色えんぴつの時限爆弾
オレンジ色の夕日が差し込む放課後の教室。
そのあたたかい陽を左頬に感じながら、私は窓側の特等席で独り、みんなから貰った「寄せ書き」を眺めていた。
寄せられたメッセージの中心には、色えんぴつで描かれた可愛らしい虹のイラストが浮かぶ。私の親友が描いてくれたものだ。
「東京でも元気でね」
「夏休み遊びに行くからね!」
「また会おう」
カラフルな別れのメッセージが、淡い7色の虹を囲む。
ただ、その中に1つだけ。
「虹の1番最後に消える色って知ってる?」
少し癖のある、右上がりに記された君の文字。
隅の方にしれっと綴られたメッセージだけみんなとは全くの別物で、私は思わずクスリとしてしまった。
・
あの日から私も随分大人になった。
みんなから貰ったあの寄せ書きは、東京で挫けそうになる私を何度も励ましてくれた。
過ぎていく時間と共に、メッセージは段々と色褪せてしまったけれど。
それでも。
どれだけ月日を重ねても、君からのあのメッセージだけは私の記憶の中に色濃く残っていて、今日までずっとずっと消えてくれなかった。
明日は転校以来10年ぶりにみんなと顔を合わせる同窓会。
君にも会えるだろうか。
ーー君が仕掛けし時限爆弾。
10年の時を経て、今まさにそのカウントダウンが始まろうとしている。
小説家になろうラジオの特別企画
「なろうラジオ大賞4」応募作品です。
『色えんぴつ』を題材にした投稿作品、
少しでもお楽しみいただけますと幸いです。