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魔剣学院の落ちこぼれ ~神の加護を秘めし僕は、学院から世界を無双します~  作者: 蒼月ケン
第2章 魔剣学院再入学編

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episode59 彼の上に立つには

「…ん…う?」


 重い瞼を持ち上げると、そこは見知らぬ天井――ではなく、柔らかい感触と甘い香りが広がった。

「あ、起きた?おはよ、エリオス!」

「え…?キアラル…?」

 

 視界にはキアラルが微笑んでいた。

頭を起き上がらそうとすると、キアラルにおでこを手で抑えられた。

後頭部の感触からキアラルの膝の上で寝かされること察した。

「無理しないで!エリオス、一瞬だけど気を失ってたよ。」

キアラルはハンカチで僕の滴る汗を拭いてくれた。


 少し当たるキアラルの温かい体温に一瞬ドキッとしたが、すぐに背筋が凍るほどの冷気が襲ってきた。

「……キアラルさん?そろそろ退いてあげてもいいんじゃない?」

押し寄せてくる冷気に目を向けると、笑顔で仁王立ちしているエレナが目に入った。

笑ってはいるが間違いなく心からの笑顔ではない、この冷気は正常ではない。

「えー?エリオスまだ疲れてると思うけど?」

「その無駄な脂肪を押し付けては休めないと思うけど?」

「男の子はこれで"元気"になると思うけど?」

意味深なキアラルの笑顔にエレナはついに強張った笑顔に変わった。


 まずい…これは相当怒っている…。

「お、落ち着いて2人とも…」

「「エリオスくん(エリオス)は黙ってて!!」」

僕の頭上に2人の火花が散っている。


 どうしようか悩んでいると重い足音が近づいてきた。

「…さっさとこい、エリオス。」

ゼノンの言葉にキアラルは慌ててエリオスを起こすが、エレナはその隙を見逃さなかった。

エレナは一瞬でエリオスを引き寄せて後ろに下がった。

「あ!エレナちゃんずるい!」

「私はエリオスくんを支えてあげただけですが?」

そう言いながらも僕を強く抱きしめていた。

「あの…エレナ…?」


 ゼノンは呆れてため息をついた後、目の前から消えた。

「あれ!?どこ行ったの!?」

「逃げた…?あれ!?」

気がつけばエレナの中からエリオスが消えていた。

周りを見渡すと少し離れたところにゼノンの手にエリオスの襟首を掴んでいた。


 「貴様ら…いつまでそのくだらん茶番を続けるつもりだ」

「く、くだらんって……!?」

キアラルが反論しようとするが、ゼノンの冷ややかな視線に射抜かれ、言葉を飲み込んだ。

「戦場に行く男に、女の遊び(ままごと)は不要だ。行くぞ。」

そのままエリオスはゼノンに引っ張られてしまった。


 「…あ!どこに行くのよ!」

エレナはゼノンの姿が見えなくなった瞬間に慌てて追いかけようとした。その時、端の方で立っていたブラッドが止めに入った。

「エレナ、ここからはお前が手出し出来るレベルではない。」

「!…行かせてください!エリオスくんはまだ怪我も治ってないのに…!」


 エレナはブラッドから逃れようと必死に抵抗したが、ブラッドはびくともせず静かに首を横に振った。

「…エレナ、そしてキアラル、エリオスは守られる人間ではない、分かっているだろう…」

「っ…!」「それは…!」


 ブラッドの言葉に2人は動揺した。エレナは歯を食いしばり、キアラルは唇を紡いで黙り込んでしまった。

2人とも心の中では分かっていた。今の私たちはエリオスに遠く及ばない。さっきの戦いではゼノンの圧にしばらく動けなかったし、エリオスはそんな圧を押し倒してゼノンに傷一つつけた。


「今のままあいつを追っても足枷になるだけだ。」

「足枷……。」


 エレナは膝をついた。エリオスのために守ろうと戦ってきたが、今は重荷になってしまう。それは彼女にとって死ぬことより辛いことだ。

「………嫌だ。」

エレナは愛する人を守れない自分に怒り、そして拳を握った。


 「そんなの……絶対に嫌……ッ!」

顔を上げたエレナの瞳からは、甘えや迷いが消え失せていた。あるのは、自分自身の弱さに対する激しい怒りと、渇望。

「ブラッド先生。……お願いします。」

 エレナはその場に正座をし、深く頭を下げた。

 プライドの高い彼女が、なりふり構わず懇願したのだ。

「私を鍛えてください。彼の背中を預けられる、最強の魔剣士になりたいんです!」

「私も……!」

 キアラルも一歩前に出た。握りしめた拳が白くなるほど力を込めて。

「もう二度と、あんな思いはしたくない! 私も強くなりたい! エリオスの隣に立てるくらいに!」


 二人の悲痛なまでの叫びを聞き、ブラッドはふっと口元を緩めた。それは教師としての、そしてかつての戦士としての満足げな笑みだった。

「いい目だ。……安心しろ、俺の指導もゼノンに負けず劣らず地獄を見るぞ?」

「望むところです!」

「やってやるよ!」


 少女たちの目にもまた、新たな決意の炎が宿っていた。

エリオスだけじゃない。彼女たちもまた、それぞれの戦場へと足を踏み入れたのだ。

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