27 オディット
私は聖女オディット。生まれてすぐに孤児院に捨てられたんだけど、12歳の時に神官に連れられて神殿に行ったの。私には聖なる魔力があるんだって。
神殿で女神の石に手を置いたら、ぱあーっと金色の光があふれ出して、優しい目をした神殿長が私を褒めてくれた。
そして、私はデュボア侯爵家の後見をもらって、聖女になることになった。
初めて訪ねた貴族の屋敷は、広すぎて迷子になってしまった。途中で頭のおかしな汚い顔の子に会ったけど、あの子も孤児院育ちなのね。
こんないい屋敷に雇ってもらって幸せなくせに、お嬢様の悪口を言うなんて、ひどいわね。私ならすぐに孤児院に戻すのに、リリアーヌ様ってずいぶんお人よしね。
神殿長はリリアーヌ様の作る聖水を褒めていたけれど、力は私の方が上のはずよ。だって先輩の聖女たちも言ってたもの。次の大聖女にふさわしい魔力だって。でも、今の大聖女は、大した力はないのに、貴族だから選ばれたんだって。だからリリアーヌ様が選ばれるかもしれないって。そんなの、間違ってる。
私はそんな貴族主義の神殿を実力主義に変えたかった。
神殿長も賛成してくれたし、王子のアルフレッド様も私の力を認めてくれた。リリアーヌ様は後見してくれている侯爵家の令嬢だけれど、病弱で力を使うこともできないから、私が代わりに聖女になるんだって思っていたわ。
だって、実力は私が一番だもの。
でも、病気が治ったからと神殿にやってきたリリアーヌ様は、以前とは違っていた。虹色の聖水は全く同じだけど、今までの、人を寄せ付けない態度とは違って、神殿長や貴族の聖女、アルフレッド様にまで媚びを売って、皆の支持を私から奪っていった。
間違ってるよ。
治癒魔法も使えないくせに、彼女が大聖女になれるわけない。治癒魔法が使えない大聖女なんて聞いたこともないから。だから、みんなが言う通り、私の方が大聖女にふさわしい。
でも、市街地に魔獣が出て、治療に来たリリアーヌ様の活躍に流れが変わってしまった。
大量の聖水を一瞬で作り出した姿に、今まで私を応援してくれた平民までもがリリアーヌ様を大聖女にと言い出した。
このままでは大聖女の座は彼女にうばわれてしまう。そんなこと、させない!
だから、リリアーヌ様の秘密を知っているっていう人が訪ねて来た時に、会ってみることにしたの。
以前、デュボア侯爵家で働いていた執事の愛人だった女よ。
元執事が突然事故死したことを怪しんでいたわ。なんでも、リリアーヌ様の病が治った時期にデュボア家の使用人が全員入れ替えられたんだって。しかも、全員消息不明だって。なにそれ。侯爵家で何があったの?
執事が愛人宅に残した日記を見せてもらったの。
驚いた。こんな恐ろしいことをやっていたなんて。
私が出会ったあの醜いやけどの子供は、リリアーヌ様に魔力譲渡させられた妹だったのね。ああ、そういえばそんなことを言ってたかも。本当に信じられない。魔力核の移植手術なんて本当にできるのか疑問だけれど、突然リリアーヌ様の病が治ったから、可能性があるわよね。
この日記があれば、リリアーヌ様を追い落とせる。
アルフレッド様が間違った結婚をする前に、これを見せなきゃ。
リリアーヌ様のたくらみは全てつぶしてやるわ。
次の大聖女は私よ。




