episode14 エリオスvs影 後編
「99回目!影勝利!」
「くそ…!あと一歩だったのに…!」
相変わらず僕は負け続けている。けれど前に比べたら圧倒的に成長した。
今回はあと一歩のところまで追い詰めれたからだ。
最初は全くついていけなかった影との戦いを通じて、徐々に相手の動きが分かるようになった。
そこからさらに予測もできるようになる技を取得した。その名も"心眼"。この技を使うと相手のわずかな動きで未来の一手を予測できるようになる。
最初取得したときは上手くいかなかったが、何度も使っていくと技の精度が向上していることをエリオス自身が感じた。
そして神の加護を天賦した剣舞を何個も取得した。
それは影の動きからヒントを得て作り出したものだ。
影の回転した斬り方を模倣した"輪光"。
人の体、骨でさえ断ち切る一太刀、"一閃"
上から勢いよく振り下ろす"落撃"など、影にも通用する技で徐々に影の実力に追いついた。
けれど残り1試合、これで負ければ僕は死ぬ。
まだ足りない物は何か…、影を越えれる何かがあれば…!
そう思考を凝らすと影がいきなり襲いかかってきた。
相変わらず考える時間を与えてくれないから厄介だ。
「【|攻撃力、防御力、速度上昇《アタック、ディフェンス、スピードブースト》】。」
迫ってくる影を冷静に見ながら強化魔法をかけた。
さらに心眼を発動して相手の行動を予測できるようになる。
影が放つ速攻は一瞬で距離を詰め、鋭斬撃がエリオスの首元を狙っている。
しかし、彼はすでに影の攻撃パターンを見つめていた。どの方向に動くかが見えている。
「…右斜め下…!」
その方向から逆に体を背けると影の剣が跡から通りかかった。
「ここ!【一閃】!」
勢いよく影の首を狙って放った。しかし影はギリギリで避けられ、僕の隙を狙って突き技を仕掛けてきた。
でも99回死んだ僕はもうそんなので死なない!
「【輪光】!」
影の突きに合わせて回転技を放ち、影をよろめかせた。
…その技参考にしてやる!
よろめいた影に向かって剣を横に構えた。
「【光穿】!」
光の如く相手を穿こうととっさに思い付いた技だ。
影は避けるのに遅れて腰に直撃した。
影の腰からは黒い煙があふれ出ていて明らかに損傷しているようだ。
でも油断するな…、まだ勝っていない…。
すると影は新たな剣舞を見せてきた。
影は剣を振った瞬間周りが竜巻のように風に包まれた。
「こんな技…!初めて見た…!」
見たことない技に心の中で焦りを覚えていたが、すぐに気を取り戻し冷静になった。
絶望の中培った経験と知識が頭の中で巡る、目の前の敵に集中し、影に立ち向かった。
あの竜巻に入れば間違いなく死ぬ。でも何か突破口があるはず…!
彼は呼吸に集中し、全身の魔力を一点に集中させた。体が熱くなる。
瞳が研ぎ澄まされ、目の前の世界がスローモーションに見えるほどだ。
エリオスの目はスローモーションに見えて、衝撃の事実が判明した。
…!いや竜巻ではない!影が形を変えて回転切りしているだけだ!
ならタイミングを計れば対抗できる、ここで終わらす…!
剣に魔力を大量に注入させた。魔力を入れれば入れるほど硬度が高くなり、攻撃力が上がる。
これがラストチャンスだ…!勝ってキアラルちゃんを助けに行く…!
体の中にある魔力をすべて使い切るほど魔力を込めて、影に立ち向かった。
一歩一歩踏み出すごとに体が軽くなり、剣術と魔術が融合していると感じた。
「これで…終わらせる!」
影はまた回転を続けており、一見華麗な剣舞にしか見えなかった。
エリオスは影に近づきつつもずっと見続けて隙を伺った。
―――今だ!
彼は影の一瞬の乱れを逃さなかった。エリオスはその竜巻に入り込み、体をうねらせてギリギリで避けた。
そして剣にすべての想いを乗せて影に技を放った。
「終わりだ!【光神天撃】!!」
部屋全体が輝くほどの光が剣からあふれて、影が空気中に融合しながら消えていった。
魔力切れで地面に吸い付かれるように倒れた。
「はぁ…はぁ…勝った…?」
何度も影のいた地面を見たが、影が現れることはなかった。
初めて勝ったと確信すると、今まで抱えていたプレッシャーがすべて解放された。