episode21 悪魔の属性
エリオスとキアラルはイレイス村から数十キロ先にある魔剣学院へと向かった。
平原や森など、なぜか魔剣学院の周りは自然に囲まれている。そのため向かっている最中はほとんど同じ風景だった。
それでもエリオスはエレナと再会し、再び魔剣士になるために強くなりたい。キアラルは強くなる術を学び、村を守れるようになりたいと意思を持って前に進んだ。
辺りもだいぶ暗くなり、夜を明かそうと木陰に腰を下ろした。
イレイス村からの人々からもらった保存食を取り出し、一口頬張った。
味は本格的な料理には敵わないが、十分美味かった。キアラルの方を見ると、保存食を口にくわえながらウトウトしていた。
キアラルはいくら鍛えていたとしても、やっぱりこの距離を歩き続けたのはきつかったようで、体を揺らしながら必死に睡魔と戦っていた。そんな姿を見て心配になった。
「だ、大丈夫…?食べたら寝ていいよ…?」
「う、うん…エリオスは大丈夫なの…?」
「あぁ、僕は慣れてるから。」
それを聞いたキアラルはバッグを枕にして転がった。
「ごめん…エリオスも眠くなったら起こしてね…。」
外の野宿はいつ魔物が来るか分からないから、交代交代で見張りをしなければならない。
キアラルは一瞬で寝息を立てていた。よほど疲れたんだろうな。
ほんのり冷えた体を焚火で温め、寝ないようにと目力を入れていると、急に空が明るくなった。
「魔物か!?」と空を見ると、そこには見覚えのある神が下りてきた。
「誰が魔物ですか!!」
「カーレリア様!」
頬を膨らましながら地面に降り立つと、唇に手を当てた。
「キアラルさんが寝てますよ。静かに。」
「うっ…。」
慌てて口を抑えてキアラルの方を見た。幸いキアラルは何事もなかったかのように寝ていた。ふぅ…よかった。
「それで、どうしたんですか?」
そう聞くとカーレリア様は真面目な顔になった。そういうときのカーレリア様は絶対ボロは出ない。
「エリオス、これから神の加護使うのは控えて。」
「え…?なんで…?」
あまりの意外な言動に呆気にとられていた。
「それはおよそ100年前…とある人に加護を与えたの…。」
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その時代、国と国が分かち合えず、国同士の戦争が絶えなかった。
そんな中、魔術の神,カーレリアはとある国の一人の平民に加護を与えた。
「加護は何に使いますか?」
「はい…俺はこの力で戦争を終わらせます。」
男は戦争を止めるため国の軍人になり、他の国の脅威となりえるほど戦争で活躍した。
男は国から優遇されて一瞬で軍隊の隊長へと成りあがった。
それにより一時戦争を止めることは成功した。
しかし、問題はそこからだった。
力と金を手に入れた男は凶変して、国を自分のものにしようと王を殺した。
国は政治が破綻し、無法地帯へと姿を変え、国は機能しなくなった。
さらに他の国が王である男を暗殺しようと色んな国と条約を結び、その男を大量の犠牲を出しながら殺した。
そのあと、連携した国は戦争を終結し無事平和を取り戻したが、五大魔術以外の魔術は今も恐れられている。
炎、水、氷、風、土。それ以外は悪魔の属性と呼ばれている。
過去の事件に、五大魔術以外の魔剣士が処刑されたこともあった。
今はそんなことはないが、いじめ、暗殺の対象になりかねないため隠してる人がほとんどだそうだ。
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「ということがあったの。」
エリオスはカーレリア様の話を聞きながら、過去の出来事に思いを馳せた。
神の加護がもたらす力の大きさ。それが引き起こす悲劇を理解した。
「だからエリオス、自分の力を自覚して。あなたは世界の脅威にもなり得るのだから。」
「…分かりました。この力を正しく使います。」
カーレリア様は微笑み、「信じていますわ。」と呟くと、空に向かって消えていった。
カーレリア様がいなくなった空をしばらく眺めた後、キアラルの方に体を向けた。
キアラルは何事もなかったかのように寝ていた。この力を知っているのはキアラルのみだ。
エリオスはキアラルの寝顔を見ながらカーレリア様の言葉を何度も思い返した。力は諸刃の剣だ。使い方によっては相手を守れるが、傷つけることもできてしまう。
自分の力で誰かを傷つけてしまったらと考えると、嫌な悪寒がした。落ち着かせようと深呼吸し、焚火を見つめた。
ふと、キアラルの無邪気な寝顔に目が入った。
「…守るべき人がここにいる、守るために力を使う。それだけだ。」
自分の中で決意した後、時間をつぶそうと神の力で剣を生成し、素振りを始めた。疲れても回復すればいい。
どれだけ強くなろうと、努力を怠るわけにはいかない。それに剣術単体でいえばまだまだ弱い。
自分、そしてキアラルを守るため、僕は強くならなければ…!




