【第12話】ついに使い方を知った僕
実はタイトルについてる「僕」って結構な伏線になる予定なんです。考察してみてくださいね。
「…炎を熱によって生み出して加速ってのは炎を操るような人がやってるわけで…」
篤人は頭を悩ませていた。
今日も朝早くから訓練をはじめ、もう二時間が経過していた。三人からエネルギーの噴射方法を聞いてからもう二週間が経過している。
「確かにそうだな…お前は炎を使って移動すんのは無理かもな!!寒いから早く終わらせろ!!」
朝霧は一刻も早く訓練を終わらせたい様子でそう言った。
面倒そうな目で篤人を見つめる。
「って…朝霧さん…そんな面倒そうな目で見ないでくださいよ…」
「てめぇ…こんな雪がガンガンに降ってるときに訓練やるなんてあほだろうが…しかも二時間も」
現在朝8時、今日は猛烈な吹雪で、しかもとても寒い。二人の能力゛酸化゛と゛熱゛がなければ耐えられないだろう。
ビュオオオオオオオ…
音がかすれてしまうくらいの吹雪の中、彼らはどうやって会話しているのか。
最近篤人は基礎超能力として、簡易のテレパシーを教わっていた。
つまり脳内に直接語り掛けているのだ。
「こう…熱を利用した推進力を…」
手の平を上にして、熱を発生させる。しかし、爆発のようなことは起こらず、空間が歪んで見える現象、陽炎のみがそこにあるだけである。
「熱…熱?熱を操るってそもそもどういうことだっけ?…」
間髪入れずに朝霧は寒そうに体を震わせながら答える。
「温度を操るってことなんじゃねぇのか…さっむ」
゛酸化゛の能力を持っている朝霧でさえ、二時間もいれば体に負担が来る。自身の周りにある廃材を酸化させることによって熱を発生させ、ようやく今の状態を維持できている。
早く終わらせたいのだろう。
がくがくと体を震わせる朝霧を見て、篤人は考える。
熱って…確か中学の頃に習ったっけな…
中学の頃に理科の先生から教わったこと…実験室で温度に関する授業があったとき、その時だけふと疑問に思ったことを先生に聞いたんだよな。
えっと…なんだっけ…
「霧ヶ峰君、どうしたんだい?質問なんて珍しいね」
白衣を身にまとった初老の姿をした教師、それが篤人の中学の頃の先生だ。
「あの…なんで水は氷るんですか?そして、なぜ水は蒸発するんですか?」
小学生から上がって間もないころ…三度目の授業で聞いたあの素朴な疑問。
「ああ、それはね…
思い出した…!!
「そうだ…原子のあばれ具合で温度が変化するんだ!!」
大丈夫、自分ならやれる。そう、水蒸気爆発を起こすんだ。エネルギーを一気に冷やして、一気に温める。そうすれば…
自分は熱を゛操る゛んだ。やれる。
「フー…」
気持ちを高ぶらせずに落ち着くんだ。温度を一気に下げて、一気に上げる。
篤人は手の平を前に向け、深呼吸をした。
彼の手からだんだんと霜が降りてくる。
目を見開き、一気に熱を送り込む!!!!!!
ドオオオオオン…
すると辺り一帯が吹き飛び、朝霧は即座に超能力によってバリアを張る。
「あっぶね!!…」
バリアを解除後、すぐに篤人のほうへ駆け寄る。
「おい大丈夫か篤人!!」
腕には小さな火傷跡が数か所あるだけだった、本人は踏ん張りがきかずに転んでしまったようである。
「へへ…できましたよ朝霧さん…みんなについていけます。やっとレベル上げ成功です。」
ニッと笑う篤人を見てあきれる朝霧
「ゲーム脳な癖、何とかしとけこの野郎…」
篤人にとっては大きな前進であった。
ハイエンドクラスの生徒の内1人が死ぬまで、あと二週間。
13話目もよんでください。