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【第24話】殻から出ようとした僕

24話です。

「おい、起きろ。ここから出るぞ」


朝霧はたばこをくわえながらそう呼びかける。


「………」


しかし、なんの返答も帰ってこない。篤人は布団の上でうずくまるばかりで、声さえ出そうとしない。


「お前は一生ここにいるつもりか…いずれ前払いしといた飯代もなくなって餓死しちまうぞ」


咥えていたたばこを左で持ち、右手はポッケへと移動。溜息をつきながら、子供のお守りを押し付けられた若人のような顔をしながらまた呼びかけた


「…出たく、ないです。なんにも…考えたくないです」


ようやく口を開いたと思ったら、出てくるのは拒否。朝霧はあきれた顔をしてドアの枠を超え、篤人に影を落とした。


「いい加減にしろっての。お前は今から俺の養子になるから、手続き踏まなきゃいけねぇんだよ…早くしろ」


嫌気がさしたのか、多少強い言動をとった。


「僕は…光さんを殺したんです。鳴神さんも殺して…光さんも殺して…いずれ僕は全員殺しちゃうんだ。僕のせいでみんな死ぬんです」


僕はもうここから出ない。任務にもでない。何もしない。このまま死ぬ。ただそれだけでいい。


「お前が何しようが変わらねぇっての…そもそもな、超能力者が死ぬことなんてよくあることで―――


そう言いかけた途端、篤人は手をつき、ゆっくりと立ち上がり、朝霧のコートの裾をつかんだ。


「僕は、超能力者じゃない…!普通の一般人だ!!!」


大粒の涙が流れた跡を顔に残していた。体はやせ細っており、目は死んでいる。


「…僕は…僕は…」


コートから滑り落ちた手はぶらりと落ちていく。


床にはぽたぽたと雫が一回、二回と回数を増やしていった。


「…俺も同じだったよ」


朝霧はたばこをもう一度加えると、彼はゆっくりと過去の話を始めた。


「昔は今よりも暴徒の数が多くてな。それなりに苦労した。」


「………」


うつむいてなんの反応もしない篤人。


「俺もお前みたいに後から開花した口でな…まぁ、中学生のころだが…もちろん、俺も仲間が死んだとき、自分のせいだと勝手に責任を背負おうとして…なんにもやる気がなくなった時がある」


たばこの灰がスッと落ちる。


「俺が乗り越えた方法はな、忘れないことだ。目の前で死んだ人間、親しくしてた人間をなるべく忘れないようにする。そいつが最期に残した遺言を聞き届けて、そいつのために長く生きる」


灰色の服を身にまとった少年は涙でいっぱいになった顔をゆっくりと上げる。


「…だからな、最期に聞いた言葉を忘れるな。もし頼まれたなら遂行しろ。懺悔されたならそいつを許せるまで成長しろ」


朝霧は口から煙草を持ち、床に落とす。


すると、篤人の頭に左手を回し、そっと抱き寄せた。


「いまはそれでいいから、生きることをあきらめるな。」


「…うぅ…ぐっ…はいぃ……」


光ちゃん…僕…君の分まで生きて、そこであったこと、全部話します……僕…君みたいに強くなります…!


しわくちゃになった顔を見せないように、彼はうつむいた。





ここはハイエンドクラスの共同スペースのリビング。外はまだ暗く、日がやっと上ってきたといったところ。そこでは静かに一人、ゲームに興じてる生徒がいた。


カチャカチャ…


「…あ」


GAME OVERという表示が出て、ゲームはタイトル画面に戻る。


糸巻 俊は黒髪の一部にチャームポイントの赤毛がチョンと入ったストレートヘア。男か女かわからないようなスラっとした顔をしている。


ソファーに寝転がると、二階が吹き抜けの天井を眺めた。


暗い部屋にパチッと明かりがつくと、リビングの入り口から入ってくるのは岩舘 和人。


茶髪で目が黄色く、チャラそうな見た目をしている彼は服装もダボッとしたパーカーを着用していた。


「…一人でゲーム?面白くないだろ、それw」


「…ああ、いつもこの時間なら、光が相手してくれてたんだけどな」


時刻は朝の6時57分。訓練がない日、例えば休日なんかは皆起きるのが遅いが、神永と糸巻は違った。


ここで一つ、ランダムにゲームを選び、それに興じていのだ。


その癖が抜けず、今もこうしてゲームに励んでいた。


「ゲーム下手な癖に…いっつも付き合ってくれた」


「…みんなにやさしいもんな。いつも周りのこと考えてさw……光、光は…もうここには戻ってこないのか」


二人はしょげた顔をして、一人はコントローラ―を持ち直し、一人はソファーから後ろに15mほど進んだところにあるキッチンへと歩いていった。


カチャカチャとコントローラーを鳴らしながら、糸巻は岩舘に届くように少し、大きな声で質問をする。


「なぁ…篤人は…戻ってくるのかな。」


「…あいつが一番ショック受けてそうだよな…戻ってきたとしても、もう、あいつは実践に出ないと俺は思う」


「そうか…」


二人は寒い空気の中、白い息を吐きながら朝7時を迎えた。

25話で一旦一区切りとして、外伝を25話以降にちょろちょろと載せていこうと思います。有坂 真美とはどんな人物なのか?明後日を楽しみに待っていてください。

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