Scene1:昼下がりのオフィス
登場人物
風見:30代後半、課長。真面目で責任感が強い。
水城:20代後半、社員。淡々としている。
土井:20代前半、入社2年目。空気を読むタイプ。
火野:部長。上からのプレッシャーを受ける中間管理職。
オフィスの午後は、静まり返っていた。
窓の外ではわずかに風が揺れるだけで、電話の音も誰の声も聞こえない。
カタカタカタ……
乾いたキーボード音だけが、空間にぽつんと響く。
まるで酸素の薄い場所で呼吸しているような、静けさの午後。
「水城、明日のプレゼン、準備どうだ?」
「指定の資料はもう出しました。追加指示があれば、今日中にお願いします」
淡々と答える自分に、わずかに緊張が走る。
「……もう出した?いや、ありがとう。でも、もうちょっと数字を詰めた方が——」
「それは“必要”ですか?」
一瞬の沈黙。水城は心の中で計算する。
「効率と結果、どちらを優先すべきか……」
「え?」
「課長が“必要”だと思うならやります。でも、もし“できれば”なら、定時までに別案件を終えたいので」
「……わかった。じゃあ、今回はそのままでいい」
空気が一瞬、硬くなる。
土井は、マウスを握ったまま、視線を画面に落とす。指先だけが微かに震えているのが見えた。




