原因
「ねぇ、ちょっといい?」
俺に向けられた冷たい声の正体は現在進行形で怒っている桜井愛花さんだった。
あ、俺死んだ。いや待て、俺の危機感知が反応しなかった?いや違う。反応はした。まさか直前まで敵意を消していたのか?そんなこと出来るの限られた極わずかだぞ。だが、諦めるのはまだ早い。そうだ!こいつを金木たちに押し付ければ
と考え、金木の方を見てみると、
「ごゆっくり〜。さぁ凌空行くぞ」
金木が凌空を連れて逃げって行った。金木たちがどっかに去っていくと、桜井さんはオーラを纏いながら椅子に座っている俺を見下してくる。あいつら後で覚えとけよ。とは言え、なんで桜井さんは怒っているのだ?全く身に覚えが無いんだが。直接、聞くか?でも、そんなことしたら更に怒りそうだし。てかまともに会話できるのか?
「話し合いに応じる気はありますか?」
「ふざけてるの?」
「すいません!」
話し合うつもりは無いらしい。そして、何故か桜井さんの声がさっきより冷たくなった。とりあえずなんで怒っているのか知って直ぐに謝ろう。
「えっと、なんで怒っているか聞いてもよろしいでしょか?」
「ハァ……」
桜井さんがため息をつく。更に声だけじゃなくて顔までも怖くなってる。怖すぎて目も合わせられないですけど。そのまま、顔が元に戻んなかったらどうするんだよ。いや、それはそれで面白いからいっか。そんな冗談はさて置き、覚悟を決めて桜井さんを見る。すると、桜井さんがさっきまでの怖い雰囲気が少し無くし口を開く。
「約束……」
桜井さんが小さな声でなんか言った。
「えっ!?ごめんなんて言った」
よく聞こえなかったのですぐに聞き返すと、
「だからっ、約束って言ったの!」
少し、怒りながら声量を上げて言ってきた。
約束? 『明日、一緒に学校行こ!』
あっ…………
昨日、桜井さんとした約束が頭に浮かぶ。すっかり忘れてた。言い訳ではないが、原因は凌空を舐めていた事だ。約束のことは家に出る前ぐらいまでは覚えていた。だが、凌空を起こすことに必死だった。だってあそこまで起きないとは思っていなかったんだもん。今度、起こす時は無理やり凌空を家から引っ張りだそう。
「あ〜え〜と、忘れてました。すいません!」
とりあえず謝っておく。いくら凌空のせいで約束を守れなかったとはいえ約束を忘れていた俺も俺だ。
「まぁ、今回は許してあげる。でも明日は忘れないでね」
「ありがとうございます!」
案外さっぱりと許してくれた。明日は忘れないようにしよう。だが、忘れると間に合うは別だ。いくら俺が約束を忘れてないなくても、凌空がしっかり起きてくれないと意味が無い。そんなことできるのか?まぁ作戦はあるから問題ないな。
そして、桜井さんはどっかに去っていくと凌空と金木が戻ってきた。
「何話してたん?」
「俺を置いて逃げたくせに良く聞けるな。別に明日一緒に学校行こって話してただけだよ」
「明日も凌空を起こしてから学校行くん?」
「そうだな」
「ならオイラも起こしに来て」
金木がまるで当たり前のように言ってくる。
「ぇ━━!!!」
「なんで嫌そうなん?」
当たり前だ。凌空だけで限界なのに更に金木まで起こしに行くとなると俺が死ぬ。
「まぁいいけど。その分お前も凌空起こすの手伝えよ」
「はいよ」
────次の日
俺の朝は本当に忙しい。以下略………
俺は遅刻しないためと桜井さんとの約束を守るために本当に頑張ったと思う。まず、金木の家に行き、金木を起こして金木が支度をしている間に凌空を起こしに行く。そして、凌空を無理やり家から連れ出し金木を迎えに行くと言う労働を強いられていた。なんで俺がこんなに苦労しないといけないんだ?
俺の苦労のおかげ桜井さんとの約束も守れそうだ。
そして、凌空と金木を連れて桜井さんとの待ち合わせの場所に行く。
「あっ!暁霞くん〜!」
待ち合わせの場所に着くと桜井さんが手を振って来た。
よく見ると桜井さんの他にもうひとつの人影があった。
その人影の正体は数ヶ月前に俺を振った張本人、秋月明日香だった。