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幼馴染と一緒に昼食

 あれから、色々な出来事が起こった。香恋が必要以上に水を鍋の中にぶちこんだり、カットされた野菜をまとめて焼いたりと。とにかく、驚くべき事が絶え間なく起こった。




「ふぅ。もう大丈夫かな」




 俺は1つ吐息をつく。鍋の中で、ぐつぐつとカレーが煮込まれている。水面には、ジャガイモ、ナス、たまねぎ、豚肉がプカプカと浮遊している。




「後は、何分か煮込むだけだよ」




 俺は汚れた手を蛇口を捻り水で洗い流す。




「わかった。火はこのままでいいの?」




 なれない作業をしたためか、香恋は疲労を感じさせる目になっている。




「なんで自分で料理を作ろうと思ったの?」




 率直な疑問を香恋に投げ掛ける。




「なんとなく。家庭の料理の出来立てを食べてみたかったから」




 細長いキッチンで他にも何かをつぶやきそうな表情を露出させる。




 数分後、設定していたタイマーがうるさく高周波を振り撒く。




 俺は、香恋に大皿を手渡し、香恋はそれにライスとカレーを盛っていく。




 そして、スプーンを2人分取り出し、テーブルの中央に優しく置く。テーブルには、湯気を高々に上流させるカレーライスが2つある。




「食べるわよね?」っと言いながら、イスに腰を下ろす。




 俺は首だけを縦に振ると、空いたイスの上に座る。




 少しの間を作り出した後、「いただきますっ」と両手を合わせる。




 俺は、香恋の出方を見ることなく、無作為にカレーをすくい上げると、そのまま口に運ぶ。熱さとカレーが混じった味がする。言葉では言い表すことはできないが、美味しいことには間違いない。




 自分だけの感覚なのか不安になり、香恋に目を向けてみると、香恋も満足気な顔をしている。どうやら、上手にカレーができたみたいだ。




 鉄製のスプーンと大皿が当たることで生まれる音が小刻みに室内に反響する。




「誰かと一緒に食べる昼食も悪くないわね」




 香恋は視線を下に突如そのような言葉を発する。




 俺は不可解に思い、目線を前方にすると、絶句してしまう。




 彼女の顔には、寂しさと悲しさが入り混じった表情が作り出されていた。




「変なこと言ってるよね私」




 俺の心情を察したのだろうか、香恋は、普段のキリっとした表情に戻ると、再度、カレーを食べ始めた。

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