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私を試す婚約者様 捨ててあげましょうか?(連載版))  作者: おかき


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1/4

キャロルと美里


『試すな危険!!』


人を試しまくり、ムカつく婚約者を捨ててもいいですよね?


今年も春の大夜会が始まる。

絢爛豪華な会場に、私キャロル・スタンリーは脚を踏み出す。


私は伯爵家の次女(18歳)。

紫の髪に薄いピンクの瞳。華奢な体に見えるが、とても美しいスタイルの持ち主。

そう。とんでもなく美人なのよ。


目の前には婚約者のカール・ガーランド公爵令息(19歳)と、私の義姉のアーシア(19歳)が恋人ヨロシクと言わんばかりの接触をしている。

会場にあるソファーで寄り添い、ワインを飲んでいる。


2人の目の前に私は立った。

優雅にカーテシーをして、婚約者を見る。

カールは困った顔をしながら、義姉に視線をやる。

義姉が「あら!キャロルじゃない。今夜は参加するのね〜。いつも来ないから、カールを借りてるわ。」


(嘘つけ!大きい夜会は出てるわ!)


厭味ったらしく義姉はカールの足に手を置き私を見た。


カールはまた困った顔をする。


(どいつも、こいつもムカつくッ。)


以前の私ならカールに捨てられたくなくて、何も言わずに義姉の言う通りに従っていた。


だが!!

今夜の私は違うのよ。

新生キャロルは微笑みを浮かべ、カールに

「そんなに困った顔をしなくても宜しくてよ?アーシアお姉様がそんなにお好きでしたら、これからもどうぞ夜会なり何なりご一緒下さいな。」 ニッコリ❀


カールが勢い良く立ち上がる。

アーシアは反動でソファーに倒れた。

「キャロル。違うよ。いつも夜会に来ない君の代わりをしてもらっただけだ。」


(だから来てるし!一応エスコートしてるよね?放置してるよね!?)


カールは言いながら私の腕に手を伸ばして来た。私はスッと避け

「代わりの割には恋人みたいですわね?あ〜、勘違いしないでね。嫉妬なんかしないわよ?」興味無いし。


カールは慌てて言い訳しようとするが、

「あら!意地を張らなくても良くてよ?愛しのカール様を取られて拗ねるなんて。子供と同じよ?」

と、扇子で口元を隠しクスリと笑うアーシア。

カールは(マズイ、マズイ)

慌てて再びキャロルに近付くが、扇子で遮られた。


カールは驚く。キャロルがそんな事をするなど、あり得ないのだ。

いつもカールに従い、大人しいキャロル。

他の女性と会話やダンスをしても、不安そうにしながら我慢していた。

それが好かれているような気がして。何度も何度も試してみた。


やり過ぎたのだ。


カールは青褪めるが、アーシアは更に言い募る。

「お父様からもお母様からも見向きもされない上に、領地に追いやられた癖に!

家族からの愛情なんてないわよね〜?

ちょっと綺麗だからと、鼻に掛けるからよ。だから家族からも婚約者からも嫌われるのよ?」


カールはアーシアの腕を掴み

「私はキャロルを嫌いなど言った事もないし、思ってもいない!勝手に決めつけるな!」

と、2人で言い合いが始まりそうだった。


パシンッ。


キャロルが扇子を左の手の平に打った。

「アーシアお姉様。私は領地に追いやられたのでは無く、お祖母様に呼ばれたからよ?お祖母様に教育して頂く為にね!」

それに⋯⋯。


「ちょっと綺麗?アーシアお姉様。貴方よりは容姿も内面も、とってもと〜っても綺麗でしてよ?」


言われた事に腹を立てたアーシアは、キャロルの頬を打とうとした。

キャロルの代わりにカールが打たれた。

アーシアは唖然とした。

カールはいつもアーシアといたからだ。

キャロルの婚約者だが、アーシアを優先しキャロルは放置していたのだ。

(私の事が好きな筈なのに、キャロルを庇った!)


庇われたキャロルだが、

「庇って頂き、ありがとうございます。けれども、全てお二人の自業自得ですわ。」

「お姉様。夜会での暴力。お咎めないとお思いですか?」


騒ぎを聞きつけた騎士が近寄る。

周りから話を聞き、アーシアを拘束した。

「違うの!キャロルが⋯⋯妹が悪いの!姉妹喧嘩よね?!そうよねっキャロル」

「⋯⋯⋯」

キャロルはアーシアに顔を向けずに、首を振る。

アーシアは騎士に連れて行かれた。


「すまないッ。キャロルッ」

カールは頭を下げた。

「謝罪は受け取りましたわ。」

カールは頭を上げ、キャロルの顔を見た。いつも恥じらうように笑みを浮かべているキャロル。だが、そんな彼女は居なかった。

「謝罪は受け取りますが、許すか許さないかは、また別ですのよ?!」ニッコリ❀


(この男は私キャロルの好意に胡座をかいていた。好かれている事を実感したくて、態と私の嫌がる事をしていたのだから。)


カールは絶望の顔で、キャロルを見据えた。

キャロルはニコリと笑い

「いつまで私を試せば気が済みますの?恋人役を勝手に義姉にさせ、私を試して楽しかったですか?私は楽しくもなかったですわよ?」

「試さないといけない程に私を信用しない。婚約者の役目もしない。カール様は私に嫌われる事しかなさらない。そこまで嫌なら婚約は解消して宜しくてよ。」


「⋯⋯⋯。」カールは反応しない。


キャロルはじっと見つめたままだ。

(カールの出方次第なのよね〜。私はどっちでも良いのよ。だって、この人知らない人だし。)


私はキャロルであって、キャロルではないのだ。


本物のキャロルは2年前に、領地のお祖母様が隣国の作法や勉学を教えたいとキャロルを領地に呼び寄せた。

お祖母様は隣国の前国王の妹なのだ。

いずれ隣国にてキャロルをお披露目したいと、隣国の事を教えたかったからだ。


父は大賛成でキャロルを領地に出した。

義母や義姉は私がいなくなる!!

これまた大賛成。


片やキャロルはカールから離れたく無かったのだ。彼女はカールに好意を持っていたから。

カールとキャロルは幼馴染として仲が良かった。

優しいカールに好意を持っていたのだ。

だが、義母と義姉が来て以来カールはキャロルを避けた。

キャロルは最後までカールがしていた行動の意味を理解出来なかったのだ。


数ヶ月に一度、王都に戻り婚約者と会うもアーシアがカールにベッタリ。

婚約者はキャロルを見ない。アーシアばかりを構う。

夜会に一緒に行っても放置され、カールは令嬢達と楽しく過ごしていた。

キャロルは壁際で孤独と、失笑に耐えた。


1年半、そんな生活が続いた。

領地では詰め込まれた教育。

王都では冷たい婚約者。

美しい容姿と言われながら、婚約者に相手にされないとお茶会での笑い話の種となる。

ついに、キャロルは精神に限界が来た。

自由になりたい。

仲良しの家族や友達が欲しかった⋯⋯。

強く心に願ったら、広い草原にいた。


そこには、黒髪黒目の少し年上の女性がいた。

山に登り滑落したら、ここに居たと。

鈴木美里23歳と自己紹介をしてくれた。

美里は優しい家族や恋人が、帰らぬ自分に悲しむだろうと後悔していた。


私も話をした。婚約者の事、義姉の事。

領地の事を。

婚約者はキャロルを試していたのでは?! 

と言ってくれた。

そうならいいな〜。

嫌われていなくて良かった。


そう安堵し微笑むキャロル。

その微笑みを美里は忘れない。


心優しいキャロルが幸せであって欲しかった。美里はそう思った。

2人は意気投合し、お互いの話を沢山していた。

人生を交換したら美里が婚約者達をギャフンとしたいし、キャロルは優しい美里の家族と過ごせるのにね〜。

と話の途中で、私美里はキャロル?の中に居た。


キャロルは美里として日本できっと生きてる?!

そう思う事にした美里。

切り替えがめちゃ早いのだ!美里の性格は。


まず、お祖母様とやらと話をした。

婚約者や義姉の事。

それに耐えられないのに、領地での教育。

精神的に疲れ果てて、キャロルは逃げる事を選んだのだと。


お祖母様は理解出来ないでいた。

当たり前である。キャロルは目の前にいるのだから。私は転生者だと伝えた。

広い草原でキャロルに会い、人生を交換出来たら⋯⋯。と話していたら、私はここにいた。

多分キャロルは異世界の日本という国にいると思う。向こうでの私として。


お祖母様は、異世界や転生者の言葉に納得した。

隣国ではたまに出てくるらしい。

高度な知識がある者は少ないが、あちらで生きていただけで知識がある者となる。

文明に差があるからかな!?


お祖母様には、王都で好きにさせてもらう許可を貰った。

お祖母様は酷く後悔していた。

苦しむキャロルに気が付かなかった事を⋯⋯。

私はキャロルがお祖母様を大好きだった事を沢山話し伝えた。

キャロルは王都の家族より、お祖母様を大切に思っていたからだ。

唯一の家族だったと。

お祖母様は泣いていたが「良かった」と言葉を零した。


と云う訳で、お祖母様の許可があるから夜会で私は好きにやっている。

キャロルは、隣国の王位継承権を持っている。お祖母様に譲られたからだ。

まー隣国出身の身内が居たら、そうなる事はだいたい解る筈なのだが。

お祖母様の身分は余り公表されていない為に、解らない者はキャロルを笑うのだ。


ぜ〜ったいに、許さんッ!!


私にキャロルの記憶がある以上、キャロルに酷いことをしてた奴は、絶対に嫌がらせをしてやる!!  フンスッ!


さてさて色々回想したが、いい加減ダンマリに飽きてきた。

カールは固まったままだし、観客は増えたし。

面倒臭いです。


「婚約を解消しますか?しませんか?いい加減決めていただけます?!」


観客はざわめいた。

キャロルはいつも壁際に居て静かにやり過ごしていたから。

お茶会で笑い者にされても、困った顔をして苦笑いするだけだったのだ。

今は真逆のその堂々とした様子に、今までキャロルにやらかしていた者は少し焦りを覚えた。


そこに爆弾発言が降ってきた!


「周りの観客の方々の中に、随分私を見下した方が居ますわね。

知ってます?知らない方が多いかしら?

私のお祖母様は隣国の姫君でしてよ?しかもお祖父様はこの国の王家の血筋。」

「その直系の孫である私は一体何者になるのでしょうか?」


会場が静まり返る。


王家の次に、この国で立場が上位になるのだ。下手したら王家より⋯⋯上に⋯。

一部の人々は焦る。

自分のやらかしが、家族に迷惑をかける事を理解したのだ。

謝罪しようとしたが、それよりも早く言葉を放つ。


「謝罪は受けません。自業自得です。」


キャロルはカールを見つめたまま、言い放った。

カールに視線で決断を迫る。

「婚約は解消しない。いや、したくないのだ!」

「お願いだ。解消等と言わないでくれッ」


頼む。と⋯⋯。

(今回はこれくらいにしとくか)

まだまだカールを虐める気満々だった。


「解りました。婚約はそのままとしましょう。3日後には領地に戻りますので。次の夜会で会いましょう。カール様」


「皆様もご機嫌よう」


美しいカーテシーをして、キャロルは会場を後にした。

春の大夜会は大惨事で終わった。




次にやるのは、キャロルの家族だ。

アーシアは牢だろうから⋯⋯。

両親もどきをやってやるとしよう。

キャロルは邸に向かう。

邸に到着するも使用人の迎えはない。

いつもらしい。キャロルの記憶にある。


今の時間は応接室でお酒を嗜んでいるはず。キャロルは応接室に向かう。

扉を開けたまま、カーテシーをし矢継ぎ早に話す。


「まず、アーシアお姉様は騎士に連行されましたので、今日は帰って来ないかと。

理由は私を殴ろうとし、庇ったカール様を殴ったからですわ。あちらが爵位は上ですし、夜会で暴力を振るうなんて淑女教育がなってませんわ〜。」


両親もどきは、絶句する。

ツラツラ話すキャロルにもだが、アーシアのやらかしにもだ。

義母が

「キャロル!!貴方がアーシアを陥れたのね!なんて娘なの!」

キーキー煩い。


「私に対して言葉が成ってませんわね。」

「いいですか。私のお母様はこの伯爵家の嫡子ですわよ?お父様は婿養子。しかも私は隣国の王位継承権を持っています。

立場が一番上に来るのは⋯⋯

さて、いったい誰でしょうね?!」

両親もどきはハッとするが、キャロルは背中を向け部屋から出て行く。


覗いていた使用人に

「聞こえてたわよね?」

「私には今までの様に構わないで頂戴ね。」

使用人は顔面蒼白。


イヤイヤ。

王位継承権云々の前に、婿養子の父は当主になれない。直系はキャロル。誰でも解るわっ!


スッキリしたキャロルは、とりあえず自分の部屋に鍵をかけた。

魔法で結界を張る。キャロルは優秀なのだ。美里はキャロルの努力に感服していた。

お風呂も着替えも全て1人。

大事にされるはずの令嬢が日本での私の生活と変わらないなんて⋯⋯。

この世界で、ありえないよね。

何でも1人で出来るなら、日本でも上手くやって行けるはず。

前向きに考え、眠りに就いた。



朝になり扉をノックする音で目を覚ます。

だが、無視。

またノックされる。

絶対に無視。

朝の支度が終わり、外出しようとする。

この邸では領地に行くようになると、私のご飯は用意されないようになった。


扉を開けると執事長がいた。ノックの犯人か〜。

「お嬢様。朝食の用意がしてございます。」と、ニヤリと告げる。

この執事長だけが、キャロルの唯一の味方だ。

「トニー。嫌味はいらないわ。」

失礼しました。と礼をとる。


「今から朝食に出るけど、付いてきてちょうだい。」

不思議そうにしたが、了承してくれた。

2人で裏口からコソコソ出るのは、結構楽しかった。


キャロル行きつけのお店に行く。

トニーは初めて来たお店だ。

個室に入り結界を張る。

トニーは少し警戒したが、私へではない。


「トニーに伝えたい事があるの。」

私は自分の事、キャロルの事を話した。

話を終えると、トニーは静かに涙していた。

「キャロルはトニーに感謝していたわ。嘘ではないわ。キャロルの記憶はあるもの。

たまに渡してくれるチョコレートがあったから、あの邸で耐えれたと」


聞くや否や、トニーは大泣きした。

「お嬢様。お嬢様⋯⋯」と。


「これからね〜私はキャロルを虐めてくれた奴等に嫌がらせをするのよ!!相手は王族もいるわ。」

トニーは目を見開き焦りながらも、止めようとする。

「大丈夫よ。お祖母様に布石は打ってもらっているの。明日が勝負よ。」


「見届けてね。トニー。キャロルの無念を晴らしてやるわっ!!」

両手に拳を作り強く誓う。


トニーは、「ありがとうございます」

そう頭を下げた。


「あ!明日はトニーも私に付いて来て欲しいから、予定は全てキャンセルね〜。」



軽く言うこの方は、キャロル様の為に戦ってくれるのだ。心優しい方。


これからはこのお方に誠心誠意仕える事をトニーは誓った。


沢山の方に読んで頂き、とても嬉しく思います。


読み手様が楽しめる小説をこれからも書けたらと思います。


❀数ある作品から見つけてくださり、ありがとうございます❀


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