episode8 黒の神殿
薄暗かった森はいつの間にか陽の光がほとんど入らなくなり、辺りは不気味なほど真っ暗になった。
ほんとは早く森を出たい。けれど早く強くなるなら強い魔物を戦わないといけない。
弱い魔物ばっかり戦っても意味はない。もっと強い魔物はきっと森の奥深くにいるはずだ。
すると、遠くのほうに一風変わった建物があるのを見つけた。
伝説にありそうな神殿が黒に塗りつぶされており、森の暗さと重なって不気味さが際立っていた。
「なんだこれ…絶対中危ないだろうな…。」
危ないと分かっていた。けれど僕は強くなりたいし、ちょうどいいと思ってしまった。
気が付けば神殿に入る一歩手前まで来ていて、中の暗闇に吸い込まれそうになるほど広く感じた。
「…よし。」
心の中で決心すると、ゆっくり神殿の中に足を踏み入れた。
中は森よりさらに暗く、何も見えなかった。唯一分かるのは床が石造りになっているくらいだ。
「…あーあー、誰かいますかー?」
念の為声をかけて誰かいないか確認したが、自分の声以外何も聞こえなかった。
「それにしても暗い…何か灯りは…あ!」
何か灯りがないか考えていると、とあることを思い出した。
指先で魔力を込めて炎魔術を唱えると、指先から蝋燭程度の小さな火が形になった。
微力ではあるが五大魔術を使えることを忘れていた。
周りはやっぱり石造りになっていて、窓すらなかった。
こんなところなら魔物の1匹や2匹いると思ったが、魔物の気配は感じなかった。
それから周りを探索してみたが、景色は変わらず何もなかった。仕方なく出ようと何かにつまづいた。
「いてて…何…?」
足元を見ていると、床が一部浮いていた。
触れてみると頻繁に引きずられている物のようで、擦り傷が酷かった。
「これはもしや…?」
もしかしてと思い、横にずらしてみるとなんと穴があり、はしごがかかっていた。
明らかに魔物のすみかではない、人が住んでいる。
あまりの不可思議なことに一度引き返そうとしたが、こんなとこに人が住みつく理由が知りたくなり、穴に降りてはしごに足をかけた。
途中でちぎれないか不安だったが、思ったより短かったので落ちても軽傷で済むと分かり少し安心していると、すぐ地面に足がついた。
中はとても狭くて、僕の体でギリギリだった。
そして通路になっており、先に火の灯りが見えた。これで人が住んでるのは確定した。
身動きが取りづらかったが何とか灯りの先に辿り着き、少し広い部屋に着いたときだった。
「誰!?」
声がした方に視線を動かすと、黒いローブを被った小さな体の子がショートソードを構えていた。