突然の変化
桜井さんと一緒にいたのは数ヶ月前に俺を振った張本人、
秋月明日香だった。
明日香を見た瞬間、俺の危機感知が最大限に反応する。この目に映る情報はこいつを秋月明日香だと言っている。だが俺の魂がそれを否定して来る。次の瞬間、俺の本能が今すぐ逃げろと訴えかけてくる。すぐさま、俺は学校に向かって全力で走って逃げって行った。
「おい!朝陽待て!」
なんか気持ちが悪い声が聞こえた気がするがそんなもの気にせずに走って行く。
そして気づいたら俺は学校にいた。教室に行って見てもドアの鍵が開いていなかった。なので鍵を取りに行き教室へ入ると、何故か誰も居ないのにも関わらず窓が開いていた。昨日、高木が閉め忘れたのだろうか?窓から校門を見下ろして見てもまだ誰も来ていなかった。枯れた桜の木を見てみると、枯れた桜の花びらが風とともに舞っている。それを見ていると何故か心が落ち着いているのを感じた。冷静になって考えていると、ふと数ヶ月前に聞かれた言葉が頭に浮かぶ。
『暁霞くんってまだ明日香ちゃんのこと好きなの?』
桜井さんが聞いてきた疑問。あの時は振られてすぐで、気持ちの整理がつかず分からなかったが、今ならわかる。きっと俺は秋月明日香のことがもう好きでは無いのだろう。だからと言ってこれからは関わっていかないとは思わない。俺は振られてから明日香に避けられていたが、明日香は俺の大切な幼馴染だ。だからこそ今まで明日香と過ごした時間を無かったものになんか絶対させない。
ではなぜ今日、明日香を見た時逃げてしまったのだろうか?
その時、頭に明日香に言われた言葉が響き渡る。
『あんた見たいなキモイやつが私と付き合うとかどの口が言ってんだよ』
明日香が俺に言った、俺の心を砕いた言葉。
今だに、それを思い出すだけで心が痛くなる。
あぁ………なんとなく俺が明日香から逃げた理由がわかった気がした。
俺は怖いだと思う。
好きだった人に…………大切な人に罵倒されるのがとても怖い。嫌われたくない、傷つけたくないって思っているからこそ、もう1回罵倒されるのがとても怖い。
だが、怖がっていても前に進めない。
明日香の本音を、真実を知るために彼女と向き合わないといけない。俺は改めて覚悟を決めたのであった。
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どれだけ経っただろうか?しばらくすると凌空と金木、桜井さんが教室に来た。
「明日香ちゃんのこと言わなくてごめんね!」
桜井さんが教室に入って直ぐ、俺の所に来て申し訳なさそうに謝ってくる。
「いや、俺も急に逃げてごめん。明日は一緒に行っていい?」
「うん、もちろん!でも明日香ちゃんも一緒でいいの?」
桜井さんが意外そうに聞いてくる。俺が逃げたことを結構、気にしていたのだろうか?
「うん、これはチャンスだと思ってね」
「確かにそうかもね」
─────次の日
俺は昨日と同じように金木と凌空を起こして集合場所に向かった。
「おはよう〜!」
集合場所には昨日と同じように桜井さんと明日香がいた。
「おはよう!」
俺たちは学校に行き始めた。
俺と明日香が前を歩き、その後ろを桜井さん、凌空、金木が歩いていく。
いやなんで?確かに向き合うって決めたけど、最初から隣で歩くことなんてある?いくらなんでも気まず過ぎだろ。て言うか凌空たちと桜井さん、いつの間に仲良くなったんだな。後ろから話し声が聞こえてくる中、こっちは何も会話がない。
なんか話さないと。
「え〜と、明日香って何組?」
「B組だよ」
B組……亜蓮や剣解と同じクラスか。えっと、他に話すことないかな?一生懸命なにを話すかを考えていると、
「最近どう?」
「えっ!?」
まさかの明日香から話題を振って来た。明日香から来るとは思っていなかったため、普通に驚いてしまった。
「まぁ、ぼちぼちかな〜」
「何それ〜?」
ぎこちなく返すと、明日香が楽しそうに笑った。久しぶりに笑っている明日香を見た気がした。
いや、実際に久しぶりなんだけどね。
ああ言うふうに明日香と話していると昔に戻ったみたいで、思った以上に早く学校に着いたように感じた。そして、教室の前に着くと、
「えっと、じゃあまた」
「うん!」
少しぎこちなく別れの挨拶を言うと、明日香が嬉しそうに教室へ向かっていった。
まぁ、色々あったけど1歩前身したと気がする。とは言え肝心なのはここからだ。昔みたいに仲良しに戻り、明日香の本心を知るためにも頑張るか〜。
そして、この日から俺の奇妙な朝が始まった。