られる。
表紙には、大きく書かれていた。
――体育祭。
「生徒会主催種目、今年どうするかを考えたい」
「アイデア出しから、進行管理まで、生徒会の腕の見せどころだよ」
体育祭。
頭の中に、にぎやかな光景が浮かぶ。
同時に。
――生徒会、始まったんだ。
実感が、ようやく追いついてきた。
ふと横を見ると、詩友くんも資料を見つめている。
真剣な横顔。
その隣で、一緒に活動していく。
「……頑張ろ」
小さくつぶやくと、詩友くんがこちらを見た。
「当然だろ」
短い返事。
でも、それがなんだか心強かった。
こうして。
私たちの生徒会生活が、静かに動き出した。




