卒業式
桜が舞い散る中、1つの小さな体育館の中では、在校生の歌声や保護者の拍手、卒業生代表の答辞などが響き渡る。多くの人々が幸せや感動に満ち溢れているだろう。ただ1人を除いて。
「はぁ〜、だり〜!」
俺は大きくため息をつきながら昨日のことを思い出していた。
昨日、明日香に振られた後、家に帰り、振られたショックよりも「キモい」と罵られた、ショックの方が大きくて沈んでいた。今まで明日香にそういった言葉を言われたことがなかったせいか、ほんとに罵られたのか未だに信じられない。そんなことを考えていると1日が経ち、卒業式に行く気がなくなっていたが、流石に行かないわけにもいかず。仕方がなくきたという感じだ。
(本当になんであんなこと言ったんだ?もしかしたらあれが最近、流行りのツンデレってやつなのでは?全く、俺が変な性癖に目覚めたらどうするんだよ。でもそしたら振られないよな普通……)などと考えていると
「おい、いい感じの空気を壊すなよ」
隣にいるデブ…じゃなくて太った小年?が話しかけてきた。
彼の名前は碧海亜蓮。今はこんな感じだが昔は倒立で歩けるほど、運動神経が良かったらしい。(自称 動けるデブ)
「別に良いだろ、卒業って言っても中学校、目の前なんだから、ほとんどメンツ変わらないし」
「そうなんだよなぁ」
と話していると
「おーいお前ら写真撮ろうぜー!」
と言ってこっちに2人のクラスメイトが走ってきた。走ってくる2人のうち背の低い少年。彼の名前は如月剣解、俺の数少ない幼馴染の1人である。名前からしては日本人だが一応ハーフらしく、いわゆるハーフイケメンってやつだ。時々、なぜ俺らといるのだろうと思ってしまうぐらいイケメンだが、彼は俺にモテるためには顔だけではなく身長も必要だということを証明してくれた。
「おい、剣解待ってくれ〜」
そして、剣解とは対象的で背の高い少年。彼の名前は金木純弥。
なんの取り柄もないが、喋り方が特徴的な少年だ。
「おっ、いいねみんなで撮ろうぜ。」
とみんなで写真を撮っていると、俺の視界に昨日、俺を振った少女の姿が映る。
明日香も友達と写真を撮っている。別に、幼馴染同士で写真を撮ってもおかしくはないだろうが昨日振った相手と写真なんか撮れるわけもない。なら、一緒に撮らなければいいのだが1つ大きな問題がある。
「朝陽、明日香と写真撮りなよ。」
幼馴染なだけあって親同士、仲が良いため度々こういうことがある。親が振られたことを知っているはずもないから仕方ない。なぜだろう本来なら、嬉しいはずだが今、写真を撮るのはちょっと……と思いながら逃げようとすると、
「おい、撮って来いよ」
と言いながら、亜蓮が俺の腕を掴んで明日香のところへ引っ張っていく。
「おい、待て!やめ、やめろーーーーーーー!」
俺も抵抗するが亜蓮の重い体によって鍛えられた、腕力に勝てるわけもなく明日香のところに連れて行かれた。
「それじゃあ、行くよー!はいチーズ!」
明日香のところに行き、校門の前に並んで写真を撮ったが、明日香は写真を撮り終わったらすぐどっかにいってしまった。明日香はさて置き、撮った写真を見てみると、俺はいいが、明日香がとても嫌そうな顔をしていた。
(なんだ、こいつ。せっかく、俺が気使って笑顔で写真、撮ったのになんでこいつがそんな顔するんだよ。これじゃあまるで俺が振ったみたいじゃん。いや逆だよ、俺振られた側だよ。
あれ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。もうやだ帰ろう。)
「まぁ、元気出せよ」
「うるせぇ」
「それは置いといて。朝陽、今日行くよな?」
「もちのろん!行くしかないだろ」
「だな!」
そう言って今後の予定について話し合っているのであった。
亜蓮…デブ
如月剣解…ハーフイケメン
金木純弥…なんも取り柄がないが喋り方が特徴的。
朝陽、剣解、明日香…幼馴染
ツンデレ…都合の良い言葉