【第4話】超能力に魅せられた僕
四話目です。
「病院には言ってある。行くぞ」
急に言われてもこちら側は全く状況が読めない。
朝霧は肩に背負っていたバッグからスーツを取り出す。
「その格好じゃ寒い。これ着ろ。あったけぇぞ」
篤人へと投げつけるように渡す。それを篤人は取りこぼさずにしっかりと受け取る。
「寒いって…どういう…」
朝霧はタバコに火をつけ始めた。病室は基本禁煙のはずだ。それを朝霧はよくわかっているはずだった。
「ちょっ…どこへ」
篤人の言葉を遮り、有坂は「着てください」と急かした。
篤人は急いで服を着る。ワイシャツを着ることは彼にとって久しいことだった。
ズボンを脱ぎ、足を通してベルトを締める。
ネクタイはないが、スーツに腕を通すと不恰好な彼の姿は多少マシに見えた。
着替え終わると、無言で手をつかんでくる有坂。朝霧のコートを強く引っ張り、自分の方へ寄せる。
「もっと寄ってくださいっていつも言ってますよね」
不機嫌気味に言う有坂に朝霧も「へいへい」と呆れたような返事をする。
病院の花瓶がカタカタと揺れ始める。周りの埃が少しずつ浮いてくるのがわかる。
見たことのない人間でもわかる。
これは得体の知れない力、超能力だ。
「ロード」
彼女がそう呟くと辺りは歪み、青白い光が辺りを包む。
「これが…超能力…?」
今まで見たことのない光景に思わず息を呑む。
青白い光が球を描くように光が高速で移動する速度は速まり、一気に光が拡散した。
光を発した主と周りにいた2人は既にいなくなっていた。
…
…
…
急な寒気に体が驚いたのか、篤人はクシャミをする。
まだ太陽の日に慣れていないのか、視界がぼやける。
「ここ…どこ?」
目を開けるとそこには辺り一面の雪景色。そこにポツンとあるのは木造の校舎であった。
朝霧はタバコを指で挟み、口から煙を吐く。
「ま、そう焦んな。お前は今日からここで暮らす」
「え?」
困惑はまだ続きそうであった。
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