神か幽霊か。
雨宮 香苗は時宗君が好き。
けれど、時宗君はそんな香苗の気持ちなんて気付いてもいない。
そんな中で知った事実に、香苗は自分が帝王の子供であると聞いて自分がお姫様になれると考え、時宗君を王子として迎えるつもりで浮かれていた。
しかし、今その計画に問題が生じた。
時宗君も帝王の子供なのだと知ったからだ。
焦り困惑する香苗の気持ちを知る由もなく、時宗君は香苗の名前さえも覚えていないと告げ放ったようなもの……
今日の図工という混沌の時間。
絵の具の色彩を、物を置いた事で決めさせる。
りんごとバナナの置かれた6班のパレットには赤と黄ばかりが並び緑と茶がちょびっとあるか、当然画用紙にも赤と黄ばかりが描かれて、それはまるで何かを注意喚起するような……
巻野君(IT)も中畑君も、時宗君の事にばかりで香苗(雨ふらし)の事など知る由もない。
しかし、ここにはもう一人。
時宗君の帝王の子供発言に問題を抱える者が居る事を……
この6班の席に座っていた生徒は5人居る。
時宗君・巻野君・中畑君の男子三人組と香苗ちゃん。
そして……
神戸寧音 。
通称 幽霊。
その姿を前にしても皆が居る事をすら忘れてしまうその存在感の薄さから付いた仇名だが、本人は意外と気に入っているようで……
いじめに繋がるような扱いにも思えるそれは、寧音にとってはネタ的な話が勝手に入って来るポジションと、肯定的に捉えていた。
そんな寧音が何故に時宗君の帝王の子供発言を問題とするのか……