episode15 起死回生
99回もの死を経験してやっと勝てた喜びに浸っていると、突然体中の力が抜けた。これは…魔力切れか…。
意識が朦朧しているとカーレリア様が近づいてきて、何か魔法をかけてくれた。
「【魔力回復】!エリオス!よくやったわ!」
カーレリア様のかけてくれた魔法のおかげで意識が回復して、体が一気に軽くなった。
「は、はい…こ、これで僕は生き返れるんですか!」
「正確には生きてるけど、でも現実世界には戻れるわ。」
これで…キアラルちゃんを助けに行ける…!
でも…今の僕の力で山神を倒せるだろうか。
いや、倒さなければならない。正直死はもう怖くない。慣れてしまった僕にはなんでも立ち向かえる気がした。
エリオスは立ち上がりカーレリア様に深くお辞儀した。
「カーレリア様ありがとうございます。これでキアラルちゃんを助けに行けます。」
「いえいえ、むしろよく私の鬼畜な試練を乗り越えてくれたエリオスに感謝したいくらいだわ。」
「そんな鬼畜だなんて…いや鬼畜だったな…」
謙虚にいこうと鬼畜じゃないと言おうとしたが、99回も殺されたことは流石に笑って流せるレベルではなかった。
カーレリア様はエリオスの困った表情を見て腹を抱えて笑った。
「ハハハハハ!!他の神に禁止された試練を、鬼畜じゃないって言ったらエリオスは化け物よ!」
き、禁止!?禁止されてるのにやったの!?
カーレリア様ってお茶目なところあるし、神だけど人間っぽいなぁ。
頭の中で考えているとカーレリア様はエリオスの顔を見て察した。
「その顔!馬鹿にしてるでしょ!」
「い、いや、そんなことないですよー」
「してるでしょ!」
カーレリア様の必死な顔を見て思わず吹き出した。
「あ!やっぱり馬鹿にしてる!」
「し、してないですって…!」
「むぅ…!」
カーレリア様の拗ねた顔をみて少し冷静になった。いくら人間っぽいといえど相手は神だ。不敬不敬…。
さて、本当はもっとカーレリア様とリラックスしたいところだけど、もっと大事なことを片付けてからにしたい。
「カーレリア様、僕そろそろ行きます。」
そういうとカーレリア様は少し残念そうにしながらも受け入れてくれた。
「うーん、仕方ないわね。じゃあ約束通り特別な力を授けましょう!」
そういえば勝ったら特別な力を授けてくれるって言ってたな。すっかり忘れていた、
カーレリア様は手を合わせて祈っていると、手から金色に輝く光が僕の体の中に入っていた。
神の加護を受け取ったみたいに体の中が熱くなった。
「これで新たな力を取得できました!試しに使ってみて!」
「いや使ってみてと言われましても…」
そう指摘するとカーレリア様はハッとして軽く咳払いした。
「あ、そうね。じゃあこう唱えて、"神剣"」
「ほ…【神剣】!」
すると、手元に影と戦った時と同じ聖なる光の剣が現れた。
元々この剣はカーレリア様から借りたもので、僕の魔力では作れなかった。
「これを…僕に…!」
あまりの驚きに声が出なかった。その反応を見てカーレリア様は微笑んだ。
「ええ、この剣ならあの山神を圧倒できるはずよ。」
「本当ですか!」
100回戦ってきて分かる、この剣は攻撃力耐久力ともに優れていて、どんな魔物も斬れると思っている。
時が来たみたいだ。部屋が光にあふれ始めて僕を呼んでいるようだ。
「ではエリオス、キアラルを助けに行ってあげなさい。あなたの力なら守れるわ。」
「ええ、ではカーレリア様、行ってまいります。」
「ええ、健闘を祈りますわ。」
体が意識と共に徐々に薄くなっていき、やがて光と共にエリオスは現実世界に戻っていった。
――――――――その後…――――――――
「エリオス…?エリオス!」
山神の圧倒的質量の手の攻撃をもろに受けたエリオスは意識を失っていた。
エリオスを必死に揺らして起こそうとしているが、山神はもちろん待ってくれない。
「"愚かな人間だ…では、生け贄をいただこう。"」
そういってキアラルに手を近づけた。
「いや…いや…!」
キアラルはエリオスを置いて逃げるわけにはいかないと、死を覚悟して目をつぶった。
その時だった。
「…【神剣】、【一閃】。」
意識を取り戻したエリオスは、すぐ先に迫っていた山神の岩の手を斬り裂いた。
これに山神は予想していなかったようで相当驚いていた。
「"ぬ!?生きてたのか人間…!しかも我の手を…!"」
エリオスはゆっくりと立ち上がり、キアラルに視線を下ろした。
「エリオス…!」
「心配かけて悪かったね、キアラルちゃん。」
キアラルの頭をなでると、キアラルは安心したのが泣き始めた。
そして山神に体を向けた。
「山神…お前を倒す。」