episode7 加護
朝日が眩しく、雲ひとつない快晴日和。
まさかまた日が見れるとは思わなかった、たった数時間の出来事だったが、僕にとっては数日分ほど長く感じた。
そして絶望していた僕の心は空と同じように晴れていた。
僕には不可能と思っていた魔物を自力で倒し、
カーレリア様のご加護を授かることができたからだ。
ではここから何するか…。
今は魔剣学院に戻りたい。エレナの約束を果たすためと、魔剣士になる夢を捨てきれないからだ。
しかし退学になった魔剣学院に戻れるか分からない。
それにもし仮に戻れたとしてもまだ魔術は使いこなせてないし、剣術は全くダメなまま。
まだ魔剣学院に戻るには未熟すぎる。しばらくは自分を鍛えないといけなさそうだ。
今の僕にはカーレリア様の加護があるおかげで自信が芽生えた。
今はまだカーレリア様の力を分け与えてくれただけに過ぎないが、これを自分の力に変えれば、もしかしたら魔剣学院に戻れるかもしれないと、そう確信した。
なら、どうやって強くなるかは一つしかない。"魔物と戦い続けること"だ。
今まで魔剣学院ではどんなに試合を受けても、どんなに自分で努力しても強くなれなかった。
けど今回の件で分かった。魔物と戦えば死に直面し、恐怖心があっても動けた。
ならひたすら魔物を倒し続けるしかない。それが今の出来ることだ。
早速僕は魔物討伐しに森の中を探索した。
朝日が差し込む森の中は、風が木を揺らし、小鳥がさえずりまわっていた。その中で僕の胸は高鳴っている。
一歩一歩、森の奥へ突き進み、陽の光が薄くなっていく。
強くなったといえど警戒は怠らない。油断が命取りになることもおかしくない。
しばらく歩き続けると、集団で前から何者かが歩いているのが見えた。
「ゴブリン…!」
緑色の肌に長く尖った耳、木と石で作られた武器を手にしていて、それが10体程度いた。
ゴブリンは僕の存在に気づき、僕に襲い掛かろうと走ってきた。
「行くぞ…!」
心の中でカーレリア様の名を唱えて、剣を握りしめた。
すると剣が金色に輝き出し、僕でも分かるほど魔力が溢れていた。
「カーレリア様…!ありがとう…!」
カーレリア様に感謝した後、剣を後ろに構えて一気に斬ろうと後ろ足を地面に勢いよく蹴った。
脳裏に溢れるほど魔術の型を思いつき、それを自分の体に伝えた。
「くらえ! 【龍刃】!」
驚くほど足捌きが楽になり、龍のように曲がりくねった軌道も簡単に出来た。
ゴブリンの群れを抜けて後ろを振り返ると、1匹も残らず胴体が真っ二つになっていた。
「凄い…これがカーレリア様の力…!」
剣を握り締めてカーレリア様の力を改めて実感した。
でもまだだ。ゴブリン倒せたくらいじゃまだ弱い。もっと強くならないと…!
そう思いゴブリンの死体を後に、さらに森の奥へ進んだ。
そのとき、エリオスの来た道から誰かがやってきた。
屈強な男を先頭に、鎧を着た若い男、杖を持った少女、白い羽衣を着た老人が歩いていると、ゴブリンの死体と後ろ姿のエリオスに目が入った。
「おい!ゴブリンがぐちゃぐちゃだぞ!」
「きゃ!む、むごいわ…。」
「しかし綺麗に斬られてるな…」
「おーい!そこの人ー!」
若い男がエリオスに声をかけたが、エリオスの耳に届かなかった。
「子供がたった1人であんな人数倒すなんて…。」
「いったいどんな奴なんだ…?」