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お礼

「赤森君なににする?」


「うーん。俺はオレンジジュースかな」


「オッケー。じゃあ、私はハーブティーにしよ」


 朝本さんは店員を呼んでオーダーを注文する。


 俺たちは今学校の近くの喫茶店にいる。


 この喫茶店は中は洋風で落ち着いた空気を醸し出している店で、俺は初めて来たのだが、結構人気のある喫茶店らしい。


 オーダーを注文して少したつと、注文したオレンジジュースとハーブティーが出てきた。


「なんでオレンジジュースにしたの?」


「俺、コーヒーや紅茶といった苦い飲み物

は苦手なんだ」


 俺はオレンジジュースに1度口をつけた後朝本さんの質問に答える。


「私と一緒だね。私もハーブティー注文したんだけど、砂糖を淹れないと飲めないんだよね」


 笑いながらハーブティーの中にスティックシュガーを2袋分を投入すると、フーフーして熱を冷ましてハーブティーを口にする。


「うん。おいしい」


 顔を綻ばせる朝本さん。それは芸能人が

載っている写真集のような絵になるものだった。


「ん。どうしたの?」


 朝本さんは俺の目を覗き込んでくる。


「な、なんでもないよ。ちょっとボーッとしていただけだよ」


 朝本さんに見惚れてたとは口が裂けても言えない。


「昨日は本当にありがとね」


 朝本さんは突如お礼を言ってくる。しかも、真剣な表情。


「いやいや、お礼の言葉はもういいよ。今、お礼もしてもらってるんだし」


「ううん。こんなんじゃ足りないよ。周りの人は気づいているのに知らないフリで赤森君だけが助けてくれてその上、ケガまでしてるんだから」


 つらつらと捲し立てるように語る朝本さん。


 山西先輩から逃げている自分が嫌になって朝本さんを助けた俺にとっては複雑な気持ちだ。


「だから、もし赤森君に困ったことがあったらいつでも私に言って頼って欲しいな。力になるから」


 朝本さんは真剣な表情で宣言するように俺に言う。


 えっ。学年の人気者であるこの美少女が頼って欲しい。陰キャボッチのこの俺に。これは夢?


 そんなことを考えてしまい、言葉を返していなかった。現に朝本さんは不安げにこちらの様子、伺ってる。


「うん。そのときはお言葉に甘えて朝本さんを頼らせてもらうよ」


 多分ないだろうと思いながら言葉を返す俺。


「そうしてね」


 笑顔になった朝本さんは嬉しそうだった。


「それとね。今日みたいにまた私とお茶とかしてくれる?」


 朝本さんは懇願するように上目遣いを使ってそう聞いてくる。


「うん。俺でよければ・・」


 俺が返す言葉はこれしかなかった。


 あの朝本さんの誘いだよ。その誘いを断る陰キャの俺にはその資格はないしできないな。


 朝本さんの顔が綻んで華やかになる。


 朝本さんの顔の周りには華でも咲いているのだろうか?


 この後、俺たちは小1時間ほど談笑して喫茶店を出てその場で解散という形になった。

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