episode1 落ちこぼれ
新作投稿始めます!
王道だからこその読み応えを感じて欲しいです
この世界は魔法に満ちていて、魔法を様々な形で操っている者がいる。
杖で直接魔力を変換してぶつけたり、
剣や槍で魔法をまとわせて戦ったりなど、
人それぞれ戦い方が違って面白い。
僕はそんな人たちに憧れて、この魔剣学院に入学した。
魔剣学院で魔術、剣術を学んで、それから何をしようか決めてない。
冒険者になってもいいし、騎士になってもいい。
僕はこの学院で立派な魔剣士になってみせる!
――――数か月後――――
「おいエリオス!遅いぞ!もっと早く走れ!」
「す、すみません…はぁ…。」
基礎体力向上の講義。
走りこみで、僕はいつも通りビリだった。
現実はそんな甘くなかった。
「あいつまたビリだぜ!」
「ほんと、なぜこの学院にいるんだろうな」
周りからも僕のことで馬鹿にされていた。
実際事実だし、言い返せなかった。
体力だけではない。剣術も魔力もだ。
剣術の対面試合で僕は一度勝ったことない。
大抵剣を弾き飛ばされるか、一瞬で隙を突かれて試合終了。
魔術も同様、僕は適した魔力の属性すら分かってなくて、魔力の初期段階、無属性の状態から今に至る。
無属性の魔術は大したものはなく、ささやかな自己強化や回復くらいだ。
そんな俺が魔剣学院にいるのが奇跡なくらいだ。
しかし、終わりは突然やってきた。
「…エリオス・ヴァルトラン、君は退学だ。」
学院長に呼ばれて学院長室でこう告げられた。
薄々分かってはいた。実技試験は毎回単位不足だったし、先生にも軽い意地悪をされていた。
でも告げられた瞬間、膝から崩れ落ちて涙が溢れた。
「そ、そんな…せっかく頑張ったのに…。」
「魔術、剣術どっちも劣っている君には、どうしてもこの学院にいる資格がないんだ。悪く思わないでくれ。」
分かってる…僕が劣ってるせいで学院を退学することになっている。
でも…やっぱり夢が叶わないと言う現実が、僕を押し潰してきた。
退学と命じられた生徒は次の日までに学院を出ないといけない。
僕は寮の荷物をまとめていた。
幸い個人寮だから邪魔されることなく、ものの数時間でまとめ終わった。
出ようとする時間は既に決めていた。真夜中だ。
朝とか昼に出ると僕をいじめてきた奴に絡まれるに決まってる。
夜道を照らす月光の中、僕は学院の寮から静かに出た。
門が近づくにつれて今までの努力が走馬灯のように脳裏に写る。
最初は希望を持って学院に入ることができた。
しかし周りとの能力の差、痛いほど身に染みる僕の弱さ。
夜中に剣を持ち出して素振りした日もあった。
その結果がこれだ。
才能のなかった僕は、これからどうしたらいいのだろう。
すると、後ろから僕の名前を呼んだ気がした。
するわけない。こんな夜中に人がいるわけ…。
しかし幻聴ではなかった。聴き馴染みのある声に後ろを振り向いた。
「エリオスくん!どこ行くの?」
「…エレナ…。」
エレナ・ルシフェリア。僕の幼馴染だ。
青い髪に青い瞳。僕より少し身長低い。
戦闘面でも剣術も魔術も優れていて、戦闘に関しては学年トップクラスらしい。
小さい頃から僕の魔剣学院への入学を応援してくれて、一緒に来てくれた。
それからときどきエレナに、ランニングや剣術魔術など、こんな僕に一生懸命指導してくれた。
二人だけの秘密みたいで楽しかったけど、そんな日はもう無い。
「エレナ、僕、退学になったんだ。」
「そんな…。」
エレナは僕の言葉を聞いて涙を浮かべていた。
「だってエリオスくん、昔から魔剣士になりたいって、せっかく頑張ってたのに…。」
分かってる…。僕だって学院入った後も努力を欠かしたことない。
エレナは悪くない。でもこの情けない自分を心配されるのが虚しくなった。
「エレナ…もういいよ。エレナはこれからも頑張ってよ。」
「エリオス君がやめるなら私も…!」
ダメだ。引き止めないと…!僕についてくる必要はない…!
「僕についてくるなっ!!」
「っ!?」
言葉が怒りに任せて口から飛び出してきた。
エレナは僕の形相、怒鳴り声を聞いて怯え始めた。
そりゃそうだ。僕はエレナに一度も怒鳴ったことない。
でも謝る余裕はない。夢を失った僕に人のことなんて考えられない。
僕はエレナに背を向けて最後に言いたいことを伝えた。
「さようならエレナ。僕の代わりに夢を叶えて。」
「あ…待って…。」
まだ何か言いたそうだが、無視して門に向けて走った。
それに振り向けない。抑えていた涙が一気にあふれ出して、こんなところを見せたくなかった。
ごめん…ごめんよエレナ…、応援してるからな…。