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魔剣学院の落ちこぼれ ~神の加護を秘めし僕は、学院から世界を無双します~  作者: 蒼月ケン
第2章 魔剣学院再入学編

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episode57 魔剣騎士団の頂点

 翌日…。


エリオスは学院の制服に着替え、特訓の準備に励んでいた。


それをレミリア先生は傍ら見ていたが、ずっと不満そうな顔をしていた。


「まだ完治していないから一応薬は出してあげるけど…はぁ…。」


レミリア先生は白衣のポケットに手を入れながらため息をついた。


本当ならまだ3日は安静にしないといけないが、ブラッド先生、そして僕が無理を言って退院することになった。


 全快とまではいかないが、頭と首の痛みはだいぶ引いたし、体内の魔力も安定してきた。


ヴァイル大災害まであと20日…。今のまま迎えたらほとんど無事では済まないだろう。


なら今のうちに体を酷使してでも強くならないと…!


 そのとき、脳裏にエレナの言葉が響いた。


「エリオスくん、エリオスくんがいなくなったら私生きていけないのよ…。」


分かってる…無茶なことをしてることは…。


でも、ここで僕が諦めたら、世界を捨てたのと同等だ。


ごめんな、でも世界を救うためなんだ。


 すると扉が開いた。ブラッド先生が迎えにきたんだろうな。


しかし、そこはエレナ、そしてキアラルがいた。


エレナとキアラルは真剣な顔で僕を見ていた。


「え…?なんで?」

「どうせ、何言っても無理するんだから…私たちも行くわよ。」

「エリオスばかり負担かけれないからね!エレナちゃんと話し合って一緒に行くことにしたよ!」


その言葉に申し訳なさと不安さがあった。けれどそれ以上に嬉しくなった。


 すると、窓際に紫色の猫、伝書キャッツが立っていた。


「ブラッド教授からの伝達だニャ〜、エリオス、学院地下、特別実習室に来い。だニャ〜。」

「!…学院の…地下…。」


伝書キャッツは腕を舐めたあと、窓から飛び降りてどこかに行ってしまった。


学院の地下は基本立ち入り禁止だ。そこには何があるかほとんど知らない。けれどそれに呼ばれるということは、相当覚悟して行かないといけないということだ。


「エリオス…。」

「怯えてる暇はないわ。行きましょう。」

「…あぁ。」


 エレナを先頭に、キアラルは僕の腕を掴んで歩んだ。


明るい廊下から薄暗く冷たい地下へと変わる階段を、僕たちは一歩一歩踏みしめるように降りた。


蜘蛛の巣が張り巡らされていて、同じ学院にいるとは思えない。まるで廃墟にいる気分だ。


キアラルは足を震わせながら僕の腕を掴む力が強くなって、エレナは警戒しながら先に進んでいた。


しばらく降りると石畳が続く廊下にたどり着き、やがて重厚な扉の前にたどり着いた。


 扉の先に、きっとブラッド先生がいて、さらにブラッド先生が言っていた"良い人材"がいるだろう。


「…開けるよ。」

「えぇ…。」

「うん…!」


手に錆がつきながらゆっくり押し込むと、金属の甲高く重々しい音が響きながら前に空間が開き始めた。


「…きたか。エリオス……エレナ、キアラル。お前たちが来るとはな。」

「はい…エリオスくんにばかり負担をかけていられません。」

「エリオスと約束したから…1人にしないって。」


その言葉を聞いたブラッド先生は小さくため息をついた。


「まあいい…しかし2人は下がっていろ。これから相手にするのは国の"最強(トップ)"だからな…。」

「!…国の最強って…魔剣騎士団の…!」


エリオスは大きく目を見開いて唇を噛み締めた。


「あぁ…魔剣騎士団の頂点に立つゼノン・アークライト団長だ。」

「!!…」


エレナもキアラルもその名を聞いて喉を鳴らした。


 「…ブラッド、余計な紹介は不要だ」


重く、低い声が、薄暗い実習室の奥から響いた。


その声だけで、空気が鉛のように重くなり、肌が粟立つのを感じる。


ゆっくりと、闇の中から一人の男が姿を現した。


漆黒の騎士鎧を身に纏い、腰には身の丈ほどもある大剣を携えている。

鍛え上げられた肉体と、猛禽類のように鋭い瞳。ただ歩いてくるだけで、エレナとキアラルは本能的な恐怖に一歩後ずさった。


「(これが…騎士団長、ゼノン・アークライト…!)」


エレナですら、その圧倒的な存在感に冷や汗を流す。

キアラルは僕の腕を掴む手に、さらに強く力を込めた。


ゼノンは僕の前で足を止め、その鋭い瞳で僕を頭のてっぺんから爪先まで値踏みするように見下ろした。


「……お前が、神の加護持ちか」

「は、はい!エリオス・ヴァルトランです!」


緊張で声が裏返る。目の前の男は、これまでに戦ってきた誰とも違う。セレフィナ様やブラッド先生とも比較にならない、絶対的な「強者」のオーラを放っていた。


ゼノンは僕を一瞥すると、興味なさそうに、しかし値踏みするように言った。


「ブラッドから話は聞いている。ヴァイル汚染魔獣と相打ちだったそうだな。…神の加護がありながら、その程度か。」

「っ…!」


悔しさに唇を噛む。何も言い返せなかった。

 ゼノンの視線が、僕の後ろにいるエレナとキアラルに移る。


「小娘二人は下がっていろ。死ぬぞ」


その一言には魔力すら乗っていないのに、二人は金縛りにあったかのように動けなくなる。


「ブラッド。俺は忙しい。こんなところで子供の相手をしている暇はなかったのだが…」

「ゼノン団長。彼は世界の希望です。どうか、その力をお貸しいただきたい。」


ブラッド先生が深く頭を下げる。あの誇り高い先生が、他人に頭を下げる姿を僕は初めて見た。


 ゼノンはふん、と鼻を鳴らすと、ゆっくりと、しかし一切の無駄な動きなく大剣を抜き放った。


「…ガキの子守りはしたくないんだけどなぁ…。」


瞬間、エリオスたちの足元の石畳にヒビが入るほどの闘気が溢れ出した。


「まずは見せてもらうぞ。お前に、俺の訓練を受ける『資格』があるのかどうかをな」


ゼノンは冷たく言い放つと、その大剣の切っ先を僕に向けた。


「(これが…ブラッド先生の言っていた試練…!)」


僕は残る痛みを気力でねじ伏せ、エレナとキアラルを庇うように一歩前に出た。


「エリオス・ヴァルトラン。かかってこい。その『神の力』とやらを、全力で俺にぶつけてみろ」


世界の命運を賭けた、地獄の特訓が今、始まろうとしていた。

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