【第11話】超能力の訓練を始めた僕
特にないです。
ゴオオオオオオオォォ…
炎独特の音が、周囲に響き渡る。
「…やっと使い物になったか。篤人」
今日とて黒いコートをまとい、厳しい指導をする朝霧。
汗を垂らす篤人。
「はい…やっとです。基礎も全てできました。エネルギーの使い方も…」
篤人が訓練を開始してから2ヶ月が経過していた。
「じゃあお前が考案した『炎の噴射による高速移動』はできそうか?」
汗を流しながら不満げな顔をする篤人。
「…褒めてくださいよ…」
「お前はよくやった。だがまだだ。移動方法だけ確立できていない」
篤人のいう移動方法はとても単純で、体制によって炎を噴射する方向を変える。それによって倒れずに高速で細かい動きが実現できる。
「…でも、噴射する方向にすぐさま切り替えるなんて難しいです…」
「ま、それに関してはなんとも言えねぇな…俺は『酸化』で呼吸を早めて体力強化。お前はエネルギーから熱、熱から炎に変え体勢によって噴射する場所を変える…」
正直…できる気がしない。エネルギーの操作には慣れたし…炎もすぐに出せるようになった。
頭を抱える篤人。
「工程が多いんですよね…もっと楽に移動する方法は…」
朝霧は閃いたように目を見開くと、咥えていたタバコを手に持ち口を開く。
「じゃあ、似た移動方法をしてる奴に聞けばいいんじゃねぇのか?」
…
…
「…で、僕と風香と神永が呼ばれたわけですね」
篤人の目の前にいるのは水無月、風香、神永の3人。横並びになって立っている。
わざわざこんな寒い火の朝に申し訳ないことを…
「確か水無月は『水』を…風香は『風』を…で、光は『光』だったな」
「はい。たしかにそうです」
そう言いながら、水無月は下がったメガネをあげる。
「えっと、聞きたいことが…」
篤人が口を開こうとすると
「おはよぉ〜篤人君!最近頑張ってるねぇ〜」
マフラーを巻いて寒そうにしている神永は、白い息を吐きながら労いの言葉を篤人に伝える。
それをみた風香は、恥ずかしそうに目を合わせ、軽く、素早くお辞儀をする。
「…ありがとうございます…」
「にこやかにお話する時間じゃねぇぞ」
朝霧は呆れた顔をして、タバコを咥える
水無月はそれをみたのち、篤人に視線を向ける。
「篤人、どうしたんだ?何か聞きたいことがあるのか?」
話が進まないから…と自分から話を切り出す水無月。
「あ、はい!そのことについてなんですが…」
身振り手振りを使って必死に説明をする篤人と、頭から煙を出して首を傾げる光、恥ずかしいのかうつむく風香と真剣に話を聞く水無月、タバコを一服する朝霧。
…
…
「つまり、押し出すことによって移動するにはどんなコツがいるかってことか?」
「そうなんです。風香さん、光さん、隼人くんはどうやってバランスをとってるのかなと」
「俺は手とか足から水を高速で噴射して移動するんだけど、エネルギーを出す箇所を絞ってみるのはどう?」
「ウチも同じように、光のエネルギー?かなぁ…ビームみたいなの出して移動してるんよ〜」
同じように風香も口を開こうとするが会話に本人は会話に入りにくいと思っているようだった。
それを察した水無月は風香に話題を振る。
「で…風香はどんなふうに移動するんだっけ?」
「…わ、わた、私は…風を手と…、あ、足から出して移動しまふ」
噛む風香。なんと可愛らしいのだろう。
みんなエネルギーを出す場所を絞ってるのか…
「…みんな足と手からエネルギーを出して移動するのか…それに対して僕は炎を出して…」
アレ…もしかして俺って移動に向いてない?
…
…
…
篤人は普通の高校生だった。しかし、仲間と出会い、決めた道を自分で歩き始める。
しかし、影はいつでもついて回るものだ。
ハイエンドクラスの生徒の内1人が死ぬまで、あと1ヶ月。
12話目も読んでください。