episode13 エリオスvs影 前編
「ぐわぁ!?」
「はい影の勝ちーこれで26回目ー」
影に剣のような棒で首をぶつけられ、異常なほど吹き飛ばされた。
影はあまりにも強すぎた、高い剣術能力と俊敏さを兼ね備えていて、魔術は全く使ってない。
時空間の中でも痛みはちゃんと感じる…生身なら出血多量で死んでるよ‥。そして負け続けると精神と自尊心がどんどん削られていく。自分の弱さが痛いほど身に染みる。
相手を動きを見るだけじゃだめだ、予測をしなければ…。
「それじゃあ27回戦開始!」
カーレリア様は時間を空けることなくすぐ試合を開始した。
また影がとてつもないスピードで斬りかかってきた。
どこ斬りにくる…!考えろ…!
頭の中で今までの試合を振り返る。
相手は相変わらず早いが、何かしら振りかぶってから来ている。
その隙を狙えば対抗できるかもしれない。
ただ隙を待つのではない、先に予測して避けるしかない…!
そう考えていると影がすぐ先に迫っていた。
相変わらず無駄のない俊敏な動きだ…。でも必ず隙が…!
「んぐ!?」
「勝者!影!」
気がつけば影に負かされていた。見えても体が反応しきれない…。
痛い…辛い…死ぬ…!
ここではどんなに傷みつけられても死なない、まるで地獄のようだ。
そもそも戦闘の知識がない僕にカーレリア様は何を求めてる…
無理難題にも程がある…!
こうなったらカーレリア様を…!
「うおぉぉぉぉお!!」
無我夢中でカーレリア様に剣を構えて走った。
「あらま、ほい。」
カーレリア様の手から放った魔法が、僕の首に直撃した。
…!はぁはぁ…!
気がつけば生き返っていた。
今、僕の頭と体がお別れしていた…。あまりに鮮明すぎて不気味だ…。
「神である私に立ち向かうなんて、無謀すぎじゃありません…?」
「そ、そうでした…やっと冷静になれました…。」
あまりの辛さに気が動転してた…。落ち着け…相手は神じゃない…影だ…。
それに僕は魔法を使える。足りない部分は魔法で補助しろ…!
「【速度上昇】!!」
自身の脚力を上げて影に立ち向かった。
影の俊敏さに追いつくために魔法で僕も俊敏さを上げる!
心臓が早く鼓動を打ち、全身に魔力が巡っていくのが分かる。
影は僕に向けて剣を振り上げてきた。
ここだ!!
影が剣を振り下ろした瞬間に腰を落として両手で剣を弾いた。影は剣を弾かれて後ろによろめいた。
「このまま…!いっけぇぇえ!」
剣を片手に持ち直して影に思いきり切り捨てようとした。
しかし、影は簡単に剣を受け止められ、瞬きした瞬間に間合いに入られた。
「ぐ…!【防御力上…】」
魔法を唱える前に胴体を斬られて死んだ。
「28回目も影の勝ちね、でも今までで良かったわ!」
カーレリア様の言う通り、いつもより対応出来ていた。
けれど影の方が何枚も上手で、気がつけば死んでいた。
影の一太刀は腕が痺れるほど強く、すぐ隙が出来てしまった。
こうなったら全て試してみるか…!
僕は今使える身体強化魔術を全て使った。
「【攻撃力上昇】!【防御力上昇】!【速度上昇】!」
さらに加護である力を身にまとって影に立ち向かった。
「【龍刃】!」
影に間合いが入る前に、軽い足捌きで影の背中に周り込んだ。さっきより余裕がある…!このまま斬れば…!
しかし影は剣を振りながら後ろを向いた。
受け止めてはだめだと、とっさに屈んでギリギリでかわした。
影は勢い余って僕に背中を向けた。
「今だ!!」
屈んだ状態から剣を振り上げると、ほんのり影の体を霞んだ。
完全に当たったわけではないが、それでも一つ傷を与えられたことに感動した。
しかし影は勢いを崩すことなく僕に剣を振り下ろされた…。
「29回目も影の勝ち!でも成長しているわよ!エリオス!」
また死んだみたいだ、でも今は悔しさより当たった嬉しさが勝っている。魔法を使えば影に対抗する術を見つけたからだ。
まだ僕はカーレリア様の加護を使いこなせてないことを改めて思い知らされた。
きっと使いこなせるようになれば影に勝てる…!
「それじゃあ、30回戦!開始!」
剣を構えなおして影に向かって集中した。
今は恐怖とかない。影に対する執着のみ燃え上がっている。
来い…!必ずお前を倒して見せる…!