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スマートフォン

 あれからどのくらい朝本さんは泣いていただろうか。詳細な時間の経過は定かではない。


「・・・もう、大丈夫。・・ありがとう・・」


 朝本さんは、弱った空気を醸成しながらも、俺の胸から離れていく。


 まだ、本調子とはいかないだが、先ほどより良さそうだ。


 俺は、安堵させるために、頭を撫でると、朝本さんにハンカチを差し出す。涙によって濡れた頬を拭くために必要だと思ったからだ。


 涙を拭く瞬間を見られたくないと推量した俺は、視線を外し、黒板近くの入り口に目を向ける。


 初めは入り口や掃除用具入れしか目に入らなかった。しかし、数秒ほど凝視していると、掃除用具入れの頭頂部に1つの白い光りを発見する。


 俺はその光に惹かれ、距離を詰める。近づいてもあるモノは認知できない。


 そこで、付近にあったイスを利用して、掃除用具入れの頭頂部を確かめる。そこにはほこりやごみが居場所を作っていた。


 そんな場所に通常ではありえないデバイスがケースを土台にして斜めに直立していた。スマートフォンだ。


 俺は深く考えず、そのスマートフォンを手に取ると、電源をいれる。すると、ぴこんっとスマーフォンが音を鳴らす。俺はその原因を探索すると、先ほどまで動画機能が使用されていたことを理解する。


 まさか、さっきのいじめの動画を撮っていたのか。でも、この角度、この距離からならいけるか。


 朝本さんが身を置く場所に視線を向け、実現可能性を検討する。その最中、ブゥーブゥー。スマートフォンの振動が手の平を刺激する。


 俺は無我夢中で液晶を盗み見る。


「えっっ」


 無意識に驚愕した声を上げてしまう。


「どうしたの?」


 朝本さんが何か言っているが、耳に入ってこない。今は神経をそちらに向けることは不可能だ。


 たった今の音は、メッセージが届いたことを申告する通知だった。そこは別に大したことではない。ただ、液晶に反映されたメッセージが俺の心を激しく揺さぶった。


 このメッセージから女子たちが計画的にいじめを実行していたことが証明されている。そして、このスマートフォンを持ち主が彼女たちに協力を仰いだ。そう結論を出せる。そして、今回の黒幕はあの人だ。


 メッセージはいくつか送信されていたが、1つにはこう記されていた。


「あなたの言っていた特徴の男子生徒が来たわ。言う通り、脅された後、すぐに退散したわ。これでいいんでしょ?あなたの目的のためにはね!」


 






 


 

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