episode4 勇気
「グオォォオオ!!」
コボルトがさっきの同じように僕を突き刺そうとしてきた。
横腹が痛む中、必死に体を傾けてかわした。
攻撃はそれだけじゃない。次は横から来る…!
避けきれないなら弾く!
剣を爪に向けて構えると、体に刺さる寸前に剣で弾いた。
カンッと甲高い金属音が鳴りながら攻撃が逸れた。
やれる…いや油断するな…!
気がつけばまたさらにコボルトの攻撃が迫ってきた。
「やぁ!はっ!ぐっ!」
無言ではいられない、気合いを出して攻撃に対応しないと意識が続かない…!
それに受け止めるだけではだめだ、体力が持たない…!
こうなったら攻めるしかない…、どうせこの傷じゃ生きられるのかすら怪しい。
1分で決める…!そう決意し剣を構える。
また同じようにコボルトの爪の攻撃が迫ってきた。
爪じゃない、狙うのは腕だ!
動きを悟られないようギリギリで攻撃をしゃがんで回避し、さらにその状態から前に向かって後ろ足を蹴り出した。
「いっけぇぇえ!!」
体を捻らせてねじれを利用してコボルトの腕を切断した。
しかし、それと同時に傷口も開いたようで激しい痛みと血が溢れ出した。
「【小回復】!!…ぐはっ!」
この傷も僕の回復魔法じゃ追いつかなかった。
でも立ち止まってたら死ぬ…!動け!
どうせ死ぬならお前を倒して死んでやる…!
あいつを倒すにはやはり首を斬るしかない。
背の高いコボルトの首をどう斬る…!
するとコボルトが背中の針を使って僕に突進してきた。
「…!【小防御力上昇】!」
避けきれない!と思った瞬間に自分の防御力を上げた。
それでも突っ込んできたコボルトに僕は体を吹き飛ばされた。
「いっ…!あぁ…!」
針は体に刺さらなかったが、衝撃で体の中の骨が折れたようだ。
でも、僕は見逃さなかった。コボルトは屈んで突進してくる。つまり首に剣が届く!
リスクが高いがもう一度僕に突っ込ませる。そして最大の魔力を使ってこいつの首を斬る!
これで終わらせる…!
もう一度あいつの攻撃を誘い、まんまとさっきと同じ攻撃を出してこようと屈んできた。
「今だ…!【小攻撃力上昇】‼︎【小速度上昇】‼︎」
自身の筋力と速度を上げて立ち向かった。
コボルトの背中を剣で弾いて、そのままやつの首の間合いに入った。
剣を振り上げ、怪我とか出血とかを無視して全力で振り下ろした。
体の中が痛すぎる…!横腹からの血が止まらない…!
でも…!お前を地獄に落としてやるっ!!!
グシュッ…
肉が突き刺さる音が聞こえた後、胸が一気に傷み始めた。
視線を下ろすと、あいつの爪が僕の胸を貫通していた。
「ああぁあぁあああ…!!!」
死ぬ…のはもう確定か…!
ますますお前をここに置いておくわけにはいかねぇな…!
このとき、僕の意識は覚醒した。異常な痛みと闘心であり得ない力が出た。
「うおおぉぉぉ!!!」
考えてたのはあいつを殺すことだけ。
…気がつけばあいつの首を斬って絶命していた。
「はぁ…はぁ…へへ、ざまぁみ…ろ…。」
体の力が抜けた。倒れ込むと意識が遠のいた。
奴を倒せただけでも達成感でいっぱいだった。後悔は…
…強いていえばエレナの約束か…。もっと早く勇気を出せてたら学院にいれたのに。
まぁ、僕が死んだ場所もあって見つからない。エレナを悲しませたくなかったからちょうどいいかも…。
エリオスは血を吐きながら目を瞑った。もう精力はない。
…誰だ…?
洞窟の奥から足音が聞こえる。
でももう考える気はない。そんな気力なんてない。
足音すら聞こえなくなった。体も動かない。
「【蘇生】」
誰かがエリオスに回復魔法、しかも最上位のものをかけた。
エリオスの胸と横腹の傷が塞がり、折れた骨も治った。
少し時間が経つと、エリオスは意識を取り戻し体を起こした。
顔を上げるとそこには女性が立っていた。
金髪の20代くらいで、環境に合ってない教会で着そうな服を身に付けてた。
そして僕は感覚で理解した。この女性は人ではない雰囲気を漂わせてた。